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海洋表層温暖化と台風に関する研究(概要と背景)

キーワード
台風 / 海洋貯熱量 / アンサンブルシミュレーション / 気象衛星ひまわり / 大気波浪海洋結合モデル / 海洋温暖化 / 数値シミュレーション
研究開始時の研究の概要
2016年以降にみられる特異な台風活動と近年報告されている海洋温暖化との関係を理解するため、本研究では大気海洋客観再解析データや各種衛星データの解析により、大気環境場における自然変動の変質と海洋温暖化との関係及び台風活動への影響を包括的に理解する。また海洋温暖化が大気環境場における自然変動の変質を通じて台風のライフサイクルに与える影響を、雲解像モデルによる数値シミュレーションにより明らかにする。

https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22K03725/

キーワードはこれまでの私の研究を物語っています。この話については機会があったらノートに書きたいと思います。

本研究の「学術的問い」となる部分は、「2016年以降にみられる特異な台風活動と近年報告されている海洋温暖化との関係を理解するため…大気環境場における自然変動の変質と海洋温暖化との関係及び台風活動への影響を包括的に理解する」です。理解を2回使っているのでよろしくない文章ですが、実はタイトルにも「理解」を使っています。

2016年の台風第10号が東日本に上陸して以降、私の仕事が数値モデル開発から台風の事例解析にシフトしました。それまでは2013年の台風第30号を主に研究対象としてきましたが、この研究をしているときにおいても「近年報告されている海洋温暖化」が気になっていました。

実は2006年から2010年、地球温暖化が一休みしたという内容を示す”ハイエイタス”という言葉が界隈でよく見られました。北西太平洋海域における台風の発生数は平年値(25~26個)より少ない状況でした。

2019年は台風発生数は平年値よりも多かった一方、2021年以降台風の発生数は平年値もしくはそれ以下となっています。一方で、海洋表層は暖かくなる傾向にあります。この暖かくなった海洋表層は、2019年台風第19号(令和元年東日本台風)の発達に関わった可能性はある一方、房総半島に上陸した台風第15号(房総半島台風)への寄与は確認できませんでした。とはいえ、暖かくなった海水が海流により台風域に到達したことも考えられるので、海洋表層温暖化の影響を受けていないとはいえません。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sola/17A/Special_Edition/17A_17A-005/_pdf

私がよくわかっていないこと、知りたいことは
○海洋表層場がどのように形成されるのか?
○海洋は台風に影響を与えることは知られているものの、直接影響するだけでなく、大気への影響を通じて台風に影響することもあるのでは?

この他、
○台風のデータはあくまで主観が含む解析値であって、人的原因による誤差を含むのでは?均一な手法で得られた客観解析データ(衛星やデータ同化システムなどにより作られたデータ)や主観を含む他データと相対的に比較した結果はどのようなものか?

このような研究を実施し、成果を蓄積することで、台風研究(特に台風と海洋の相互作用に関する研究)の発展という観点で学術的に貢献できるのでは?また台風解析・予測技術発展が実現できれば、社会への貢献となるのではないかと考えています。後者について、メディアに流れている海洋貯熱量や台風による海水のかき混ぜ効果のような情報、知見を想定しています。

本記事の時点で既に査読論文2本、本の1章が1本、気象研究ノートの編集及び節の担当など多くの成果が出ています。共著論文も出ています。これらについて、今後順に解説できたらと考えています。

科研費申請書作成への考え方についても、今後補足します。


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