今日ご紹介するのは、俳優である上白石萌音さんのエッセイ集『いろいろ』(NHK出版、2021年)。彼女のプライベートなことを「いろいろ」と綴った、等身大のエッセイ。
上白石萌音さんは、数週間前まで放送されていたNHK朝の連ドラ『カムカムエヴリバディ』のヒロインのひとり、雉島安子を演じていた。好評だったので、ご存知の方も多いと思う。
本書は、ひとことで言うと、素敵なエッセイの詰まった、宝石箱のような作品だ。まずは、特に気に入った箇所を抜粋させていただく。
以上は、ほんの一部。どのエッセイも、文章が素直でやわらかく、すっと心に入ってきた。読みやすく、サクッと読めるのだが、じんわりと温かな読後感がしばらく残る。時々、新鮮な言葉の使い方にハッとさせられる。本好きだということで、言葉を扱うセンスが良いのだろう。そして、まっすぐで表裏のない、素直で優しい性格なのだろうなあということが、容易に想像できる。
俳優という仕事と一生懸命向き合っている様子も、いくつかのエッセイから読み取れた。お風呂で台本をページがふにゃふにゃになるまで読み込む。演じるテーマの舞台となった地に、一人で赴く。仕事仲間を「家族」と表現する。真摯で誠実、そして頑張り屋さんなのだろう。心から応援したくなる。
妹さん(上白石萌歌さん)と暮らしている。洗濯などの家事をする場面がよく出てくる。休日にぐうたらする、ということも書いてある。ごくありきたりな日常生活を送っている、普通の女の子の側面もある。そして、ご家族とのエピソードにおいては、愛情深い家庭に育ったのだなということがよく分かる。
文章のみならず、彼女のこぼれるような笑顔を収めた写真も、たくさん掲載されている。短編小説『ほどける』や、故郷である鹿児島の小旅行レポートもついている。いずれも、ほっこりする。
本当に素敵な本だ。この本に出会えてよかった。萌音ファンはもちろんのこと、そうでない方にも、是非一度手に取っていただきたいと思う。
ご参考になれば幸いです!
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