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生命の技巧「テロメア」:命の回数券

 テロメアは、私たちの細胞のなかでDNAの末端に存在する特別な構造であり、独特の繰り返し配列で構成されています。それは実際には生物の寿命にも関わっています。これを理解するために「回数券」を考えてみましょう。

 回数券は利用するたびに1つずつ減っていき、最後には使い果たされます。そのように、回数券は利用回数が有限であることを特徴としています。同じように、テロメアも細胞が分裂するたびに1単位ずつ短くなり、ある一定の長さまで短くなると細胞はもう分裂することができなくなるのです。

 では、なぜ自然はこのような仕組みを生命に持たせたのでしょうか? それは、生命を維持し、安定した形で存在させるための巧妙な策略といえます。細胞は分裂をして増殖するたびに、DNAの変異リスクが高まります。テロメアは、細胞の分裂回数を制限することで、変異が蓄積されるリスクを抑え、生命の質を維持しているのです。この仕組みは、生命の持続性を確保するための自然の妙技といえるものです。

 この制約があるからこそ、生物は子孫という新しい個体の生命を作り出す必要があり、これが進化や遺伝の多様性を生み出す原動力となります。もし全ての細胞が無限に生き続けることができるとなれば、新しい細胞の形成や変化は必要なくなり、進化のプロセスも異なっていたかもしれません。

  以上の通り、テロメアは「命の回数券」という言葉で要約することができる生命の大切な機能なのです。

生命の技巧「テロメア」:命の回数券

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