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【脚本】前編 幻月の夜は

登場人物
白崎 春奈(16)(18)高校生
クロ           春菜の影
白崎 朋美(38)    春菜の母
小沢 輝 (45)    朋美の彼氏

本編
1. サンシャイン荘・外観(夜)
   河川敷のそばに古い木造の二階建てアパートが建っている。
   壁には、『サンシャイン荘』のプレート

2. 同(夜)
   白崎春奈(16)が制服姿で鞄を肩にかけ、階段を登る。

3. 同・白崎家・入口(夜)
   入口のドアに201白崎のプレート。
   春奈がドアの横の小窓を少しだけ開ける。

4. 同・白崎家・リビング・中(夜)
   白崎朋美(38)と小沢輝(45)がこたつから顔を出して、
   二人並んで、寝転がっている。

5. 同・白崎家・入口(夜)
   春菜が顔を背ける。春奈の手が小刻みに震えている。
   春奈が数回深呼吸をする。
   次第に手の震えが治まっていく。春奈がドアに手をかける。

6. 同・白崎家・リビング・中(夜)
   春奈がリビングを朋美と小沢を横目に足早に通り過ぎようとする。
   小沢と朋美が起き上がり、それをじっと見ている。
   小沢がわざとらしく舌打ちをする。
朋美「春奈、遅かったじゃない。今、何時だと思っているの?」
   春奈が襖の前に立ち止まる。
春奈「別になんでもない」
朋美「なんでもないって何よ。心配したんだからね」
春奈「心配してたら、男とヤったりしないでしょ」
   春奈が襖を開け、部屋に入っていく。
朋美「何よあの子」
小沢「俺らのせっかくの時間を邪魔したっていうのに無愛想なガキだな」
   小沢が上半身裸で座り、タバコを口に咥える。

7.  同・春奈の部屋(夜)
   春奈が襖に背を向け、立ち尽くす。制服の上着を脱ぐ。

8.  同・リビング(夜)
   小沢がライターに火をつける。

9.  同・春奈の部屋(夜)
   春奈が震えて、手をさすりながら、座りこむ。
   腕には、複数のタバコを押し付けられた傷が残っている。
春奈「(小言で)やめろ。やめろ。やめろ」
   春奈の前に黒い影の黒が座っている。

10.  同・リビング(夜)
   小沢がタバコをふかしている。
小沢「朋美ちゃんさあーあんな娘、捨てちゃえばいいのに」
   沈黙する二人。
朋美「なんでそんなこと言うの?仕方ないでしょ」
小沢「仕方ないってなんだよ」
   小沢が笑う。
小沢「だって邪魔じゃん。会うたびに、俺のこと睨むつけて。
 良いとこで現れるし…」
朋美「そう言う年頃なのよ。我慢してあげてよ。ねっ。」
小沢「(小言で)汚れた女だけどな」
   小沢が笑みを浮かべる。朋美が振り返る。
朋美「何か言った?」
小沢「別に」
   小沢がタバコの火を窓の縁で消す。
小沢「まあ、あいつが俺の子だったら、引っ叩いて二度とあんな生意気な
 ツラさせないけどな」
朋美「やめてよ」
小沢「冗談だよ。俺は優しいから」
朋美「どうだか」
   二人で笑う。

11.  同・春奈の部屋(夜)
   春奈がクッションに顔を埋めて座り込んでいる。
春奈「死ね。死ね。死ね」
   クロが近づき、春奈の顔をじっと見ている。
春奈「何ジロジロ見てんだよ」
クロ「相変わらず、不幸なツラになってんなあって思って」
春奈「じゃあ助けてよ。あいつ殺してよ」
クロ「無理だね。だって影だから」
   クロの影が笑っている。
春奈「またそれ」
クロ「人生は、自分で切り開いていくもんだぜ」
春奈「綺麗事。こんなの無理だよ」
   春奈が顔を背け、涙ぐむ。クロの寂しげな表情。
クロ「怒んなよ。月でも見て、慰めてもらいなよ」
   春奈が窓の隙間から見える月を見る。
   左半分の月が輝いている。
春奈「半分しかない月に癒されないっつうの」
   クロが立ち上がり、春奈の肩を叩き、笑みを浮かべる。
クロ「仕方ない。今から幸運になる儀式を教えてやろう」
春奈「何?急に全然意味がわからないんですけど」
クロ「じゃあ良い」
   クロが寂しげな表情をする。沈黙する二人。
春奈「仕方ないから、聞くだけ、聞いてあげる」
   クロが満面の笑みを浮かべる。
クロ「今日みたいな月、なんて言うか知ってる?」
   春奈の困惑する表情。
春奈「何それ?半月とか?」
クロ「お前は馬鹿か?」
春奈「うるせえな。じゃあ何?」
クロ「月が左半分しかない日のことを下弦の月っていうんだ」
春奈「はあ…で?」
   春奈が不満げな表情をする。
クロ「急かすなって」
   春奈が頷く。
クロ「下弦の月は、寂しがり屋何だ。そんな下弦の月は、一晩中
 孤独で泣いているんだ」
   春奈が月を見る。
   クロを真顔で見る。
春奈「全然面白くないんですけど」
クロ「おいおい、話はこれからだ」
春奈「じゃあ、早く言ってよ」
クロ「泣いている月に友達を送ってあげるんだよ」
春奈「友達?」
クロ「そう、友達。すると下弦の月は、お礼に送ってくれた人を幸せに
 してくれるんだ」
春奈「はあ…送るってどうやるの?」
   クロがニヤリと笑う。
クロ「殺すんだよ。生贄にするのさ」
   春奈が顔を背ける。
春奈「何それ?馬鹿らしい。もう終わり?」
   クロが再び笑う。
クロ「ちょうど良いじゃないか?」
春奈「えっ?」
クロ「あいつやっちまいなよ。そうすれば二度と来なくなる。
 月がお前を幸せにする。まさに一石二鳥じゃないか?」
春奈「馬鹿らしい」
   春奈が立ち上がり、襖に手をかける。
クロ「おいおい。どこに行くんだよ」
春奈「外の風に当たってくる」

12. 同・リビング・中(夜)
   春奈が朋美と小沢を見ず、外に出ようとする。
朋美「どこに行くの?」
春奈「別に」
   春奈がドアを開け、出ていく。
   小沢がジャケットを羽織り立ち上がる。
朋美「輝くん?」
小沢「ちょっとコンビニでタバコ買ってくる」
   小沢が立ち上がり、ドアを開けて、ドアを出ていく。

後半に続く。

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