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【声劇台本】049「なりきってゴースト」

もうすぐ夏本番! 夏と言えば、怪談に肝試し! 私は怖いの苦手です。

なので、今日のお話も怖くはありませんよ!(笑)

■人物
日野孝君(16)高校1年生。
本多芽依さん(16)高校1年生。

■本編
日野君のMO「夏の夜。僕は墓地にいた。クラスの肝試し大会が強制参加なんて……。教室の隅でボッチな僕は案の定、お化け役を押し付けられた。他の男子たちはみんな意中の女子との急接近を狙ってギラギラしてて気持ち悪い。色恋皆無な僕にはお化け役が適役なのかもしれない……」

本多さん「日野君! みんなをとことん怖がらせてやろうね!」

日野君のMO「女子のお化け役はノリノリだ。クラスのムードメーカーの本多さん。ガチの白塗り幽霊メイクがコントにしか見えない。正直、気合入り過ぎてて、引く……」

本多さん「(本気で)お化けだぞ!」
日野君「(やる気なく)お化けだぞ……」

日野君のMO「やってきたクラスメイトを驚かせようと本田さんは頑張っていた。だけど、みんな失笑して通り過ぎていった。本田さんは不満みたいだった」

本多さん「なんで? なんでみんな怖がってくれないの?」
日野君「さ、さあ……」
本多さん「笑うことなくない? せめて、あっ、怖っ、って言って欲しいよね」
日野君「お疲れ様です。って言われたしね」
本多さん「ああっ! 私、このお化け役に命かけてたのに!」
日野君「お化け役なんて余り者の役じゃないですか……」
本多さん「それは違うよ!」
日野君「え……?」
本多さん「みんなを楽しませる役って最高だじゃない? 私はお化け役が一番だと思うな!」
日野君「その白塗りの顔で言われましても」
本多さん「どうしたらいいのかな? 懐中電灯逆さに照らすだけじゃダメだし。ろうそく頭に巻けば、もっと怖い感じ出るかな?」
日野君「いや……そういう問題では……」
本多さん「じゃあ、どういう問題? 日野君も声出してよ。私たち、お化けなんだから!」
日野君「そもそも出るとわかってるお化けなんて怖くもなんともないと思うのですが」
本多さん「そこを超えるのが腕の見せ所じゃない!」
日野君「そうんですかね……」
本多さん「絶対私の幽霊レベルが足りないからだって! ああ、悔しい!」

日野君のMO「本気で悔しがる本田さんを見ていたら、なんだかお化け役を馬鹿にしていた自分が急に恥ずかしい存在に思えてきた。本多さんと一緒なら、僕だってできるかも……。今度は一緒に声を出そう、と、僕は心に決めた」
             (おしまい)

今後の執筆と制作の糧にしてまいりたいと思います。