人事トラブル相談所②「同一労働同一賃金って何?パートにも手当支給しないとダメなの?!」
働き方改革という言葉が世の中に浸透し、ニュースなどでも正規雇用者と非正規雇用者の待遇格差是正などについて取りざたされている事が増えたように思います。
その中でも、最近訴訟絡みでよく耳にするのが「同一労働同一賃金」というものではないでしょうか。ひと昔前に比べて、非正規雇用の割合も一段と増えているので、どこの企業でも話題になっているようです。
個人的には法律ネタの解説は色気がないため気が進まないのですが、真面目なネタも書いておいたほうがいいのかな。と思いPCを叩くこととします。
同一労働同一賃金
同一労働同一賃金における論点は2つあり「均等待遇」と「均衡待遇」というものです。
(労働契約法第20条がなんちゃらとか法律的な用語を並べた解説とかは、一番面白くないので他のお堅い人にお任せし、かなり嚙み砕いた表現で記載します)
均等待遇
すごくアバウトに述べると「正社員といわゆる非正規社員(アルバイトや契約社員)の仕事や責任が同じなら待遇を一緒にしなさい」という理屈。
企業の人事部でイメージしてみると・・・
正社員AさんとアルバイトBさんが隣同士で座っており、スタッフのマネジメントや人事業務(給与・保険など)を同じようにしていて、同じように異動や配置転換の可能性もあるならば、雇用形態によって待遇(給与・賞与・その他手当・福利厚生など)を変えずに一緒にしていないとダメよ。というものです。
世の中の会社では、実際にこれに当てはまることは、あまり無いものと思います。
均衡待遇
(こっちが厄介なのですが・・・怒)
こちらは、上記の「均等待遇」とは概念が異なり、正社員と非正規社員では、実際に待遇差はあってもおかしくはないよね・・・。
ただ、その待遇差って不合理であってはいけないよ。というものです。
(→決して「合理的にしなさいというものではない」のがミソですね)
同じように上記のAさんとBさんの例で見ると、業務領域や責任、スタッフの管理人数も違うから賞与の有無がわかれてますよ。とか、ある程度具体的な説明がつき、それが「不合理」だよね。とならなければ、待遇差はあってしかるべき。というものです。
そのため、実際に訴訟が起きて裁判にならないと「不合理」です。という判断は出ていないのが現状で、まだフワフワしている部分があります。
文章にすると固い内容で面白みに欠けるので、男女関係に置き換えてみることにします。
(置き換える必要があるのか?というツッコミは受付けておりません)
女性が男性を選ぶ際に「年収は最低1,000万で、ジャニーズ系のイケメンじゃなきゃ無理!」(=合理的であること)となると世の男性の95%は除外されることになりますが「平均年収くらいで相当なブサイクじゃなきゃ良いわ!」(=不合理でなければよい)となれば世の男性の85%は許容されますよ。という感じでしょうかね。
そのため、85%に入るようにうまく均衡(支給条件や金額など)を調整しておいて、とりあえず問題ないでしょ。という感じにしたいのが実務者(企業側)の本音になるのかなと思います。
(あくまでも個人的な意見ですが・・・)
法律は遵守すべきだとは思いますが、その法律自体が曖昧なものを含んでいるため色々な問題が起きてることも事実だと思います。
(よく使われる客観的、合理的とかそういう言葉が悪さをしてるようにしか思えないのですがね・・・)
最近の判例
日本郵政の裁判(最高裁令和2年10月15日判決)で議論になった「年末年始勤務手当」などがいい例ですので載せておきます。
「12月29日から翌年1月3日までの間において実際に勤務したときに支給されるものであることからすると・・・(略)・・・年末年始勤務手当は、正社員が従事した業務の内容やその難度等に関わらず、所定の期間において実際に勤務したこと自体を支給要件とするものであり、その支給金額も実際に勤務した時期と時間に応じて一律である」として・・・
最終的には「郵便の業務を担当する正社員と本件契約社員との間に労働契約法20条所定の職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があること等を考慮しても、両者の間に年末年始勤務手当に係る労働条件の相違があることは、不合理であると評価することができる」
考察
この最高裁判決を見る限り、何の見境もなく支給してるからNGとされているのでしょうね。
(これは会社側に落ち度があるとしか言えないお粗末な結果です)
最近の判決を見ても、すべての賞与や手当が不合理である。というよりは、その主旨や実態を鑑みて個々に判断されているケース(A手当はOK、B手当、C手当は不合理など)が多いですので、会社としても、このような曖昧な手当や基準は見直しておくことも肝要になってくるのではないでしょうか。
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