見出し画像

【脚本】後編 幻月の夜は

登場人物
白崎 春奈(16)(18)高校生
クロ           春菜の影
白崎 朋美(38)    春菜の母
小沢 輝 (45)    朋美の彼氏

本編
13.  多奈川・河川敷・外観(夜)
   遠くに輝く都会のネオンに照らされたススキの草原。
   周囲は、虫の鳴き声と川の流れる音が鳴り響く。
   ススキに囲まれた中に一部何も生えていない土だけの場所に
   下弦の月の明かりが差し込んでいる。

14.  同・河川敷(夜)
   春奈が一人、月を見ながら歩いている。
   小沢が早歩きで後ろから近づいてくる。
   春奈は、次第に早歩きになる。

15.  同・河川敷・ススキの茂み(夜)
   春奈がススキをかき分けながら、走って逃げている。
   小沢が春奈の肩を掴む。
小沢「何、逃げてんだよ」
   小沢が笑いながら、春奈を押し倒す。
   小沢が春奈の服を脱がそうとする。
   春奈が声を上げようとするも小沢が口を押さえる。
   その姿をじっと見つめるクロ
小沢「静かにしないとダメじゃないか」
   小沢が春奈の服を脱がし始める。
   春奈の目が涙目になっている。クロは、春奈をじっと見ている。
春奈「(小声で)助けて」
   クロが春奈の耳元で呟く。
クロ「やっちまいなよ」
   春奈が小さく首を振る。



16.  (回想)サンシャイン荘・リビング・中
   小沢が立ち上がる。そばには横たわる春奈の姿。
春奈(N)「いつものことだ。もうすぐ終わる」

17.  多奈川・河川敷・ススキの茂み(夜)
   小沢が春奈の体を触りながら、吐息が漏れる。
   春奈の目から涙がこぼれ落ちる。
春奈(N)「でも、もう終わりにしたい」
   春奈が覚悟の表情に変わる。
   目の前に割れた瓶が落ちている。
クロ「これだ。これであいつの首を突き刺せ」
   春奈が落ちた瓶に手を伸ばす。小沢のひたすら、春奈に触れている。
   一瞬小沢が春奈から離れる。その瞬間、瓶を手に取る。
小沢「さあ、本番だ」
   春奈が小沢の首に瓶を突き刺し引き抜く。
   小沢の首から血が飛び散る。
小沢「何だよ…お前、ぶっ殺すぞ」
   クロが笑みを浮かべる。
クロ「トドメをさせ。もう少しだ」
   小沢が苦しみながら、首を抑えている。
   春奈が馬乗りになり、小沢を滅多刺しにする。
   ×  ×  ×
   血塗れで倒れた小沢。
   その横で、春奈がその姿を笑いながら見ている。
   ブラウスがはだけた状態になっている。
春奈「クロ、これでしばらく幸せになれるね…」
   クロがにっこり笑う。
   春奈が我に返り、ブラウスのボタンを締める
春奈「ちょっと何見てんのよ」
クロ「うるせえなあ」
   春奈がしゃがみ小沢の血を指に塗る。
   春奈が立ち上がる。
春奈「私、決めたよ」
   ×  ×  ×
   ススキの茂みに下弦の月の光が差し込んでいる。
   差し込んだ光が小沢を照らしている。
   小沢は、十字架の形で月を見上げながら死んでいる。
   小沢の体の周囲を血で大きく『D』と書かれている。

18.  公園(夜)
   T.  数ヶ月後
   春奈がベンチに座っている。空には下弦の月が輝いている。
   隣には、クロが座っている。
クロ「相棒、何ボーッとしてんだよ」
春奈「別にちょっと思い出してただけ」
クロ「何だよ。それ」
   春奈が鞄からクリアファイルに入った紙を取り出す。
クロ「今日の生贄は、怖い顔してんなあ」
春奈「ヤクザか半グレかなんからしいよ」
   春奈がポケットからライターを取り出し、紙を燃やす。
クロ「さあ、仕事をはじめよう」
春奈「月さんにまた、私を幸せにしてもらおう」
   春奈が立ち上がり、歩き出す。
   都会のビル群に消えていく。

(了)

この記事が参加している募集

#私のイチオシ

50,926件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?