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当事者とは誰の事?

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いつもコラムをご覧いただきありがとうございます。S.C.P. Japanの野口です。

NIKE Japanの新しいCMによって様々な話題が盛り上がっていて日本で共生社会を創ることの難しさを感じております。率直に、日本に差別がないと感じている(思っている)人の声ってこんなにも沢山あるんだな。ということには驚いています。

このCM自体が良いか悪いかは、いろんな角度から議論することができるので軽率には何も言えませんが、企業のブランディング戦略がSNSの発展やSDGsというワードでこれまでと違うものになり、アスリートの使われ方にも変化が見られるなと感じています。

このCMに出演している10代の当事者たちはこの炎上をどう思っているのだろう?(不本意?)に炎上の中心に立たされた彼女たちの心は大丈夫なのだろうか?彼女たちは守られた環境にいるのだろうか?なんて考えたりもしています。

さて、話は変わって、先日、ダイバーシティ&インクルージョンを考えるセッションで「非当事者をどうやって巻き込むのか?」というテーマのもと、黒人差別、SOGI、企業の女性活躍についての話題を中心に参加者と議論を深めていく場がありました。その際の気付きをご紹介します、

非当事者とは誰なのか??

「非当事者の巻き込み方」というお題をもらった時に、私はなかなか整理ができない状態になりました。なぜなら、これまで当事者意識をもってもらうためにはどうしたらいいのか?という視点でいたので、私の中で「非当事者」を巻き込むという考え方がありませんでした。当事者だと気づいてもらうためには?という視点でずっとやってきました。国際協力、エシカル、SDGsにも通じる話ですが、自分のアクションがどのように連鎖して繋がっているのか社会の構造や仕組みを理解し、歴史を理解し、必要に応じて理論や概念を用いて、自分とは全く関係ない「世界」だと思っていたことが、実は自分が生きている「世界」なんだと知ってもらうことを意識してきました。

では、どのようにして当事者意識を持ってもらうのか?セッションでは、いろいろな意見も出ました。当事者意識を持ってアクションしてくれる人にインセンティブを、消極的な人にはペナルティを与えるなどの案も出ました。一方で、やはり罰や賞与は外的な要因で、なかなか本質的な行動変容を促すのは難しいものです。

「最初の人を最後に、最後の人を最初に」

その時、最近のマイブームになっている考え方が頭に浮かんできました。それは、国際協力の分野でコミュニティ開発の第一人者であるロバート・チェンバース氏が書かれた「参加型会開発と国際協力」という著書です。本書は開発途上国の農村地域における住民の参加型開発について書かれている著書です。ここで開発途上国の農村地域のことについては紹介しません。本書の中でのロバート・チェンバース氏の主張に大変心を動かされました。

本書は、権力を持つ者及び権力構造への挑戦が書かれています。権力を持たざる者が力をつけていく過程(エンパワーメント)では、これまで社会の仕組みや権力構造の中で、最後にされてきた人達を優先しなければならないと主張しています。大人よりも子供を、先生よりも生徒を、男性よりも女性を、健常者よりも障がい者を、先進国よりも途上国を、中央政府よりも地方政府を、政治家よりも市民を優先する。そうして既存の権力構造のバランスを崩していかなければ真に立場の弱い状況に置かれている人たちが力を持つことが出来ません。

しかし、本書はそれだけではなく、「最後の人が最初に」なるためには、まず、「最初の人が最後に」ならなければならないと主張しています。それは既存の権力構造の中で特権を得ている人々が自らが得ている特権に気づきその権力を自ら手放すということです。自らが得ている特権に自らが気づき、それを自ら手放すというのは非常に難しい命題です。

私自身もいろいろな場面で気づかぬうちに沢山の特権を得ています。仕事、お金、教育、出自、役職。色んな事が私の気づかぬうちに私にゲタをはかせてくれて、まるで今の生活や仕事は自分が努力して得てきたのだと錯覚し、意固地に保持したくなってしまう感覚になります。そんな自分の弱い心をガツガツめくられているような感覚に本書を読んでいてなりました。

特権や権力を手放すことはできるのか?

セッションでは、今権力を持っている人が、特権を得ている人が、その権力や特権を手放すことなんてできるのか?という議論にもなりました。

その問を答えるためにヒントになるようなことも本書には書かれていました。それは、

それぞれのコミュニティごとに正解は異なり、正解は多様で1つじゃない。

です。

大きな社会、大きな組織の中で生きていかなければならないのならば、一度手にした力や権力、自分が得ている特権を手放すのが怖くなるのかもしれません。(私はきっと怖くなる。)ただ、もっと小さいコミュニティで、そこにいる人たちの顔や様子がわかる規模で生きていけるのであれば、自分が得たものをそこにいるみんなでシェアすることも嬉しいし、そもそも1人1人に立場の差なんて生まれないのかもしれない。

ここから有料記事となりますが、最後のまとめの数行のみを有料部分としています。内容自体は無料部分で全てカバーされています。本記事を読んで、「新しい視点を得られた」、「S.C.P. Japanの活動を少し応援したい」と思っていただけたら、有料記事を購入いただけますと幸いです。よろしくお願いします。

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