マネジメント 改善と改良は異なる作業

以前、僕のnote[弱みは強みに変わるのか2 弱みを強みに変える手順:-を0に、0を+に]で、マイナスをゼロにする作業とゼロをプラスにする作業は異なるということについて記しました。

実際に企業経営のお手伝いをさせて頂くとき、様々な手法で、色々な作業を行いますが、ほとんどの場合が問題解決、つまりマイナスをゼロにする作業です。考えてみれば当然の話で、僕のところに話が来るのは、何か困ったこと、つまり問題があるときです。特に問題がなければ、相談する必要はないですから。

これも以前記したことですが、僕はほとんどの企業に、際立った強みはないと考えています。SWOT分析では、例えば会社の雰囲気なとといった、定性的な内容を強みとして記入する例が見られます。それがいけないとは言いませんが、本来の目的である、クロスSWOT分析を行って、戦略の意思決定に役立てることはできません。
こうしたものは、むしろ企業の問題点を隠すための言い訳に使われてしまうことも多いので、避けるべきです。

・弱みをなくす
さて、こうした中で、僕は弱みをなくすよう指導することにしています。なぜなら、定量的な強みが確立できていなければ、競争優位にはならないからです。そして定量的な強みは、ほとんどの企業にないと考えているわけですから、必然的に弱みをなくすということになります。

しかしこの「弱みをなくす」という作業は、決して容易ではありません。

とある尊敬する経営者の方と公開対談を行ったときのことです。どうしたらうまくいくのかという問いに対して、その方は「当たり前のことを当たり前にやる」と仰いました。しかし、これがなかなか難しいのです。

例を挙げましょう。
宇宙飛行士の選抜試験では、スーパーマンのような、とても優れた人たちが選抜されているように思われがちです。しかし実際には、何かに特化した人ではありません。例えば学校の試験で言うなら、どんな状況ても、常に全科目90点以上とることができる人が選ばれるそうです。これは限られたクルーが、何か起こったときに、他のクルーの仕事も行い、かつミスなく指示通りに作業を行わなければ、命に関わるからだそうです。

まあ、それはそれで、極めて優秀な人たちですけれど。

つまり、「当たり前のことを当たり前に」というのは、かなり難しいことなのです。

・強みを作る
強みを作る作業は、「ゼロをプラスにする」作業です。僕はこれまで、これについてはあまり述べていません。それは先にも述べたように、企業の問題解決を行うことが多く、機会が少ないというのが1番の理由です。

とろで、この「ゼロををプラスにする」という作業について、面白い記事を読みました。
サントリーでは商品開発を行う際、もちろん綿密なマーケティングは行うのですが、同時に「問題解決と遊び心」という考え方があるそうです。「マイナスをゼロにする」のが「問題解決」であるのに対して、「ゼロをプラスにする」ためには「遊び心」が必要だというもの。

これにはかなり感心させられました。

僕は物事を見るとき、光と影を考えます。そして光の当たっていない‘影’の部分に着目し、問題を明らかにして在るべき姿を考える、、、

という癖がついています。これは僕の恩師が常に言っていたこと。これが悪いとは思いませんが、ともするととても重くなってしまいます。

特に、新しいものを生み出そうとするとき、これではどうにも堅苦しいというか、‘正しい考え’を導き出すことはできても、‘楽しい考え’を導き出すことが困難です。
大学の教員、つまり研究者であればそれでもよいのですが、ビジネスではそうはいきません。実はこのことについて、つい最近僕自身が再確認したばかりでした。

先日、経営戦略の集中講座を開催しました。長時間であったことや、プロモーションの時間があまりなかったことなどもあり、それほど多くの人が集まったわけではありませんが、参加者の方は、最後までとても熱心に受講して下さり、僕自身、とても楽しく講義をさせて頂きました。
実はこの講座を開くに当たり、僕自身、かなり悩みました。あまり知らなかったのですが、世の中にはとてもたくさんのセミナーがあり、怪しいものも少なくないとか。また以前関わった、社会人向けの講座で、僕の意に沿わない、いい加減なものがあり、かなり嫌な思いをしたからです。そうしたものと同様に見られるのが嫌で、「セミナー」としていないのですが、大学と同様のクオリティで、かつ参加者の方に、本当に役立つものにしたかったからです。

しかし終了後の懇親会で、皆さんからとても良い評価を頂きました。そこであらためて、「人に喜ばれることをすれば、自分も楽しい」ということを再確認しました。

「ゼロをプラスにする」というのは、それまでにないものを生み出すことと似ています。生み出したことで強みが生まれ、関わる人が楽しくなる必要があります。

新たな価値を生み出すためには、楽しく取り組むための「遊び心」が必要なのでしょう。

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