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「 1984年に生まれて 」

 長い時間をかけてゆっくり読んでいたこの本。とうとう読み終えた。

 1984年に中国で生まれた主人公の軽雲、それより15年以上も後に日本で生まれた私。環境も時代も異なるのに共感できる部分が多々あった。

 特に、軽雲が大学卒業を控え将来に悩む序盤のシーンは、現大学3年生の私も痛いほど分かる気持ちだった。

 平凡な毎日に少しの不満を持ちつつも、いざ挑戦しようとすると迷ってしまい決断できなくなるところ。周りの人達は、キラキラと目を輝かせながら自分の将来の展望を明るいものとして語る。そんな周りと自分を比べた時に焦りや劣等感を感じてしまうことが苦痛である。

 やっぱりこんな風に思ってしまう気持ちは、国も時代も関係ないのだと。なんだか少し安心した。

軽雲とその父、沈智。
2人の生き方について書かれている本。

後ろめたさを感じながらも家族を国に残し海外に飛び立つという思い切った行動を取る父と、そうした人とは違う行動に憧れながらも安定した道を選択する娘。この2人が対象的だなと思った。

そして、2人とも激動の時代に翻弄されていく。

「文化大革命」「大躍進」世界史で習った時にはなんとなく遠いものに感じたが、実際にこうした時代に翻弄されていく人々の小説を読むと一気にリアルな気持ちにさせられた。

軽雲が生まれた1984年も歴史的な大転換を迎える年である。そのなかで生きる軽雲の葛藤、生きづらさ、自由について答えを探す姿は、不思議なことに現代の日本に住む私にも共感できるものがあった。

全体的に少し暗いフィルターが掛かった小説。
これを機に色々な国の作家さんの小説を読んでみたいな~と思いました📚❤‍🔥

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