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「 新しい星 」

 書店よりも古本屋で買う、もしくは図書館で借りる派の私が、新品の単行本で手に入れたくなる本がある。

 それは彩瀬まるさんの本だ。2年くらい前に「やがて海へと届く」を図書館で借りて読んだことをきっかけに彩瀬さんの本に興味を持つようになった。

 彩瀬さんの描く文章は綺麗で読みやすく、ときには中毒性がある。「やがて海へと届く」も本の中に描かれているある文章がなんとなく頭から離れず、数ヶ月前に新品の単行本を購入した。

 この「新しい星」は共通の主人公が登場して1つ1つのお話が繋がっている連作短編集だ。彩瀬さんの連作短編集は他の作品も読んだことがあるが、そのなかでも特に好きな1冊となった。

 大学時代、同じサークル内で共に時間を過ごしていた4人は、社会に出てそれぞれ悩みを抱えながら生きていくこととなる。

 娘の死、職場での理不尽や人間関係、それに伴い感じる社会に出ることへの恐怖心、周囲に理解してもらえない状況、離婚、病気。「普通」に生きていくことは簡単にみえて難しいものだと実感させられる。

 この4人の登場人物は、それぞれ痛みを抱えているからこそ、互いの悩みや痛みを完璧に理解することは不可能であることも知っている。それでも互いに寄り添いながら前を向いて生きていこうとしている。

 人は傷ついた分だけ強く優しくなれるって言葉も案外嘘ではないのかもしれない、この本を読むとそんな風に思えてしまうくらい綺麗なお話だ。程よい距離を保ちながらも互いを思いやり助け合える存在、周囲にこんな友人がいることはすごく素敵で幸せなことだと思う。

 コロナ禍で大学に入ってから、卒業後まで付き合えるような深い関係を持つ友人に出会えていない私は読み終わってちょっぴり寂しくなってしまった。

 でもこの本を読んでから、今よりも積極的に周囲の人と関わりたいと思えるようになった。何よりも、自分が痛みを持つ人に対して寄り添えるような人間になりたいと思う。

 そしてこの本を読んでやっぱり思ったことは、彩瀬さんは、愛する人を亡くし残された人の心情を描くことが上手いということ。たぶん、それが、私が彩瀬さんの作品を好きな1番の理由です。


 また彩瀬さんの本を見つけたら購入して読みたいと思います😺

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