木幡きしゆ

何者でもない何か。色のないカライロ。

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マガジン

  • 案山子頭はかく語る

    日常・雑記。日々のあれこれ、思ったことやらなにがしかの感想やら。

  • Librarian Scarecrow

    読んだ本、お勧めの本、時にはちょっとした調べものや図書館知識。 徒然語る本のこと。

記事一覧

『マイリトルゴート』:痛みの下に寄り添い合う

羊毛アニメ『マイリトルゴート』を見たので、色々とふせったーに書いていたのだが、どうにも長くなってしまった。 ので、久々にNoteの方に書いてみることにした。 以下、…

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性格を変えること、ペルソナの装飾を変えること

「性格を変える」、ということについて考えていた。 先日、そんな話題が周囲で出たからと、そういうことなのだけれど。 性格は変えられるのか。 変えられる、変えられない…

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寓話 癒しの言葉を探した愚か者の話

※ある一人の友人に捧ぐ、奇跡の言葉を探す愚か者の話。 一つ、愚か者の話をいたしましょう。 その昔、"癒しの言葉"を探す愚か者がありました。 ただ一つ、それを口にす…

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眠る前には花を読む

もそりもそりとやるべき仕事をして。 そうしているうちに、またワードパットの反乱にあったりして。 これで最後という所が長引いて、結局はまた深夜。 眠る前に、昨晩に引…

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43本から成る花束ーー寝る前の戯言

寝る前に草野心平の『私の中の流星群』の気になる箇所をぽつり、ぽつりと。 そうして目次を見やって、並んだ名前を改めて見やる。 43名。43の、それは著者が見送ってきた命…

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一般人が大学所蔵の資料を利用するための豆知識

twitterなぞ見ていると、周囲に学習に対して意欲的な人が多くいる。 欲しい資料を探して古書店を覗き、文学館に赴き、公共図書館は勿論、国立国会図書館だって利用する。そ…

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草野心平ってどんな人?――『詩友 国境を越えて』のススメ

草野心平について知りたいと思ったのは、例によって私がドはまりしているゲーム『文豪とアルケミスト』の影響だった。 可愛らしい外見だが、吐き出す言葉が妙に鋭く胸に刺…

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小泉八雲はどんな人?―『ちくま評伝シリーズ〈ポルトレ〉小泉八雲』のススメ

ちくま評伝シリーズは、筑摩書房が中学生~高校生ぐらいの子どもに向けて書いたいわゆる偉人伝的なシリーズである。 比較的新しいシリーズということもあって、やなせたか…

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泉鏡花が読んでみたい!―どこから読むか、何から読むか

漫画やゲームに取り上げられていることもあり、泉鏡花に手を出す若い人は結構多いのではないかと思っている。 美しい文体で綴られる不可思議な彼の物語は、いつもしみじみ…

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小林多喜二はどんな人?―戯曲・小説『組曲虐殺』から知ってみる

文豪に興味を持ち、本人について調べてみたいと思った時、私はよく壁にぶつかる。 色々と面白い逸話などを聞いたり知ったりすることは楽しいのだが、実は随筆や日記、書簡…

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文豪本が読んでみたい!―文豪の怪談ジュニアセレクションのすすめ

『文豪ストレイドッグス』に、『文豪とアルケミスト』。あるいは『月に吠えらんねえ』。 Twitterをやっていると、こういった作品に触れた人たちが、実際の文豪の著作も読ん…

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Librarian Scarecrowについて

マガジン「Librarian Scarecrow」には本に関する徒然としたことを溜めていこうと思う。 私が読んだ本、人に薦めたい本は勿論、時には所持している司書の資格や数年ばかりで…

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『マイリトルゴート』:痛みの下に寄り添い合う

羊毛アニメ『マイリトルゴート』を見たので、色々とふせったーに書いていたのだが、どうにも長くなってしまった。 ので、久々にNoteの方に書いてみることにした。 以下、作品のネタバレがあるので、これを読む人は気をつけて欲しい。 また、児童虐待や性的虐待も含んだ作品であり、グロテスクな表現も登場する。 トラウマのある人や、フラッシュバックの可能性のある人も閲覧には気をつけて欲しい。 ●物語『マイリトルゴート』は『七匹の子ヤギ』をベースにした作品である。 物語はお母さんヤギが、狼

性格を変えること、ペルソナの装飾を変えること

「性格を変える」、ということについて考えていた。 先日、そんな話題が周囲で出たからと、そういうことなのだけれど。 性格は変えられるのか。 変えられる、変えられない。結論は人によって様々だ。 とりあえず私は「変えられる」派の人間、とここでは告げておこう。 私は「変えられる」と言うけれど、でも私の言う「変えられる」は人によっては「変わった」ことにはならないかもしれない。 何せ私の「性格を変える」とは、そんな大それたことではないからだ。 怒りっぽい人が翌日から嘘のように穏やかに

寓話 癒しの言葉を探した愚か者の話

※ある一人の友人に捧ぐ、奇跡の言葉を探す愚か者の話。 一つ、愚か者の話をいたしましょう。 その昔、"癒しの言葉"を探す愚か者がありました。 ただ一つ、それを口にするだけで誰かの心を楽にできるような、奇跡のような言葉を。 けれど、そんなものはこの世のどこにも、あるはずがありません。 それでも愚か者は、そんな言葉がこの世のどこかにあると信じてやまなかったのです。 愚か者は旅をしました。 行く先々で、いくつもの悲しみと出会い、幾千の言葉を吐き出しました。 けれど愚か者の言葉は

眠る前には花を読む

もそりもそりとやるべき仕事をして。 そうしているうちに、またワードパットの反乱にあったりして。 これで最後という所が長引いて、結局はまた深夜。 眠る前に、昨晩に引き続いて『私の中の流星群』。 連なる章は一つ一つが短くて、眠る前には最適である。 しかし、眠る前に死者に捧げられた言葉を読むのもどうなのか。 昼にそんなことを考えたりもしたが、結局は「いや、だからこそ最適」という結論に達した。 眠りに行く瞬間にこそ死者への言葉は相応しい。 何せ、これから似たような行為を行おう

43本から成る花束ーー寝る前の戯言

寝る前に草野心平の『私の中の流星群』の気になる箇所をぽつり、ぽつりと。 そうして目次を見やって、並んだ名前を改めて見やる。 43名。43の、それは著者が見送ってきた命であるという。 まるで花束のようだ。 頭の中を色とりどりの、43本の花から成る花束を抱きしめる詩人の姿が過ぎった。

一般人が大学所蔵の資料を利用するための豆知識

twitterなぞ見ていると、周囲に学習に対して意欲的な人が多くいる。 欲しい資料を探して古書店を覗き、文学館に赴き、公共図書館は勿論、国立国会図書館だって利用する。そんな人たちが。 そんな人たちを見ていて、私は司書時代に受け付けた「大学所蔵資料のリクエスト」を思い出した。 要するに〇〇大学が所蔵している資料を取り寄せて借りたい、というものなのだが、残念ながら私の勤務していた図書館では黙ってリクエストを取り下げるしかできなかった。 というのも、私が勤務していた図書館では大学

草野心平ってどんな人?――『詩友 国境を越えて』のススメ

草野心平について知りたいと思ったのは、例によって私がドはまりしているゲーム『文豪とアルケミスト』の影響だった。 可愛らしい外見だが、吐き出す言葉が妙に鋭く胸に刺さる。それでいながら、ふとした瞬間に孤独な影を匂わせる。 このキャラのモデルとなった人物はどのような詩を書いた、どのような人なのだろうか。 twitter上にファンが流すプレゼンは本のススメや、ちょっとしたエピソードがメインで、彼という人物を簡潔にまとめたものは見つからない。 知りたいと思う彼自身のことは曖昧に匂わせ

小泉八雲はどんな人?―『ちくま評伝シリーズ〈ポルトレ〉小泉八雲』のススメ

ちくま評伝シリーズは、筑摩書房が中学生~高校生ぐらいの子どもに向けて書いたいわゆる偉人伝的なシリーズである。 比較的新しいシリーズということもあって、やなせたかしや手塚治虫、海外だとスティーブ・ジョブズやマーガレット・サッチャーなどを取り扱っている点が面白い。 私は司書の現役時代、仕事の最中にこれを見つけた。そして我が家の恒例行事である年越し旅行で松江行きが決まった際には、大いに活用させてもらった。 松江と言えば、小泉八雲である。 もともと妖怪に興味があり、そしてDM

泉鏡花が読んでみたい!―どこから読むか、何から読むか

漫画やゲームに取り上げられていることもあり、泉鏡花に手を出す若い人は結構多いのではないかと思っている。 美しい文体で綴られる不可思議な彼の物語は、いつもしみじみとした余韻に満ちていて、とても魅力的だ。その作風は私も好むところである。 しかし、手を出してみたところで挫折しやすい作家の一人でもあるのではないだろうか。 泉鏡花の文体は美しい。だが、その文体は古文調で、古いものほど読みにくいものとなっている。 これを乗り越えるには古典知識うんぬんというよりも、慣れが必要になってく

小林多喜二はどんな人?―戯曲・小説『組曲虐殺』から知ってみる

文豪に興味を持ち、本人について調べてみたいと思った時、私はよく壁にぶつかる。 色々と面白い逸話などを聞いたり知ったりすることは楽しいのだが、実は随筆や日記、書簡といったものが苦手なのである。研究書の類も、よほど相性がよくなければ挫折することが多い。(言いつつ、いつかは読めるようになりたいと積んでいたりするのだが) 人としてのその人を知るには、こういった資料がひじょうに有効だとわかってはいるのだが……。 さて、今回はそんな私が「こういう出会い方もありではないか?」と思った一つ

文豪本が読んでみたい!―文豪の怪談ジュニアセレクションのすすめ

『文豪ストレイドッグス』に、『文豪とアルケミスト』。あるいは『月に吠えらんねえ』。 Twitterをやっていると、こういった作品に触れた人たちが、実際の文豪の著作も読んでみたい!と発言している光景を目にしたりする。そうして、先人たちに何から読めばいいか相談をしていたりする。 そういう時、私がまず真っ先に薦める本がある。 タイトルにもある、汐文社の『文豪の怪談ジュニアセレクション』である。 これは全5巻の第1期と全3巻の第2期から成る小学生~中学生向けの文豪の怪談物のアンソ

Librarian Scarecrowについて

マガジン「Librarian Scarecrow」には本に関する徒然としたことを溜めていこうと思う。 私が読んだ本、人に薦めたい本は勿論、時には所持している司書の資格や数年ばかりではあったが培った司書の経験を生かして、ちょっとした調査のコツなどを。 こんなものを書こうと思ったのは、私がtwitterで上記のような内容を呟いた時、ごくまれにではあるが、いつもからは信じられないくらいのRTやイイネを貰うことがあるせいだ。 また、興味がある作家や本があるのだけれど、どこから調べれ