和田章義

現在国立研究機関に所属しています。主に科研費の成果を発信します。 科研費の成果なので、…

和田章義

現在国立研究機関に所属しています。主に科研費の成果を発信します。 科研費の成果なので、所属組織ではなく、個人の見解です。

最近の記事

スーパーコンピューターを使って台風を研究する話

WGNE Blue Bookというものがあります。 私は2002年から2023年まで、この活動に貢献してきました。 2024年度の原稿締め切りは9/30だそうです。扱う項目は、 ・Development and studies of coupled models and Earth System Models ・Global and regional climate models: response to forcing, impact studies, subseaso

    • 海洋表層温暖化と台風に関する研究(海洋貯熱量に関する研究)

      ”海洋表層温暖化”は海の浅いところで水温は上昇しているよ、ということです。海の水温がどうして上昇するのかについては、以前出版した本に簡単に書きました。初版のままなのであまり売れていない本なのですが、結構な冊数を初版に出したという事情もあります。気象と気候、大気と海洋、観測、データ解析、数値モデルなど多岐に渡っているのは、それなりに経験の豊かな執筆者を選ばしていただいたからです。 さて、現在実施している科研費での研究項目の1つはTropical Cyclone Heat Po

      • 2018年台風第12号の奇妙な進路と寒冷渦

        今回は科学研究費補助金(基盤研究B:19H01973)「新世代衛星観測の同化がもたらす、台風と大気上層場との相互作用メカニズムの解明」(研究分担者)の成果を紹介します。この論文執筆は、「海洋表層温暖化を通じた大気環境場・台風活動変質過程の理解」の構想のきっかけとなりました。 ○台風による海洋変動が大気環境場の変質を通じて、台風に影響を与えるか? が「学術的問い」です。 この論文においてもアンサンブルシミュレーションがキーワードの1つとなります。 そもそもこの事例を扱ったの

        • 2023年台風第2号

          Wada, A., 2023 : Roles of Air–Sea Interactions in the Predictability of Typhoon Mawar and Remote Heavy-Rainfall Events after Five Days. Atmosphere,14, 1638, https://doi.org/10.3390/atmos14111638. この論文、結果的には非静力学大気海洋波浪モデルを用いて、台風が停滞しているときに台風域

        スーパーコンピューターを使って台風を研究する話

          海洋表層温暖化と台風に関する研究(Wada et al. 2022)

          Wada, A., M. Hayashi, and W. Yanase, 2022: Application of Empirical Orthogonal Function Analysis to 1-km ensemble simulations and Himawari-8 observation in the Intensification Phase of Typhoon Hagibis (2019). Atmosphere,13, 1559, https://do

          海洋表層温暖化と台風に関する研究(Wada et al. 2022)

          海洋表層温暖化と台風に関する研究(独創性・創造性、着想、研究のための準備、これまでの研究活動)

          昨日の続きです。 計画書の中で何を研究するかを明確に記載することは大事なのですが、どうして申請者でないとその研究が実施できないのかをアピールできるとよいと考え、 ○台風を特徴づける重要な説明変数の1つである海洋貯熱量を通じて、海洋環境場の特徴や変動を解釈し、大気環境場との関係性を解釈する研究手法は、世界の中でも研究代表者のみが実施し得る試みであり、新しい台風海洋相互作用像を築く点で創造性がある。 と作文しました。「新しい台風海洋相互作用像」は「新しい海洋貯熱量の提案」につな

          海洋表層温暖化と台風に関する研究(独創性・創造性、着想、研究のための準備、これまでの研究活動)

          海洋表層温暖化と台風に関する研究(概要と背景)

          キーワードはこれまでの私の研究を物語っています。この話については機会があったらノートに書きたいと思います。 本研究の「学術的問い」となる部分は、「2016年以降にみられる特異な台風活動と近年報告されている海洋温暖化との関係を理解するため…大気環境場における自然変動の変質と海洋温暖化との関係及び台風活動への影響を包括的に理解する」です。理解を2回使っているのでよろしくない文章ですが、実はタイトルにも「理解」を使っています。 2016年の台風第10号が東日本に上陸して以降、私

          海洋表層温暖化と台風に関する研究(概要と背景)

          海洋表層温暖化と台風に関する研究

          海洋表層温暖化と台風に関する研究