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【古代中世言語好きがオススメする歴史漫画(5)】『うたえ!エーリンナ』を読んで脇役のアルカイオスのほうに夢中になった私はやはり男だ

日本に、古代ギリシアの楽器奏者であり、古代ギリシア演劇の演出・出演もこなす、佐藤二葉さんという方がいます。古代ギリシアの魅力を現代日本に伝えてくれる方(ひょっとしたら古代ギリシアの詩の女神に選ばれた運命の方?!)として大注目の方ですが、なんと漫画も描ける人でした。マルチタレントすぎる。

百合ものです。少女漫画です。しかしそんな漫画を中年男性である私が見出し買ってしまった理由は、ここで再現されている古代ギリシアの風物が実に細かく、作者の古代理解の該博さがタダゴトなレベルではないからです

※ネットに出ている経歴を拝見したところ、佐藤二葉さんは古典文学研究で大学院まで行かれていた方なのですね。

まず、ヒロインのエーリンナは実在の詩人です
その師匠であるサッポーも実在の詩人(ヨーロッパ文芸史上で超有名)です
そのサッポーの男友達として登場するアルカイオスも実在の詩人です

作品の内容としては、詩人サッポーの弟子の少女たちが紡ぐホノボノとした友情物語(百合展開)なのですが、この作品はそれまで古代ギリシアの詩といえばホメロスが描く戦争・決闘・怪物退治の世界ばかりだと思っていた私に初めて古代ギリシア女流詩人というものの世界を教えてくれた、ということになりましょうか。

恋愛詩を得意とするサッポーと弟子の少女たちの深い関係、古代ギリシャにこんな世界もあったとは。

もういっぽうで、この作品が私にとって持つ意味は、サッポーを取り巻く脇役の一人としてアルカイオスを登場させてくれたことでしょう。

(『うたえ!エーリンナ』(佐藤二葉|星海社COMICS)より)

残念ながらこの漫画では深く描写されていないのですが、実際のこのアルカイオスという人物は、レスボス島の権力を巡るクーデターに加担したり、戦争にも従軍したり、失脚してエジプトまで亡命したり等々、波乱万丈な人生を送った方。戦争・政治抗争・陰謀に明け暮れた日々と、そして酒と少年愛とギャンブルにうつつを抜かした日々を、雄々しく詩に唄うアルカイオスのスタイルは、私が想像する「古代ギリシア男」の理想像にぴったりで、これには惚れこみます。

その詩は断片になって残っているばかりですが、以下の「酒」を巡る一行なんかはイェイツの「酒の歌」なんかも想起させて、私は好きなスタイルです!

οἶνος γὰρ ἀνθρώπω δίοπτρον(オイノス ガル アントローポー ディオプトロン)「ワインは人の心を覗き込むための鏡である」

もっとも、女流詩人たちの世界を扱った『うたえ!エーリンナ』を読んでも結局はアルカイオスという波乱万丈型男性詩人に注目してしまう私は、やはり感受性が男目線なのだなぁと改めて感じた次第。。。

子供の時の私を夜な夜な悩ませてくれた、、、しかし、今は大事な「自分の精神世界の仲間達」となった、夢日記の登場キャラクター達と一緒に、日々、文章の腕、イラストの腕を磨いていきます!ちょっと特異な気質を持ってるらしい私の人生経験が、誰かの人生の励みや参考になれば嬉しいです!