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【御朱印&読書録】日本仏教13宗派

私は、いわゆる「御朱印ガール」として、ここ数年、御朱印を集めながら、仏教の宗派について、少しずつ調べてきた。そうして得た断片的な情報をまとめてみたいと思う。

日本の仏教の流れ

日本の仏教は、インドから中国、朝鮮半島を経て伝来した。仏教の公伝は538年(一説に552年)。その後の流れは、以下の表が分かりやすい。

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(『宗教年鑑』(令和2年版)18ページより抜粋)

日本仏教の13宗派

日本の伝統仏教は大きく13の宗派に分けられる。これは、明治政府が13宗56派を公認していた事実に由来する。(その後、昭和14年の宗教団体法成立後、28宗派にまとめられた。昭和26年に宗教法人法が成立し、文科省大臣所轄包括宗教法人としては、令和元年現在、156の仏教宗派が存在する。)

13宗派は、大きく6つの系統に分類される。

1. 奈良仏教系(①法相宗・②華厳宗・③律宗)
2. 天台系(④天台宗)
3. 真言系(⑤真言宗)
4. 浄土系(⑥融通念仏宗・⑦浄土宗・⑧浄土真宗・⑨時宗)
5. 禅系(⑩臨済宗・⑪曹洞宗・⑫黄檗宗)
6. 日蓮系(⑬日蓮宗)

以下、6つの系統別に13宗派の情報をまとめてみる。

1. 奈良仏教系

①法相宗

【宗祖】道昭
【本山】興福寺、薬師寺
【本尊】唯識曼荼羅図もしくは弥勒菩薩(薬師寺では薬師如来)
【特徴】インドに由来する唯識教学を研究。

②華厳宗

【開祖】良弁
【本山】東大寺
【本尊】廬舎那仏
【特徴】華厳教学を研究。全国の国分寺の組織が整備された。

③律宗

【開祖】鑑真
【本山】唐招提寺
【本尊】特定の本尊はない(唐招提寺では廬舎那仏)
【特徴】戒律の研究と実践を目的とする。

2. 天台系

④天台宗

【開祖】最澄(伝教大師)
【本山】比叡山延暦寺(天台宗)、園城寺(三井寺)(天台寺門宗)。
【本尊】特定の本尊はない
【特徴】すべての人が必ず成仏できると説く『法華経』信仰。厳しい修行。

3. 真言系

⑤真言宗

【開祖】空海(弘法大師)
【本山】金剛峰寺(高野山真言宗)、東寺(真言宗)など
【本尊】大日如来
【特徴】密教。生きとし生けるものは、宇宙の根源的な生命である大日如来の顕現で、身・口・意の三密行の実践により即身成仏することができる。たくさんの分派が林立している。

4. 浄土系

⑥融通念仏宗

【開祖】良忍
【本山】大念佛寺
【本尊】十一尊天得如来図(阿弥陀如来と、観音菩薩、勢至菩薩を含む10の奏楽菩薩が極楽浄土へ迎えに来る図)
【特徴】自他の念仏が相互に力を及ぼしあって浄土に往生する。

⑦浄土宗

【開祖】法然
【本山】知恩院、増上寺など
【本尊】阿弥陀如来・観音菩薩・勢至菩薩の三尊
【特徴】阿弥陀仏の御名を称えることによって極楽浄土にひきとっていただき、そこでやがて悟りを開く方がふさわしいとして、専ら念仏の易行のみを修する。

⑧浄土真宗 

【開祖】親鸞
【本山】西本願寺(浄土真宗本願寺派)、東本願寺(真宗大谷派)など
【本尊】阿弥陀如来
【特徴】念仏の教えこそ真実であるが、信心に徹底し、浄土往生以前にこの世で救いが成就するとした。御朱印を授与しない寺院が多い。

⑨時宗

【開祖】一遍
【本山】遊行寺(清浄光寺)
【本尊】阿弥陀如来
【特徴】「南無阿弥陀仏」と唱えれば誰もが平等に救われる。

5. 禅系

⑩臨済宗

【開祖】栄西
【本山】妙心寺、大徳寺、南禅寺、天龍寺、相国寺、建仁寺、東福寺など
【本尊】釈迦如来
【特徴】座禅を組んで精神統一の状態に入り、自己の本性を見徹し、悟りを開くことを目的とする。

⑪曹洞宗 

【開祖】道元
【本山】永平寺、總持寺
【本尊】釈迦如来
【特徴】只管打座(しかんたざ)、ただ座禅を行うことによって釈迦の悟りの境地へと至る。座禅中に公案を考えることをしない。日常生活の微に入り際にわたって綿密な規定がなされている。

⑫黄檗宗

【開祖】隠元隆琦(いんげんりゅうき)
【本山】萬福寺
【本尊】釈迦如来
【特徴】座禅を行いながら念仏を唱える。

6. 日蓮系

⑬日蓮宗

【開祖】日蓮
【本山】身延山久遠寺、池上本門寺
【本尊】釈迦如来と多宝如来を本尊とする寺もあれば、大曼荼羅を本尊とする寺もある。
【特徴】南無妙法蓮華経の題目を唱える唱題を解く。「妙法蓮華経」の題目は単に名称ではなく仏陀の証悟の世界そのものである。大曼荼羅も本尊として礼拝の対象とする。

この記事をまとめた理由

私は、御朱印ガールとして、暇さえあれば、色々なお寺を巡ってきた。その経緯はこちらの記事(↓)でどうぞ。

訪問するお寺の選び方は、最初は、単に、ときめくかどうか、みたいな感じだった(どこかの、片付けの話みたいだが。)。それぞれのお寺が、◯◯宗◯◯派に属するといった情報は、ネットの情報やパンフレットなどで目にしてきたが、正直なところ、最初はあまり関心がなかった。

しかし、たくさんのお寺を訪問するにあたり、少しづつ、それぞれのお寺での、お経、ご本尊などの仏像、御朱印などに、宗派による共通の特徴が垣間見えてきた。そこから、次第に、仏教の教えに興味を持つようになった。

お恥ずかしい話だが、私の仏教についての知識は、長らく、中学や高校で、歴史の試験のために、暗記したレベルでストップしていた。いや、その暗記した知識すらも、大半は忘れていた。そこで、それぞれの宗派の特徴や歴史の基礎を、もう一度、きちんと学びたいと思うようになった。

参考文献

では、何から学べばよいか。ネットで宗派をググると、葬儀屋さんのウェブサイトが沢山ヒットした。お葬式を出すときの、宗派によるお作法の違いなどをまとめたものだった。書店には、お寺巡りの旅行ガイドなどは、平積みされて売れているようだが、読み物としてポップで楽しいものの、内容が薄いものが多かった。

せっかく学ぶのだから、しっかりした情報源から基礎的な情報を得たいと思った。さて、何を読めばよいのか。情報源を探すことから始めた。図書館で色々な本も借りてみた。しかし、仏教は本当に奥が深く、専門色の強い資料になると、難しすぎてチンプンカンプンで、挫折しそうになった。

そんななか、いくつかの、わかりやすい資料や本に出会った。私のような素人にも、わかりやすく解説してくれているものだ。

●『宗教年鑑』(令和2年版)(文化庁)

なんといっても、文化庁がまとめている資料である。信頼できる情報源であるし、毎年更新されていてアップデートされている。PDFで無料でダウンロードできる。
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/hakusho_nenjihokokusho/shukyo_nenkan/pdf/r02nenkan.pdf

●『とってもやさしい はじめての仏教』(公益財団法人仏教伝道協会)

京都・宇治の平等院を訪問した際、休憩エリアに置いてあり、たまたま手に取った、公益財団法人仏教伝道協会の無料のリーフレット。その名のとおり、とても易しく記述してあった。Amazon kindleでも読めることを発見した。

●『日本仏教13宗派がわかる本』(正木晃)

13宗派について分かりやすく、かつ詳しく記述されていて、大変参考になった。著者は宗教学が専門の研究者であり、内容に信頼もおけそうだ。図書館で借りて読んだ後、すぐに購入した。

●『はっきりわかる! 日本の仏教宗派』(SEIBIDO MOOK)

これは、ビジュアルでとても分かりやすい本。表紙のイラストの、ずらりと並んだ13宗の宗祖さまたちのインパクトがすごい…! 

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こちらも図書館で借りて読んだ後、すぐに購入した。

これらの資料を中心に、情報を集め、13宗の基礎情報を、ここにまとめた。この作業によって、今まで訪問したお寺の特徴や、その時代背景が、鮮明に蘇ってきた。

そして、今まで事前にたいして勉強もせずに、気楽に御朱印を集めてきたのが、恥ずかしく思えた。でも、これからお寺を訪問する際には、それぞれのお寺をもっと深く理解できると思うと、ますますお寺巡りが楽しみになった。

そして、13宗の主要なお寺が、まだまだ全国に多く存在することが分かり、お寺巡りへの意欲が一層高まった。まだまだこの先、御朱印めぐりの果てしない旅が続きそうだ…。

ご参考になれば幸いです!

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