金田アツ子&Belle des Poupee二人展|作品集より《520番》
本展にて同時刊行される新訳付作品集『Emily’s Herbarium』には、翻訳家・維月楓さまによるエミリー・ディキンソンの詩六篇の新訳と、各詩を題材に制作された金田アツ子さまの絵画、Belle des Poupee様の布花アクセサリーが掲載されています。*作品集の詳細は11/1〜2に発表します
本コーナーでは、六日間に渡り、それらを一篇ずつご紹介していきます。エミリー・ディキンソンの詩にはタイトルがありません。通常タイトル扱いとして、詩番号(本展ではフランクリン版)と初行が明記されます。
新訳付作品集『Emily’s Herbarium』*箱入り・限定370部
訳と解説:維月 楓
絵:金田アツ子
布花アクセサリー:Belle des Poupee
編集・造本設計・製本:Club Noohl
発行:霧とリボン
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自分だけの場所というものは人それぞれにあり、自分のサンクチュアリを守ることが自身の生き方を決めることになり、そして他者の庭に裸足で入っていかないことこそ他者への敬愛を伝えることになるのではないでしょうか。
.....維月 楓(新訳付き作品集『Emily’s Herbarium』収録エッセイより抜粋)
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*底本
Franklin, R. W. (ed.), The poems of Emily Dickinson, Cambridge: Belknap Press of Harvard University Press, 1998.
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作家名|金田アツ子
作品名|バラになれなかったリンドウ
油彩・シナベニヤ
作品サイズ|19.8cm×13.5cm
額込みサイズ|26cm×19.5cm×2.5cm
制作年|2020年(新作)
*作品集『Emily’s Herbarium』掲載作品
「至純な紫色」に祈りを捧げたエミリーの詩《520番》を題材にした、本展最後にご紹介する油彩作品です。
嘲笑やつめたい霜で傷ついたすべての
乙女よ、
ひとすじの心で咲く花となる日が
来ますように。
アツ子さまの祈りが込められた、広がるリンドウ色も気高い一作です。
花を通して聞く囁きは、自身のこころの声であり、また書物を通して知る詩人たちや同時代に生きる異国の見知らぬ女性たちの声でもあります。
花を慈しむアツ子さまの画業を通して感じるのは、自身の孤独に向き合い、その場所に種を蒔き、日々水をやり、花を育てていくことの大切さ。そこに花を咲かせることは決して簡単ではなく、時にうつむくこともあるかもしれない。
しかし、そのサンクチュアリから生まれた花々は自身を支える養分となり、ひとりで一歩を踏み出す勇気になり、その「誰でもない」ちいさな一歩は、いつかどこかのだれかの一歩へと繋がってゆく——
こうして、時と場所を超えてエミリーと出会えたことも、決して偶然ではない。エミリーが生涯自身に対して誠実に歩み続けたことが、温室に行き交う女性たちの一歩へと繋がっている——
「誰でもない」ちいさな歩み、日々の営みへのアツ子さまからの讃歌が会期中ずっと、私たちひとりひとりの背中をやさしく押してくれるように、菫色の温室の中に反響し続けていました。
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作家名|金田アツ子
作品名|竜胆「悲しんでいるあなたを愛する」(二輪)
アクリルガッシュ・バロンケント
作品サイズ|13.8cm×9.3cm
額込みサイズ|17.8cm×13.3cm×2cm
制作年|2020年(新作)
*作品集『Emily’s Herbarium』掲載作品
*コラボレーション・ティタオル原画作品
エミリーがリンドウに込めた「至純」が植物画として昇華された、ひときわノーブルな一作です。
終幕の今日——まもなく扉を閉じる温室の中に、はなむけとして「至純な紫色」の詩情を秋空のように高く伸ばすアツ子さまのリンドウ。
温室に咲いた作品たちには、作家がエミリーと対話した軌跡と共に、扉を開いた六日間の場所の記憶も降り積もっています。
作品を飾ることで馥郁とひろがる温室の記憶もまた、美術作品の一部なのです。
★お知らせ★
本作とエミリーの詩の一節を配したコラボティタオルが登場します。詳細は11/1〜2にここnoteにて「温室の別扉」として発表します。
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作家名|金田アツ子
作品名|竜胆「悲しんでいるあなたを愛する」(一輪)
アクリルガッシュ・バロンケント
作品サイズ|10.4cm×4.5cm
額込みサイズ|19.4cm×13.5cm×2.4cm
制作年|2020年(新作)
いっそう誇り高く咲く一輪のリンドウ——「悲しんでいるあなたを愛する」花言葉がやさしく胸にしみます。
美術作品との暮らしがこころの養分となり、自身のうちに花を咲かせる種となりますように・・・
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ブランド名|Belle des Poupee
作品名|リンドウブーケヘアピン
合金・布花(綿ローン)
作品サイズ|全長約10 cm
制作年|2020年(新作)
*別ショットの画像をオンラインショップに掲載しています
エミリーの詩《520》番を題材に、リンドウの「至純な紫色」をブーケにしたBelle des Poupee様の一作。紫色から白への繊細な諧調も美しい、本展最後にご紹介する布花アクセサリーです。
気高い紫のリンドウをブーケにしてあなたへ。
Belle des Poupee様のアクセサリーが素敵なのは、女性たちへの贈り物としての詩情を纏っていること。それゆえに、布花の向こう側に彼女たちの喜ぶ姿が浮かんできます。
アクセサリーを開封して、その美しい佇まいや豊かな風合いに感嘆し、鏡の前で身につけて、御髪や胸元に咲いたお花がお顔をぱっと明るくしてくれことに驚き、ドレッサーにそっと置いた時のやさしい佇まいに安らいで——
布花の魔法が女性たちを包み、自身の感性に誠実に装うことへのちいさな自信が、花びらを重ねるように積み重なっていくのです。
菫色の小部屋(霧とリボン実店舗)で幾度となく、Belle des Poupee様の布花を手にした女性たちが笑顔になる瞬間を見てきました。
エミリーの詩を宿した今回の花々たちも、きっと多くの女性たちに幸せをもたらすことでしょう。
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