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【英語】RACI / RASCI / RAPID®

外資系企業では、RACI(「レイシー」)とか、RASCI(「ラスキー」)とかいう言葉がよく使われる。RAPID®(「ラピッド」)という、類似の概念も最近聞いた。

これらは、プロジェクトや案件などで、責任や役割を明確化するための、責任分担、役割分担の枠組みのことだ。これにより、誰(どこの部署)が意思決定を行うのか、その意思決定にあたり、他のメンバー(他の部署)がどうかかわるのかを明確化することができる。

おそらく、最もポピュラーなのは、RACI(レイシー)ではないかと思う。これを例にとって説明すると、通常、"RACI matrix"とか、"RACI chart"などと呼ばれる図が作られる。各プロジェクトメンバーが、R、A、C、I、で始まる英単語の示す、それぞれの責任や役割のどれを担うのかを、ビジュアル的に示す図だ。

RACI(レイシー)

Responsible(実行責任者、実際にプロジェクトを動かす人)
Accountable(説明責任者、最終的にプロジェクトの責任を負う人)
Consulted(相談先)
Informed(情報共有先)

ちなみに、リクルート系の転職サービス会社のサイトに、RACIについてよくまとまっていたので、こちらへのリンクを貼っておく。

さて、私が、新規プロジェクトなどに参加したとき、このRACI表の中に、自分の名前、あるいは、自分の部署の名前を見つけたら、どうするか。

それがResponsible, Accountableであれば、実行責任、あるいは説明責任を担うということだから、通常、意思決定の権限と責任を持ち、その役割は重大だ。だから、その責任を実際に引き受けられるのかどうなのか、慎重な検討が必要だ。自分あるいは自分の部署で本来その責任を担うべきではないのに、そこに名前が挙げられているとなれば、それに直ちに異を唱え、再検討を促さなければならない。あるいは、その責任を担えるためのリソースが不足しているなら、そのことを指摘しなければならない。

そして、その責任を負うことが業務上妥当であり、その役割を受け入れるのであれば、責任者としての適切な行動をしなければならない。プロジェクトを成功させるために、計画を作ったり、必要な予算や人員を確保したりと、主体的に動き、必要な指示をしたり、手配し、進捗管理をしなければならない。

それに比べ、Consulted, Informedであれば、責任を負うわけではないから、Pesponsible, Accountableに比べると、随分、気がラクだ。しかし、Consultedであれば、こちらの意見やアドバイスを求められ、それが、責任者の意思決定につながるのであるから、やはり大切な役割であることには変わりはない。Informedであれば、情報を共有してもらえるのだから、受け身で待っていればよいことにはなるが、情報を知る必要のある人、部署だということだから、情報の共有を受けて、万一、気づいたことがあれば、直ちに意見を言ったり助言をしたりすることが期待されている。

RASCI(ラスキー)

Responsible(実行責任者)
Accountable(説明責任者)
Supporter(サポーター、補助者、責任者をサポートする者)
Consulted(相談先)
Informed(情報共有先)

これは、上のRACIに、Supporterを加えたものになる。Resonsibleの役割を補助する者、ということだ。

RAPID®(ラピッド)

Recommend(推薦者、提案者)
Agree(同意者、拒否権を行使できる人)
Perform(遂行者)
Input(情報提供者、決定のための情報を収集する人)
Decide(意思決定権者)

これは、実際に実務で使ったことはないが、最近耳にした概念だ。よく似ているので、ここに載せておく。

なお、この、RAPID®は、右肩の®マークが示すように、商標登録されているようだ。権利者は、グローバルのコンサル会社である、Bain & Company, Inc.であるらしい。こちらの同社のホームページへのリンクも載せておく。

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私の見聞きするところによると、多くの日本企業では、ひとつの意思決定をするために、稟議書を作って多くの承認者に回し、沢山の承認者がそれにハンコを押して、全員が承認したら決裁完了、というやり方を取っているように思う。10年以上前のことになるが、私が一時期所属していた日本の組織でも、そのようなやり方だった。多いときは、5人も6人も決裁していた。

しかし、意思決定者が多いと、当然、決裁のスピードは遅くなる。それに、ひとつの意思決定に沢山の人々の時間を使うのは、とてつもなく生産性が悪い。私が決裁文書の起案担当者になったときは、沢山の承認者に対して同じ説明を繰り返し、また、決裁をただ待つだけの時間を過ごしたりと、随分無駄な時間を過ごしていたなあと思う。人的コストもかかる上に、意思決定が遅れることによって、ビジネスチャンスを逃してしまうかもしれない。

さらに、承認者が沢山いると、意思決定に対する責任意識が、どうしても薄れてしまうだろう。稟議書の後ろの方に名前が挙がっていると、自分より先に既にハンコを押してくれている部下たちの目を通っているのだから、まあ問題ないだろうということで、決裁が甘くなってしまうし、ひとりの人が沢山の決裁に関与すると、ひとつひとつについての審査にかける時間が少なくなってしまう。そうすると、誰も隠れた問題点に気づかず漫然と承認してしまい、間違った意思決定をしてしまうというリスクが出てくるだろう。

外資系企業でよく用いられている、この"RACI"等の枠組みの下では、Responsibleが案件の遂行に責任を負い、Accountableが最終的に責任を負う。だから、これらのResponsible,Accountableに相当する人は、おのずと、プロジェクトの進捗管理はしっかり行うし、自分事として真剣に意思決定を行う。Consulted, Informedの人々は、ResponsibleやAccountableを助けたり、チェックしたりする立場から側面支援する。そうやって役割が明確なほうが、意思決定は迅速かつ適切なものになるはずだ。大変合理的なやり方だと思っている。

ご参考になれば幸いです!

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