マネジメント 行動指針:まちづくりの「標語」はなぜ実現しないのか

講義や講演などで色々な話をしますが、自分で話していながら、ハッと気づくことがたくさんあります。

毎年、マーケティングの講義では、「企業」と「会社」の違いについて話します。面白いことに、この問いついて、ちゃんと説明できる経営者の方に、ほとんど会うことがありません。
この問いに答えられないということは、企業の基本的な資本システムが理解できていないということになり、それで「経営は座学じゃない」などと言われても、「だから財務3表が読めないのでしょ」と、つっこみたくなるのですが、、、

僕のボヤキはさておき。

経営学の講義では、企業は「共通の目的を持った組織体」と説明します。一方、会社は、「会社法による資本形態」と説明しますですから、会社は企業の分類では、「会社企業」ということになります。
企業には、公企業、私企業といった分類をはじめ、多くの種類があります。最初に説明した定義、「共通の目的を持った組織体」という意味では、例えば「全員でビッグになる!」という目標を持つバンドなんかも、ある意味では企業と言えるのではないでしょうか。

・企業の行動指針
僕はよく企業のCIを担当させて頂きます。以前は知らなかったのですが、CIについて、デザイン会社が担当していることに驚きました。

マーケティングの教科書の内容で説明した場合、CIの設計には、MI(理念の統一)、BI(行動の統一)、VI(視覚の統一)があります。企業のマネジメントという視点から考えた場合、MIとBIが重要であり、これが実現できて初めて、VIの効果を発揮できます。
この点から考えた場合、強固なMIやBIが実現できれば、VIがなくてもCIは実現できます。逆にVIだけでは、組織は機能しません。

余談ですが、ここで言う意味でのCIが実現できていないと、ブランディングも実現できません。
僕はよく「作業品質」と「サービス品質」の両立という話をします。作業品質は、その企業が提供する製品やサービス自体の品質を指します。一方サービス品質は、その企業に関わる人の姿勢や態度を指します。
BIはどちらの品質にも欠かせない要素です。しかし企業のルールには、行動のルールと姿勢のルールという、2つのルールの両立が欠かせません。そしてこの2つのルールをSECIモデルによって、表面化と内在化を繰り返しながら、企業文化として浸透させる必要があります。

だからこそ、CIは組織管理であるマネジメントの分野として考える必要があります。

・まちづくりと組織マネジメント
先日、とある経営者の集まりで、まちづくりと企業について講演させて頂きました。この会は、名古屋市のとある区の経営者の方々の集まりで、その区をもりあげたいという考えの下に集まった会です。

このとき、僕は企業の経営戦略の考え方を基に、まちがどうあるべきかを考え、その在るべき姿に向かって何をするべきかを考える必要があるという話をさせて頂きました。そして企業は、まちの在るべき姿を実現するために、何をするべきを考える必要があると説明させて頂きました。

一口に‘まちづくり’と言っても、地域やまちの形態によって様々ですし、また時代の変化と共に、その目的や役割は変化しています。単に「まちの活性化」という目標が、簡単には実現できないのはそのためです。

ここで少し、まちづくりの変遷について考えてみます。
日本で「まちづくり」という言葉が使われるようになったのは1970年代からです。1960年代の日本は、高度経済成長の負の遺産、例えば公害や交通事故の急増といった問題を抱えることになります。また核家族化が始まった時期でもあり、人の繋がりも希薄になります。こうしたことから、安全な生活環境と人の繋がりが求められました。
1980年代に入ると、地方の過疎化に加え、流通業の発展により商店街の衰退が顕著になり、まちの活性化が中心になりました。
この流れは長らく続きましたが、近年、問題の中心が変化します。
少子高齢化だけでなく、空き家問題や生活の安全性が求められるようになります。

・誰のためのまちづくり?
多くの場合、まちづくりは、その地域の商業者などが中心となって行ってきました。しかし商業者が考えるまちづくりは、その地域のステイクホルダー、例えば住む人、来る人、働く人の利益と一致しないことがしばしばです。
加えて、まちづくりを行う商業者自身も、少子高齢化の問題に直面し、自身の生活に目を向ける必要に迫られました。
こうなると、これまでのまちづくりの形自体が問われることになるのです。

・目標ではなく指針が大切
このような状況の中で、僕自身が多くのまちづくりに参加して、感じたことがあります。
それは、「まちの指針」だけでは、まちづくりは実現しないということです。活気のあるまちづくりのため、まちの指針を作ることは簡単です。しかしまちを作るのは、その地域に関わる人たちです。そしてまちの人達の行動がまちを形作ります。

そう考えると、、、

まちも企業、砲まちの方針やキャッチフレーズより、望むまちにするために、心がけるべきことの方が、より大切だと感じるようになりました。

「まち」という「企業」をどのようにして形作るのが、やはり当事者の行動指針と姿勢が不可欠なのではなきでしょうか。

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