マーケティング マーケティングの2つの視点:講義の課題を紹介します

突然ですが、今回はいつもとは少し違った視点からマーケティングについて考えたいと思います。

僕は今、メインで教えている学校である広告デザイン専門学校では、1年生のロジカルシンキングと2年生のマーケティングを担当しています。
専門学校なので、講義は午後、13:20から16:00までです。かなり長丁場なので、学生さんの様子を見ながら、途中で休憩を挟みますが、おおよそ大学の講義2回の時間です。
この時間で、半期17回ほど講義をしますから、それなりに濃い内容になります。

講義の最後の2回を使って、学生さんには課題をこなしてもらいます。2階にわたって行うのは、内容を1つ1つ説明しながら、個々の学生さんの質問にも対応しているからです。2回の講義時間を使って行いますが、さかこの時間内で完成させられる学生さんはほとんどいませんから、提出は、最後の講義日の1〜2週間後に設定しています。ほとんどの学生さんは、提出期限ギリギリまでかかるようです。

ちなみにこの課題を見た方、社会人の方からは「これを学生さんにやらせるのはエグい」とか「こんなのマーケティング専門会社でもディレクタークラスの内容」などと言われますが、これまでできなかった学生さんはいません。
もちろん、20歳そこそこの学生さんに、完璧な分析ができるとは思っていません。デザインの学校ですから、僕の講義以外で、経営や経済の勉強もしていません。しかし学生さんの課題を見た方は、「これが専門学校の学生さんのもの!?」と、驚かれます。

今回はこの課題を紹介したいと思います。

・課題の内容
課題はA3で3枚とそれなりの量です。学生さんには、興味のあるもの、分析したいと思う、実際の商品やサービスを題材に行います。
前半は市場を中心とした分析を、後半は消費者を中心とした分析を行います。

①市場を中心とした分析
課題の前半は、ビジネスフレームワークを中心とした分析で、以下のものに取り組みます。

・PEST分析
・3C分析
・Five Force分析
・SWOT分析→クロスSWOT分析

これらは一般的に知られているマーケティング分析のフレームワークです。とは言え、やはり若い方には難しいので、かなりの説明や個別の質問に答える必要があります。
講義では、まずPEST分析・3C分析・Five Force分析を行います。このとき、講義で説明した内容も確認しますが、ほとんどの学生さんは、指示しなくてもSTP分析や4P、4C分析などを自発的に行います。

ここまでの内容が前半の前半です。

ここまでの内容を当てはめる形で、SWOT分析→クロスSWOT分析を行うのが前半の後半です。
SWOT分析はとても良く知られている手法ですが、残念ながら、適切に行われている例はほとんどありません。そのため、これまでの内容を適切に当てはめられるように指導し、クロスSWOTにすることで、「何をすべきか」という戦略の概念を明確にします。

②消費者を中心とした分析
課題2日目は、消費者を中心とした分析で、以下のものに取り組みます。

・エンバシーマップ
・消費者モデル(ペルソナ分析)
・カスタマージャーニーマップ
・CXルートマップ

エンバシーマップは、デザイン思考の最初の段階で行われている分析です。これについては、スタンダード大学Dスクールのフォーマットが公開されているので、これを使用します。
この段階で顧客への共感を明確にします。またここコラの作業を行うとき、前半の市場分析の内容も照らし合わせながら行います。エンバシーマップを作成しながら、前半の分析の不備なども見つけて修整します。

エンバシーマップが完成したら、消費者モデル(ペルソナ分析)、カスタマージャーニーマップと進めていきます。

広告デザイン専門学校ですから、学生さんは広告、グラフィックデザインなどが専門です。
特に近年、消費者モデル(ペルソナ分析)は、顧客の特性を明確にすることよりも、ブランドパーソナリティを明確にすることが求められており、この学校の学生さんには大切な要素になりますし、またカスタマージャーニーマップも同様です。

そして最後に、CXルートマップを作成しますが、このフォーマットは、完全に僕のオリジナルです。
色々な企業のお手伝いをする中でできあがったもので、多くの企業で作成し、様々な場面でご活用頂き、開発から販売まで、企業の様々な場面で、多くの成果や成功例があります。

これについては、またあらためて紹介したいと思います。

・マーケティングの2つの視点
この課題は、前半の「市場」や「企業競争」という視点と、後半の「顧客」や「消費者」という視点から成り立っています。
特に近年の、価値観や消費の多様化に対応するためには、こうした2つの視点が必要になります。その中で、顧客が何を求めているのかを、論理的に説明できる必要があります。

僕は出身が経営学なので、課題の前半のようなシステマティックな、また論理的な分析ばかり行っているように思われますが、実は課題の後半のような、人の心や気持ちに寄り添った分析も徹底的に行います。

現代のマーケティングでは、こうした多面的な分析や共感が不可欠なのです。

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