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元SEが非IT中小に転職→身近なIT課題に対して無双状態

本マガジン「SEに疲れたら地方中小企業で経理になろう」ですが、ここまで「なぜSEが」「なぜ経理になるべきで」「なぜ地方の中小企業なのか」を順を追って説明してきました。気になるトピックがあればマガジン内の記事を拾い読みしていただければと思います。

今回からは、いよいよそれが具体的にどのような良い影響をもたらしうるかについて数回に渡って記述します。
特に今回は、目先の効果として、自分自身の業務(経理)と周辺業務についての改善トピックを具体例を交え紹介します。

身近な改善から手をつける

いくら期待の大型新人だったとしても、いきなり「この会社では業務システムを刷新することがマストです。3,000万円ほどで可能なので進めさせてください」なんて言い出す新入社員がいたら、「ちょっと待て」となるでしょう。

そこで当記事では、まずは「単独で遂行できる」ような軽微で身近な改善活動について、具体例を挙げて取り上げます。
ざっくばらんに分類すると次の4つがあります。

1. 自分の仕事(経理)を楽にするための改善
2. 会社の経費削減をもたらす改善
3. 会社の事業戦略に役立つ改善
4. 周囲の人たちの効率アップにつながる改善

自分の仕事(経理)を楽にするための改善

経理として入社したのならば、まずは経理業務を改善しましょう。
それによって、仕事のミスを減らして会社での経理担当としての自己の信頼を高め、なにより、他の活動に充てる時間を捻出できるようにするのが大事なのです。

今までは紙と鉛筆で作業していた部分、電卓を叩いていた部分、都度手作業で入力していた部分、などなど数々の「細かな改善ポイント」があるはずです。

Excelのマクロを使ってでも、フリーソフトででも、Googleのサービスでも良いと思います。目の前の自分の仕事の小さな部分から手をつけます。
具体的に、筆者が今の会社に入社してから約1年半の間で実行した改善の例をいくつか挙げます。

・ 伝票データ(MySQL DBに存在)のエクセル化マクロ作成
・ 仕入請求書の期日管理のためCMSツール(フリーソフト)を導入
・ 伝票を手書き管理していた小規模法人をフリー会計ソフトにて管理
・ 送金通知などのexcelフォーマットを統一化、一部マクロ化
・ 法人税確定申告の各別表の値を計算するexcelを作成

会社で使われていた販売会計システムがとにかくデータインポート/エクスポート機能が乏しく、唯一、未加工の生データがMySQLのDBに毎朝溜まるしくみがかろうじてあったので、それを利用してexcelのVBAでSQL文を叩き、必要なデータをexcel化できるようにしました。
もともとたいしてexcelやVBAの知識はないものの、Googleで調べてコピペするレベルでできます。

もちろん、会社の既存システム自体の機能を使って、取引データや会計仕訳データを参照することもできていました。
しかし、過去何年かにおいて特定の勘定科目を含む取引を抽出するだとか、特定仕入先からの仕入履歴を期間抽出するだとか、そういった実務上便利な気の利いた機能はありませんでした。
最悪は、紙で印刷された伝票や帳票の束から探し当てなければなりませんでした。
とりあえずその苦行からは救われました。

また、業種上多品目・多ジャンルの商品仕入・販売があるため、仕入先への支払管理がとにかくたいへんでした。
取引先ごとに振込・手形の違いや支払サイトの違いが当然あり、それらの請求書の体裁も異なります。相殺もあれば、戻り金がある場合があります。
請求書という紙ベースでやってくる情報に対し、このような商習慣上のイレギュラー処理も考慮しながら、支払処理を毎月数十件するわけです。前任者が紙と電卓でやっていたのが奇跡レベルです。

そこで下の顧客管理ツールを利用し、仕入支払い管理をするようにしました。

これにより、支払期日別に請求書を一覧したり過去の支払履歴を参照したりが楽にでき、支払漏れや金額間違いといった単純ミスは大幅になくなりました。

また、仕入先が誤った請求をしてきたり、逆に自社側で誤った金額で仕入が入力されていることもあるので、請求内容について担当者のチェックに加えて経理部門でも照合しないといけません。紙(請求書)と紙(帳簿)の照合では膨大な時間を要していました。
これは先に述べた仕組みで、せめて自社側のデータはエクセル化し、照合作業を効率化しました。(ただし、相手からの請求書は変わらず紙のため、無駄は否めません。これについては別記します。)

こんな感じで、使っているスキルといったらExcel VBAでマクロ作成と、ローカルPCにApache、MySQL、PHPをインストールすることや、フリーソフトを見つけてきて使いこなすことくらいです。
それだけでも、重荷だった経理関係業務がだいぶ効率化され、自分の時間を生むことができたと思います。

会社の経費削減をもたらす改善

直接的に経費削減に繋がる改善というのは、会社として拒否する理由がありません。

ただし、それまでの機能を損なうとかそれによって不便を生むものであってはいけません。「おそらく自分でできるだろう」と思ったものであっても、確信を持てないものやリスクを伴うものは多少コストがかかっても外部委託する判断も必要です。

筆者の入社1年半での具体例です。

・会社サイト用レンタルサーバーを安価で使いやすいものにリプレースしデータ移行
・アンチウィルスソフトを安価で統合管理できる製品にリプレース
・業務用携帯電話のプラン見直し
・ECサイトの広告経費見直し
・外部委託していた月々のITサポートを解約
・光回線契約とプロバイダの見直し

入社以前は、「システム担当」という存在が社内にいなかったため、ちょっとパソコンの動作がおかしい程度でも有償サポートに頼ってましたし、高いものを買わされていても他製品と比較検討して自力でリプレースするということもしなかったわけです。

その束縛から解かれ、製品選択の判断含め自由に提案して良いという立場になれば、経費削減ネタは尽きることがありません。

たとえ月数千円の削減であっても、面倒臭がらずに積極的にやったほうが良いと思います。そしてその成果を文書にするなどしてしっかりアピールしましょう。

少しいやらしい話をすれば、鶴の一声で加給もある中小企業では「月◯万円の削減をしてくれたのだから、◯千円くらい給料を増やしてやろう」という判断もあるわけです。金銭的なインセンティブも見込めます。

会社の事業戦略に役立つ改善

社員が皆PCスキルに疎いということは、単に業務効率上不利という問題だけではありません。イコール、データ処理ができていないということにもつながります。
つまり、事業戦略上当たり前にされているはずの、実績の集計・加工・統計分析などがおろそかになっていることがあります。

一般的な販売管理パッケージやBMIツールを使っていれば、その手の分析機能は標準で付いてくると思います。
しかしながら、その機能が使いこなせていないとか、そもそもパッケージなどではなく作り込みの自社独自システムを使っているがために統計機能が限定されているといった中小企業は少なくないでしょう。

ところで、2000年台からはじまったMBAブームはもう去った、価値が下がったという声があります。それはその手の経営分析が不要になったということを意味するわけではありません。
あまりに当たり前にどの企業もやるようになってしまったがために、その分析結果から得られる情報のみに頼っていてはもはや他社とは差別化できない、という意味合いです。それはそれで依然大事だと思います。

しかし地方の中小企業の場合は、必ずしも大企業の経営分析手法が意味をなさない場合があるのではないでしょうか。
リスクを理解しながらも特定の取引先に依存せざるを得なかったり、景気や気象条件に大きく左右されたり、国の政策に大きく影響を受けたりなどです。

だからこそ、そのときどきに応じた細かい経営データを即時にアウトプットできるようにし、状況に応じて小回りが利く企業体質にすることが大事と考えています。

そう言うとなんだか大層な物言いですが、簡単に言えば、経営陣が「こんなデータ欲しいな」と言った時に数日後には出せるようにしておく、といったところでしょうか。
その類のもので同様に筆者の取り組み例を挙げます。

・ 商品分類別売上・利益上位取引先データ作成
・ 不良在庫データの作成
・ ECサイトの売り上げ分析(推移、出荷先、利益計算など)

まだ実現できていませんが、人的な「長年の勘」に頼っているようなPSI(生販在)管理について、いろいろな側面からデータで最適値を示せたら良いなと思索中です。

周囲の人たちの効率アップにつながる改善

本職の経理業務を改善して時間を作ることができたのならば、自分の周りにも良い影響を及ぼすような改善をしていきましょう。

たとえば、ソフトの使い方を教えるのでも良いし、会社のWebサイトを改善するのでも良い。自分用に作ったツールを広げるとか、ときには明らかに非効率な作業をしている人を見つけては、解決策を提示してあげること。(強引ではなく、あくまでさりげなく)

おそらく特別な意識はしなくても、作業効率を求められるSEという立場で自分の業務を磨き上げてきた人であったり、顧客に業務改善を提案するような経験があれば、自分や周囲の無駄な作業には嫌が応にも気づいてしまうはずです。

この際に「地方の中小企業」がポイントとなる理由は「少しの工夫で大きな効果を生むネタが満載」であることでした。次の記事で詳しく述べました。

では、筆者の具体例です。

・ 問い合わせ管理ツール作成(Googleスプレッドシート +GAS)
・ DM用封筒住所印刷ツール作成
・ ECサイトのデータ更新簡易化
・ 社内チャットツール導入
・ PC環境のマルチモニタ化
・ リモートアクセスによる他営業所PCのトラブル支援
・ 社長のiPad/iPhoneの操作・設定の世話

またしてもほとんどはExcelマクロやフリーソフトでできることです。
まったくたいしたことない項目もありますが、そういった大したことないことを直ぐに解決できる人が社内にいることが大事ということをしつこく言いたいと思います。

また、肝要なのは「細かいことをたくさんやる」「できるだけ多くの人に役立つことをやる」という点です。
それによって接する社員が増え、「独自に会社に良い影響を及ぼしている」という存在として認めてもらえるでしょう。

まとめと注意

当記事では、元SEの経理担当がやるべき「身近な改善」として、「対自分」「対会社」「対周囲」の分類で、具体例を交え説明しました。

最後にもう一度強調して言いますが、大前提として「経理業務を着実にこなすこと」。これが伴わなければ「お前の立場はなんなの?」となってしまいます。

とはいえ、入社したてで業種も初めてという状態で、まずは本職をこなしながら、プラスアルファで他のことに手をつけるのは決して易しくはないです。
しかし逆に言えば入社したてなら本職の粗相も多少は大目に見てもらえるはずです。それも利用し「いきなり本職で100点」を目指さなければ、時間を捻出することもできるでしょう。

また、「将来的にはプラスでも、導入には社員の手を煩わせる」ようなものは一旦保留したほうが良いと思います。そうったものは、実績を積み上げた上で、信頼を得てからやったほうが良いですね。

普通、「直ぐに簡単にできて誰の手も煩わせず効果が上がる改善」なんて宝のようなものが手付かずのまま会社に存在していること自体がビックリな話なのですが、SE目線で地方の中小企業を見ると、そんなネタが尽きないくらいいっぱいあるのです。

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