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江戸時代の人々から学ぶ、サステナブルなアイデアvol.02

2030年までにSDGs17の目標を達成するため私たちにできることはなにか? わたしたちは、そのヒントを江戸時代の暮らしの中に見つけました。太陽と植物の恩恵を活用し豊かな物資とエネルギーをつくり出していた江戸時代の人々。衣食住のあらゆる面でリサイクル、リユースに基づいた循環型社会が築かれていました。その江戸時代の知恵を活かし、日常でできるアクションをはじめましょう。

<参考文献>
阪急コミュニケーションズ 江戸に学ぶエコ生活術
アズビー・ブラウン:著 幾島幸子:訳


「現代よりも寒さが厳しかった江戸の冬。人々は創意工夫を凝らし知恵で冬を乗り越えていました。」
江戸時代の冬は現代に比べて、かなりの厳しさだったといわれています。ちょうど地球全体が小氷河期だったため極寒だったことが想像できます。その寒さのあまり隅田川が何度か凍ったという記録があるほどです。浮世絵に描かれている江戸の町の雪景色から積雪量がかなり多かったこともわかります。
現代のように電気やガスを利用した暖房器具もなく、また高性能・高機能な衣服もなしに、江戸時代の人々は厳しい冬をどのようにして乗り越えていたのでしょうか。当時の暮らしを見てみると、現代でも活用できそうな知恵・創意工夫がたくさん散りばめられていました。江戸時代と現代の冬を見比べながら、その事例をいくつかご紹介します。

「火鉢で暖を取る」
 町人の家には、かまどや七輪のほかに、お茶の湯を沸かしたり寒い日に暖を取ったりするための火鉢がありました。火鉢は部屋全体ではなく、近くにいる人を暖めるためのものです。火鉢の燃料は「炭」でした。炭は良質の薪ほど火力はありませんが、薪と比べて軽く、場所を取らず、煙も少なく安価で買うことができました。
 日本の暖房器具は、炭や練炭を使った持ち運びできる火鉢から、灯油やガス・電気を使ったストーブ、そして一部屋一台の壁かけエアコンへと進化しました。家全体を暖めたり冷やしたりするという発想はほとんどないため、日本では欧米の人々が考えつかないような少ないエネルギーで暖を取る方法がいくつも生まれています。
・電気カーペット    ・ひざかけ   ・遠赤外線ヒーター
・自立型ガスヒーター  ・トイレ全体ではなく便座だけを暖める など
ここ数年でエネルギー費が高騰し、家庭ではエネルギー費の節約が重視されるようになりました。そのニーズに応えるため、少ないエネルギーでも必要な温度を保つことができる暖房器具の開発に各メーカーは力を注いでいます。諸外国が日本から学ぶことも多いと思います。

「湯船で暖を取る」
 江戸では、風呂のない家がほとんどで、人々は広々としていて快適で便利、そのうえ値段も安い湯屋を利用していました。風呂そのものの質が高いことに加えて、地元の人との交流や娯楽の場でもありました。江戸の町には500軒以上の湯屋があって二区画ほど歩けばたいてい一軒はあったほどです。一軒の湯屋に大勢が集まって利用するので、水と燃料の節約と排水設備の負担軽減になっており、エネルギー効率の観点からもとても優秀な施設でした。たいていの人は湯屋を数日から一週間に一回の頻度で利用していました。この卓越した設備と、それを頻繫に利用する「入浴」という社会的習慣は今のわたしたちにも受け継がれています。
現代では、湯船につかれる風呂がある家が一般的で、世界的に見ても日本人は入浴好きだといわれています。
 
<入浴で得られる効果作用>
・冷え対策としての温熱作用
・水の圧力で血行がよくなる静水圧作用
・浮力よって体が軽くなりリラックス状態になる浮力作用 など
 
浮力作用によって副交感神経が優位になると、冷えの改善に役立つといわれています。所説ありますが、湯温40℃程度で約10〜15分で体全体がしっかり温まるそうです。
※効果には個人差があります。自分の体調にあわせた入浴方法を見つけましょう。

「衣服で暖を取る」
 江戸時代の衣類は着物。着物では何枚もの布を「重ね着」しますが、この重ね着が空気の層をつくり、体を温めるのにとても効果的といわれています。さらに着物は丈も長いので、温められた空気は足元から逃げにくいという利点もあります。着物は寒さに強い衣服だといえます。また江戸時代の着物に使われていた「素材」は、絹、麻、綿などの天然繊維で、季節に合わせて衣替えをしていました。冬は、絹や綿の着物の上に、綿入れの衣服(どてら)や厚手の衣服を羽織っていました。絹は繊維の間などに空気を多く含むので保温性が高い素材です。
 現代では、冬の「素材」としてシルク(絹)・ウール・カシミヤが多く出回っています。ウールは羊の毛が原料で、カシミヤはカシミヤヤギの毛が原料。どちらも保温性に優れていますが、カシミヤは繊維が細かく空気を含みやすいのでより暖かいです。そして、最近では吸湿発熱素材の衣料も人気が高いです。吸湿発熱素材とは、汗などの水分を吸収して発熱する繊維でできています。スポーツウェアや肌着、膝サポーター、ボディーウォーマー(腹巻)、キルティングの中綿などに用いられることが多く、一枚着るだけでも暖かさを感じますし肌に直接触れる使い方をすれば高い効果が得られます。
 また素材選び以外にも温めると効率がよい体の「部位」を集中的に温めるという方法もあります。それは「3つの首」と「胴」です。「3つの首」とは首・手首・足首のことで、ここを通っている血管は皮膚の近くにあるので熱が逃げやすい部分で、その反面血液を温めやすい部分でもあります。そこを衣類でカバーすることで、しっかりと血液が温められ、体内の熱が奪われることも防げます。そして、「胴」であるおなかには大切な臓器が集まっているので、ここを温めるだけで全身の血流がアップします。冷えやすい手足にも温かい血液が届き、体全体が温まりやすくなります。温めるならこの4カ所が効果的といわれています。

「鍋料理で暖を取る」
 江戸時代には、現代に続く鍋料理が誕生したといわれています。浮世絵に鍋料理を楽しむ人々が多く描かれています。冬の暖を取るための火鉢などが鍋料理の熱源で、狭い長屋でも場所を取らず、料理屋の座敷へも持ち運びができるので、鍋料理が普及し発展しました。当時の鍋は底が浅く一人か二人分用くらいの大きさのものを使用し、具は2種類ほどでシンプルでした。鍋と火鉢だけで支度が簡単で、調理しながら食べることができ、ほかに食器も要らない、味付けは醤油やみりん、こんなにも手軽な鍋料理は大人気となり、一人鍋を楽しむ女性もいました。
 現代でも、冬の鍋は家庭や外食でド定番です。鍋といえば大勢で囲み大きなものを連想しますが、江戸のように小さい鍋を使って具も味付けもシンプルにすれば、一人でも、朝食や昼食にでも手軽に楽しめます。豚肉と長ネギ、鶏肉と白菜、という2種類の具だけでも美味しい鍋になります。また、生姜やニンニクを適量、鍋やつけだれに加えることで体が温まる効果があるといわれています。そして、温活の効果を高めるならばカプサイシンたっぷりのキムチ鍋もおすすめです。


<イラスト・画像素材>
PIXTA

事例をいくつかあげましたが、冬を乗り切るための江戸時代の人々の知恵は、ほかにもたくさんありました。
 
・囲炉裏(いろり)、炬燵(こたつ)、行火(あんか)、七輪(しちりん)
・湯たんぽ、懐炉(かいろ)
・おでん、焼き芋 など
 
江戸時代に存在した様々な道具や食べ物は形や仕様を変え、現代のわたしたちに受け継がれていることがよくわかります。それぞれの江戸時代での使われ方、食べ方を調べてみると新しいエコ生活術がみえてくるかもしれません。
 
もちろん周りの人や友人、家族と話し合って、現代ならではの新たなアイデアを出すことも大切です。わたしたちも、みなさんも、サステナブルな意識を常にもって行動し続けていきましょう。


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