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文豪本が読んでみたい!―文豪の怪談ジュニアセレクションのすすめ

『文豪ストレイドッグス』に、『文豪とアルケミスト』。あるいは『月に吠えらんねえ』。
Twitterをやっていると、こういった作品に触れた人たちが、実際の文豪の著作も読んでみたい!と発言している光景を目にしたりする。そうして、先人たちに何から読めばいいか相談をしていたりする。
そういう時、私がまず真っ先に薦める本がある。

タイトルにもある、汐文社の『文豪の怪談ジュニアセレクション』である。

これは全5巻の第1期と全3巻の第2期から成る小学生~中学生向けの文豪の怪談物のアンソロジーである。
ジャンルとしては児童向けの本になるが、一部を除いて作品の省略などはなく、原文を下手に現代語訳するようなまねもしていない。
ただ大人の本よりも中に設けられた説明書きがとても丁寧で、ルビも細かに振られている。選出されている作品も短くて読みやすいものばかりだ。
設けられている説明書きも傍注と言って、ページの端にまとめて掲載される形をとっていて、読む邪魔にもならない。
アンソロジーという形式上、一冊で色んな作家の作品が読み比べられるのも魅力的だ。
当然、冒頭で漫画や挙げたゲームに出てくるような作家の作品(残念ながら私は『月吠え』は未読なので自信はないが)も多数収録されている。

文豪ものを教科書以外で読んだことがない、読書経験が少ない、という人でも触れやすく、まだどんな作家の作品が好きかわからない、という人も自分の好みを模索するにはうってつけと言える。

なお、怪談は怖いという人も安心してほしい。
すべての作品にわかりやすくお化けが出るわけではないし、必ずしも人が不幸になるような怖くておどろおどろしい話ばかりではない。
例えばシリーズの『恋』に収録された泉鏡花の「幼い頃の記憶」は幼少期に擦れ違った美しい女性に対する淡い恋のような、憧憬のような、甘い感情の物語である。同書の佐藤春夫の「緑衣の少女」も、鶴の恩返しなどの昔話を連想させるような、異類との切ない恋の物語だ。

上に貼ったリンクは全巻セットなので高価だが、こちらのシリーズは単体でも購入できる。
シリーズのどの巻に誰のどんな話が入っているのかは、汐文社のサイトで見るとわかりやすいだろう。

個人的にとてもイチオシなシリーズなので、気になったならぜひ手に取っていただきたい。

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