デ・パルマ監督、焦らしますね!映画『アンタッチャブル』主要人物の登場シーン
名作『アンタッチャブル』は、『主人公は、暖簾を分けてサッとでる』
のお手本のような主要人物の登場シーンがにくい作品です。主人公の登場シーンにひと工夫したい方は、参考になること間違いなしです!
『アンタッチャブル』[午前十時の映画祭 公式サイトより]
1930年代、禁酒法時代のシカゴ。財務省から派遣された捜査官エリオット・ネス(ケヴィン・コスナー)は、シカゴの暗黒街を支配するアル・カポネ(ロバート・デ・ニーロ)率いる犯罪組織撲滅のため特別チームを編成する。ベテラン警官ジミー・マローン(ショーン・コネリー)、切れ者の新人警官ストーン(アンディ・ガルシア)、簿記係のウォレス(チャールズ・マーティン・スミス)をスカウトしたネスは、共に巨悪に対して戦いを挑む。
ロバート・デニーロ扮するアル・カポネ タオル越しから、こんにちは
まずは、禁酒法時代のカポネを演じるロバート・デニーロの登場シーン。
いきなり俯瞰したアングルから始まります。
部屋の壁側に並ぶ用心棒風のギャング。その輪の中にひしめく新聞記者。
中央に蒸しタオルで顔を覆っているアル・カポネが上機嫌に記者の質問に応えます。
このワンカットだけで、蒸しタオル男がアル・カポネだとわかります。
聞いたか坊主セリフの応用と言えるかもしれません。
『聞いたか坊主セリフ』
これから行われるドラマの、今までの経過と、これから出てくる人物の情景をあらかじめ売ります。
つまり、(筋売り)のための人物を出して、予備知識を観客に用意させるものです。
『シナリオの基礎技術』p98 新井一
で、アップになる蒸しタオル。そして、一枚ずつ丁重に取られていく蒸しタオル。
この丁重さに、和やかながらピリッとした緊張が伝わってきます。むしろ、より怖く感じるやつ。
観客は、「お、ロバート・デニーロだな」とわかりつつも、アル・カポネとしての姿をじれったく思いながら待ってしまいます。
そして、顔が出てくるだけ、なのに!思わず心の中で、「おぉ〜」と思うわけです。さすが、デ・パルマ監督。たった数秒ですが、僕らの心を鷲掴み!
神経質なやり手捜査官ケビン・コスナー、横顔しか見せてくれない
「市長を俺にしたほうがいいぜぇ〜」的なことを気分良くカポネが新聞記者にいっているその頃、財務省から派遣された捜査官エリオット・ネス(ケビン・コスナー)は、出勤初日を迎えています。
上等なスーツを着て、鏡を覗きこむ姿が肩越しから写されます。奥さんが優しくスーツのシワを伸ばそうとすると、「大丈夫」と手で制します。
ここら辺に、緊張感がよく出ています。
でもまだ、お顔は拝めません。肩越しからのアングルだけ。
で、シーンが変わって、警察署での記者会見シーン。署長さんが、ネス捜査官が派遣された経緯、これからの取組みを新聞記者に説明します。
その署長の向こう側にうっすら映るケビン・コスナー。カメラが動いて、やっとコスナーのお顔を拝めます。
この登場シーンも、なかなか姿を見せないことで魅力的なシーンにしています。もしもここで、最初から署長の横に立っている姿が映っていたら、署長が単にネス捜査官を紹介するシーンになっちゃいます。
暖簾を分けてサッとでる
シンプルだけど、すごく大切な技術です。
アル・カポネとネス捜査員の登場シーンに共通しているのは、説明を説明にしていない点です!
どちらも、いうなれば『聞いたか坊主セリフ』です。
『聞いたか坊主セリフ』は、下手に使うと、単なる状況の説明だったり、人物の紹介だったりと、説明的なシーンにしてしまいます。
『アンタッチャブル』の場合は、『聞いたか坊主セリフ』に、主人公の登場シーンに掛け算することで、「どんなやつが、そんなことするの?」と魅力なシーンに仕立てているのです!
だから、観ているぼくらも惹きつけられます!
カメラのアングルとかは監督の領域ですが、映像をイメージしながら、登場シーンを描くことを意識すると、シナリオがよくなるのではないでしょうか!
復活ありがとう!としか言いようのない『午前十時の映画祭』。
なのに、GWは……あぁ〜映画館で映画が観たいぞ!
シナリオ・センターのあらいでした。
▼緊急事態宣言とやらが終わったら、是非行きましょう~▼
▼なんと、2021年4月28日 テレビ東京 午後のロードショーでやるみたい!▼
▼暖簾を分けてサッとでるを3分で解説してます▼
▼お前は何者?という方はこちらを▼
▼シナリオ・センターについて▼
シナリオ・センターは、1970年に優秀なシナリオライター・脚本家、プロデューサー、ディレクターの養成を目的に、新井一が設立。
ジェームス三木さん、内館牧子さん、岡田惠和さんなど700名以上の脚本家、小説家を輩出する学校です。地味にすごい。今年、51年目。
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