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単語から覚えても、英語力は上がらない──5年で12カ国語をマスターしたYouTuber「Kazu Languages」が外国語習得の独自メソッドを大公開

著者:Kazu Languages/提供:SBクリエイティブ

 「外国語を自由自在に使えたらいいな」──きっと多くの人が、一度は夢見たことがあるのではないでしょうか。

 一方で、「何度か外国語習得にトライしたけれど、挫折してしまった」──というのもまた、多くの人に共通する経験だと思います。そのために外国語習得は「難しいもの」「大変なもの」と刷り込まれて、半ば諦めている人も少なくないはずです。

 私も、学校の「英語の授業」がどうしても好きになれませんでした。

 しかし、あるとき外国の言語や文化への関心が高まり、気付けば5年間でスペイン語、英語、フランス語、アラビア語、インドネシア語、ロシア語、ポルトガル語、ドイツ語、トルコ語、中国語、タイ語、韓国語の12ヵ国語をマスターしていました。

 私は決して「語学の達人」ではありません。天才的な語学センスをもち合わせているわけでもありません。ただ、今まで12の言語をほぼ独学で習得する中で、どのような言語でも「このポイントさえおさえれば、効率的に身につけられる」というコツをつかみ、実践してきただけです。ここでは、そのコツの一部を紹介しましょう。

「聞く・話す」から始めるべき理由

 私の言語習得のメソッドは、大きく(1)「ネイティブの発音を真似る」(2)「実践的な文法を学ぶ」の2ステップに分かれています。

 最初に「文法と多少の単語」を学んでから会話力を身につけていくのではなく、まず「実践的なフレーズを、ネイティブの発音を真似して声に出す」というのを、徹底的に積み重ねます(ステップ1)。

 そこでフレーズを頭の中にストックしつつ、リスニングとスピーキングの素地を作ってから、文法を学んでいく(ステップ2)という順序です。

 ステップ1でリスニングとスピーキングの素地を作るといっても、まだ文法的な知識はゼロですから、ただひたすらネイティブの発音を聴いたまま声に出してみるだけです。

 文法という論理的な裏付けのない状態で、その言語の発音に慣れながら「聞く・話す」の感覚を身につける。まずそこから始めるという意味で、この外国語学習法を私は「感覚的な学び方」と呼んでいるのです。

 リーディングとライティングの素地は、主にステップ2で作られます。

 便宜上「ステップ」とは呼んでいますが、リスニング、スピーキング、リーディング、ライティングの4能力をひとつずつ完結させていくのではありません。ステップ1とステップ2でひととおり素地を作ったら、後は同時進行ですべての力の精度を徐々に高めていくイメージです。

「実用的なフレーズ」をストックする、「正しい発音」を身につける

 ステップ1には、主に2つの目的があります。

 ひとつは、そのままネイティブに対して使える「実用的なフレーズのストック」を作ることです。

 コミュニケーションツールとしての言語を学んでいるときに、最も手応えを感じるのは、覚えたことがネイティブとのコミュニケーションで活きたとき、あるいは「こんなときに使えそうだな」というイメージが湧いたときでしょう。

 たとえ、まだ文法をまったく知らない段階であったとしても、ネイティブが普段使っているフレーズをスラスラと言うことができれば、コミュニケーションは成立してしまいます。

 もちろん、本当に自在な語学力を身につけるには文法の知識が不可欠です。しかし初期段階では、そのまま使えるフレーズのストックを作ったほうが実践的であり、なおかつ実践的な手応えにより意欲を保ちやすいのです。

 もうひとつの目的は、ネイティブの発音をひたすら真似ることで、学び始めの段階からしっかりとした発音を身につけることです。

 最初に、ある程度、正確な発音を身につけてしまうと、その後の学習をかなりスムーズに進めることができます。

 繰り返しになりますが、私のメソッドは「コミュニケーションツールとしての言語」を習得することを目指しています。にもかかわらず、文法知識で頭をいっぱいにして、いざネイティブと話してみようと思ったところで発音につまずいてしまったら、もどかしい思いをしてしまうでしょう。

 だからこそ、ごく初期の段階で、実用的なフレーズと一緒に発音も身につけておいたほうがいいのです。完璧でなくても、その言語の音の特徴をつかみ、「こんな感じで発音する」という感覚を得るだけでも十分です

「単語」ではなく「フレーズ」で覚える

 ステップ1のポイントは、「ひたすらネイティブが日常会話で使うフレーズを聴いて、発音を真似すること」。こうして正しい発音を身につけると共に「すぐに使えるフレーズ」を自分の中にストックしていくことです。

 つまり、「単語を単体で、機械的に覚えていくのではない」ということも、ここでしっかり頭に入れておいてください。あくまでもフレーズごと覚えていくことが、次のステップ2以降で効いてくるのです。

 そもそも「単語の集合体」であるフレーズを覚えれば、最低限の基本的な語彙は自ずと身につきます。

 より多岐にわたるフレーズを聴き取り、話せるようになるには語彙力の強化も欠かせません。しかし単語帳などで機械的に語彙を増やしても、「どんな場面で使えるのか」がわからなければ、覚えても意味がありません。

 また、主語や時制などによって動詞が何とおりにも変化する言語がほとんどです。そこで動詞の原形だけをたくさん覚えても、実用の場面では柔軟に活用することができません。

 こうした失敗は、実はすべて私の実体験なのです。

 まだ自分なりの外国語学習法が確立されていなかったころ、受験勉強の要領で、ひたすら単語帳を繰って英単語を覚えました。

 せめて単語に併記されている例文を見ていればよかったのですが、そこには目もくれなかったせいで「使い道のわからない単語の知識」が蓄積されてしまいました。

 結果として、たくさん単語は知っているのにネイティブの言葉を聴き取れない、自分から話そうと思っても、使うべき単語が思い浮かばないという状態に陥ってしまったのです。

 たくさん単語を覚えたのは、長い目で見れば無駄ではなかったと思います。ただ、ずいぶんと遠回りをしてしまったことは確実でしょう。

 また、日本でスペイン語を勉強していたころ、リスニングとスピーキングの練習が圧倒的に足りていなかったために、ほとんど聴き取れない、ほとんど話せないという状態に陥ってしまった反省も、ここに活かされています。

 特に学び始めの段階で重要なのは、「どれだけ多くの単語を知っているか」ではなく、「基礎的な単語が、実際に話す場面で瞬時に思い浮かぶかどうか」です。

 まだまだ語彙数は少なくても、実用的なフレーズと一緒に基礎単語をストックしておくことで、早い段階からネイティブとのコミュニケーションを楽しめるようになるでしょう。

 より深いコミュニケーションができるようになるために語彙を増やすのは、もう少し後の段階でも遅くはありません。

覚えておきたいおすすめフレーズ30

 せっかくたくさん勉強してきたのに、いざネイティブと話す機会を得たときに、ぜんぜん話せない──これはきっと、外国語学習で挫折を感じるシチュエーションのトップ3に入ると思います。まず英語で、この感覚を味わったという人も多いのではないでしょうか。

 なぜそうなってしまうのかというと、おそらく一番は「スピーキングを練習する機会」に恵まれていないためです。言ってしまえば当たり前なのですが、スピーキングは、実際に話すことでしか鍛えられません。

 いわば、スポーツと同じです。たとえばハウツー本で「クロールのコツ」について読んだだけでは、クロールをできるようになりません。ひたすらプールでバタ足練習をしてこそ、習得できます。

 それと同様に、ネイティブと円滑にコミュニケーションできる力は、実際に話すことでこそ鍛えられます。場数を踏み、「話す経験」を積み重ねることが必要不可欠なのです。

 ですから、自分ひとりで反復練習をするだけでなく、ゆくゆくは、ぜひネイティブと話す機会を積極的に作っていってください

 そこで「話せた!」「伝わった!」「わかった!」という手応えを感じるためにも、まずステップ1の「ひたすらネイティブが言うフレーズを聴いて、発音を真似すること」を積み重ねよう、ということです。

 ここでの目的は先ほども言ったとおり、すぐに使える実用的なフレーズのストックを作ることと、しっかりした発音を身につけることです。

 言語は「音の組み合わせ」です。何度もフレーズを聴き、発音を真似て声に出しているうちに、自然と、その言語の音が頭に刷り込まれていきます。何度も繰り返し聴き、声に出すという反復練習をしていきましょう。

Kazu がすすめる覚えるべきフレーズ30
(1)お名前は何ですか?
(2)出身地はどこですか?
(3)どこに住んでいますか?
(4)元気ですか?
(5)あなたはどうですか?
(6)はじめまして
(7)何をしていますか?
(8)◯◯語を話しますか?
(9)なぜ◯◯語を勉強していますか?
(10)なぜなら◯◯だからです
(11)どれくらい◯◯語を学んでいますか?
(12)趣味は何ですか?
(13)◯◯したことはありますか?
(14)◯◯してもいいですか?
(15)いつ◯◯しましたか?
(16)◯◯が好きですか?
(17)◯◯はどういう意味ですか?
(18)◯◯ができますか?
(19)◯◯がありますか?
(20)もう一度言ってください
(21)◯◯はいくらですか?
(22)◯◯に行きたいです
(23)◯◯まではどうやって行きますか?
(24)どの○○ですか?
(25)あの方はどなたですか?
(26)何時ですか?
(27)おすすめの料理は何ですか?
(28)これをください
(29)お会計をお願いします
(30)◯◯していただけますか?

 上の一覧に掲載したフレーズは、私の経験上、まず覚えておくといい頻出フレーズです。友だちを作るフレーズや現地に滞在中のフレーズを中心にまとめています。

 長くなってしまうためここでは主に質問を載せていますが、それに対する自分の答えもセットで覚えてください。

 5W1Hなどの文法の大事な要素を自然におさらいできるようなフレーズを作りました。最低でも、この30フレーズをスラスラと言えるようになったら、基礎固めはとりあえず完了と見なしていいでしょう。

会話文でリーディングを鍛える

 ステップ1の反復練習で頻出フレーズがスラスラ出てくるようになったら、ステップ2に進むタイミングです。リーディングとライティングの練習を並行して進めていくと、相乗効果でいっそう言語習得がはかどります。

 つまり「ステップ2に進む段階になったらステップ1はおしまい」ではなく、ステップ1は継続しつつ、ステップ2を取り入れるということです。

 たとえば「Pimsleurや、ケンドラ・ランゲージ・スクールをひととおり終えた」、あるいは「頻出フレーズ30をスラスラ言えるようになった」としましょう。そうしたらネイティブの会話が聴けるYouTubeチャンネルなどに練習の場を広げ、さらにフレーズを覚えつつ発音を磨いていく。そこにステップ2を並行させていきます。

 もちろん、忙しい日々の中で外国語学習に充てられる時間には限りがあるでしょうから、何をどれだけ練習するかの時間配分は各々で調節していただければと思います。ただ、ステップ1の「聴いて、発音する」という練習は必ず継続してください。

 さてステップ2では、実践的な文法を学んでいきます。

 まずリーディングから始めるのですが、それには物語や会話文が多く載っている教材が最適です。ネイティブの発音を聴きながらスクリプト(物語や会話のテキスト)を音読できるよう、「音声教材がついているもの」を選んでください。

 私も、いつもCDつきの教材を購入し、教材のスクリプトを読みながらCDの音声と同時に音読する「オーバーラッピング」をしています。

 オーバーラッピングは、テキストを読みながら音読することで、リーディング、リスニング、スピーキングを同時に鍛えることができる効率的な学習法です。私自身、非常に学習効果が高いと感じています。

 ステップ2で文法を学ぶにあたって、ぜひ意識していただきたいのは「文法は、実際のコミュニケーションで活用できるようになって初めて、学んだ価値が出るものである」ということです。

 コミュニケーションツールとしての言語を習得する以上は、「コミュニケーションの実践の場」で活きなくては文法を学ぶ意味がありません。つまり文法は、その言語で自分が話す際、あるいは書く際の強力なサポート役として機能するのです。

外国語習得に「文法」は必要

 私たち日本人は、普段日本語を話していますが、「文法に従って文章を組み立てている」という意識は、ほとんどありません。日本語の文法を論理的に説明できるかどうかも怪しいものです。

 たとえば「私は」と「私が」の違いを文法的に説明できるかといったら、できない人が大半でしょう。でも、「私は」と「私が」には厳密な使い分けがあり、私たちは「そういうものだから」と感覚的に使い分けています。

 母語は、私たちが生まれてからずっと接してきた言語です。周囲から大量のインプットがあり、そこから言葉を体得して大量のアウトプットをする中で、直感的に、ほぼ文法的に正しい文章を構築することができるようになっています。

 たびたび「若い世代の言葉の乱れ」などが取り沙汰されるように、本来の文法的には誤った用法が普及することもありますが、それも含めて、母語とは「暮らしの中で体得するもの」といえるでしょう。

 しかし外国語を習得するとなると、だいぶ勝手が違います。大人になってからの言語習得では、論理的に文法を学ぶ必要があるのです。

 大人であっても、仮に極めて多くのインプットに囲まれて生活する環境に身を置くことができれば、強いて論理的に文法を学ばなくても言語を体得できるのかもしれません。しかし独学の場合は、そうはいきません。

 独学で言語を習得するのなら、「ネイティブの発音を真似して声に出す」という練習を積み重ねるだけでは不十分で、いずれ必ず「文法を学ぶ」という補助輪が必要になってきます。

 ある程度、実用的なフレーズのストックを作ったら、今度は「ルールを理解して使いこなす応用力」をつけることで、習得に向けてさらに上達するための武器を手にすることができるのです。

 具体的な文法習得のメソッドについては、ここでは紹介しきれないので、拙著『ゼロから12ヵ国語マスターした私の最強の外国語習得法』に詳しく書きました。このほかにも本書では、外国語習得におすすめの教材やアプリなども多数紹介していますので、これから英語やその他の外国語を習得を目指している人の参考にしていただけますと幸いです。

※本記事は『ゼロから12ヵ国語マスターした私の最強の外国語習得法』の第3章の一部を抜粋、再編集したものです

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著者・Kazu Languages
インフルエンサー
2000年 3月4日生まれ。愛知県出身。スペインの音楽に関心を抱いたことをきっかけとして、独学で外国語学習を開始。以降、約5年間で12カ国語を習得(スペイン語、英語、フランス語、アラビア語、インドネシア語、ロシア語、ポルトガル語、ドイツ語、トルコ語、中国語、タイ語、韓国語)。 外国語学習の楽しさを発信するため、 2022年に本格的に「Kazu Languages」というチャンネル名でYouTuberとしての活動を開始。年内に登録者数10万人を突破、翌年には台湾の急上昇ランキング3位を記録、そして日本国内でも急上昇ランキング18位となり、アメリカ、ロシア、ブラジル、ドイツ、インドなどさまざまな国からも視聴されるチャンネルになった。

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