金田アツ子&Belle des Poupee二人展|温室の風景|DAY 5
庭や温室に花を育てることは、自己の内面の世界で詩作を行うことと通じているようです。
.....維月 楓(新訳付き作品集『Emily’s Herbarium』収録エッセイより抜粋)
閉館まであとわずかとなった温室——エミリーが温室で内面と対話しながら植物たちを育てたように、画家、アクセサリー作家、翻訳家の仕事が静かに息づいています。
扉をあけて、どうぞゆっくりその息遣いをご高覧くださいませ。
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作家名|金田アツ子
作品名|私の星はどこにもない
油彩・シナベニヤ
作品サイズ|19.8cm×13.5cm
額込みサイズ|26cm×19.5cm×2.5cm
制作年|2020年(新作)
失くしたギニー金貨、天からいなくなったひとつの星、行方知れずの友——喪失を詠んだエミリーの《12番》の詩に捧げられたアツ子さまの油彩作品です。
誰のものでもない、悠久を留める星降る夜空の下、失くしたものを月に込めて、レクイエムを捧げるひとりの少女。手元の小さなブーケは、エミリーのために摘んだ星々。
メランコリーの詩情美しい、画家から詩人への優しき返歌。星空が透き通る瞳ときっぱりと揃えられた少女の前髪に、他者への慈しみを支える画家自身のひそやかなる矜持が表れています。
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作家名|金田アツ子
作品名|金盞花「別れの悲しみ」
アクリルガッシュ・バロンケント
作品サイズ|5.4cm×2.7cm
額込みサイズ|11cm×8.5cm×3.5cm
制作年|2020年(新作)
《12番》の詩で天からいなくなったひとつの星が一輪の金盞花となって帰ってきたかのよう。「別れの悲しみ」の花言葉持つ金盞花は、誰かが必要とする場所で身代わりとなって咲き誇るのかもしれない。
赤々と咲くちいさな一輪から、頼もしく伸びる気概を感じて——
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作家名|金田アツ子
作品名|風信子「悲しみ」
アクリルガッシュ・バロンケント
作品サイズ|6.2cm×3.2cm
額込みサイズ|13.3cm×10.5cm×2cm
制作年|2019年(常設作品)
「悲しみ」に寄り添うもう一輪は風信子。
金色の額縁で守られた一輪は壜の中に封印された香水のよう。優美な香りがシフォンの肌触りで悲しみの感情を包んでくれます。
香りを絵で飾る贅沢。アツ子さまの植物画はいろいろな楽しみ方を生活にもたらしてくれます。
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ブランド名|Belle des Poupee
作品名|リボンチョーカーネックレス
グログランリボン・合金・銅・ポリエステル・パールビーズ
作品サイズ| 首回り36cm/アジャスター5cm
制作年|2020年(新作)
*別ショットの画像をオンラインショップに掲載しています
夜空がグログランリボンになって結ばれた、胸元を存在感たっぷりに、かつシックに飾るチョーカーです。パールビーズで象られたちいさなふたつのハートの中にも、深い夜空が浮かんでいます。
一本のリボンを結ぶ。
それは、悠久の時を手繰り寄せて、私たちが生きる「いま」という時をここに刻む作業なのかもしれない——エミリーの詩集を紐解きながらBelle des Poupee様のアクセサリーに触れる時、ふとそんな想いが舞い降ります。
秋の夜長、わたしだけの夜空を手に入れて——
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ブランド名|Belle des Poupee
作品名|アイリススフレロザリオネックレス
ガラス・合金
作品サイズ| 長さ 81.5cm(ネックレス部分)/アジャスター 5cm
制作年|2020年(新作)
*別ショットの画像をオンラインショップに掲載しています
祈りを繋ぐロザリオ。繊細な色合いとマットな質感美しい、吹きガラスの軽やかさ持つ一品です。胸元でエレガントに揺れる様子が目に浮かぶよう。
ちいさなガラスの一粒一粒は、ちいさな詩を詠んだエミリーの詩情に重なります。
数多ある材料の中からふさわしいひとつを選定する作業からも、Belle des Poupee様とエミリーとの対話の軌跡が見えるようです。
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