マネジメント SDGs、ESG、CSR、企業の指針あれこれ
先日、とある経営者の集まりで、「SDGsと企業経営」というテーマで講演をさせて頂きました。ここては、SDGsについて、何かするのではなく、SDGsを、2030年の社会の価値基準と考え、それぞれの企業の基準を、未来の基準に合わせて、何をするべきかを考えることか大切だという内容の話をさせて頂きました。
このとき、あとある新聞社が配布した、SDGsの事例集を紹介しました。大切なことは、これらの事例は、SDGsに合わせて行動したわけではなく、社会が向かう先、つまり社会の「在るべき姿」を考えて行動した結果、SDGsに合致していたということです。
SDGsは、2000年に採択された世界が目指す基準であるMDGs(2015年達成目標)を発展させ、2030年の達成目標としたものですから、突然出されたものではありません。採択は2015年ですから、既に計画時間の半分が過ぎています。政府機関や大企業は、採択時(2015年)から取り組んでいますし、厳密に言えばMDGsから取り組んでいますから、既に20年以上経ったことになります。
さらに加えると、MDGsは、1990年代まで、様々な国際機関が設定していた目標を統一したもので、やはり突然新しく策定されたものではありません。
こうした視点からも、SDGsは、これまでの社会の変化の中で、目指すべき基準が時間をかけて発展してきたものであることがわかります。
ちなみにこれは以前も記した内容ですが、講演ではトピックスとして、「ソーシャルマーケティング」についても紹介しました。
マーケティングは、特に第二次世界大戦以降のアメリカで、大きく発展しました。1950年頃、マネジリアル・マーケティングと呼ばれた手法は、とにかく‘売る’ということを目的としており、かなり強引な例も見られました。この反省から、消費者主体のマーケティングという考え方を経て、1970年代後半から台頭したもので、社会全体の利益を前提としたマーケティングの考え方です。
この視点から考えても、現在のSDGsにつながる考え方は、約半世紀前から検討されていたことになります。
・SDGsをどのように捉えるのか
今回の講演で僕はSDGsを、2030年に、社会の基準となる考え方と説明しました。
この話について参加者の方からは、とても参考になったという意見を、複数頂きました。これから企業としてどのようにSDGsに取り組むのかとか、SDGs認定などに興味を持つ方が多い中で、どうやら僕の話はかなり予想外だったようです。
勿論、取り組むことをやめなさいと言っているわけではありません。しかし現在、多くの中小企業は厳しい経営環境に置かれています。そのような状況で、新たな利益や経営改善につながらない活動は、企業を圧迫します。それならば、SDGsを基準(目標)とした経営改善や、SDGsを基準にしたムダの削減を考えた方がよほど建設的です。
また講演では、現代の経営戦略の考え方として、社会の変化に合わせた、これからの企業の在り方を設定し、そこから逆算した戦略が不可欠という話をしました。
しかし実際には、例えば「VUCAの時代」と言われるように、将来を見通すことが難しくなっています。それならば、世界が目指す目標に合わせる方がよほど合理的です。
・外部不経済をなくす
さて、この講演の考え方の要点として、「外部不経済」について説明しました。
自社の経済活動(事業)が社会にもプラスに影響することを外部経済(正の経済)と言います。これは例えば、新しいお店が出店することで、その地域が活性化することなどを指します。
一方で、自社の経済活動によって、マイナスの影響が発生することを外部不経済(負の経済)と言います。これは上記の正の経済に対して、例えば交通渋滞や環境の悪化などが発生することを指します。
外部不経済は、往々にしてその正の経済よりも費用負担が大きくなるだけでなく、企業単位では解決できない場合が多いのが特徴です。それならば、最初から外部不経済を発生させない方法を考えるべきです。
このとき、SDGsのような基準は、非常に効果的な指標になるのです。
・社会の基準をどう取り入れるのか
今回は、特にSDGsと企業経営という、講演の内容に即して記していますが、僕は他の基準も同じように活用すればよいと考えています。
例えばCSRやCSV、ESG経営など、世の中には様々な経営の基準や指針があります。
もちろん、これらの指針は積極的に導入し、企業の成長に寄与させるべきです。しかし中小企業などでは、これらについて1つ1つアクションを起こしていたら、そもそも事業自体が成り立たなくなります。
だからこそ、こうした社会の指針は、目指すべき企業の在り方の指針とすれば良いと考えます。
そうした中で、自社の外部不経済を「削減する」と考えれば、社会に評価される企業になるための努力が、自社の効率化になる。
こんなにおトクな方法は、あまりないのではないかと。
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