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【読書録】『パン屋ではおにぎりを売れ』柿内尚文

奇抜なタイトルが目を引く、『パン屋ではおにぎりを売れ』(2020年6月)。これだけだと何の本だか分かりにくいが、副題は、『地味だけど一生役立つ「考える技術」』『想像以上の答えが見つかる思考法』。このとおり、ひとことで言うと、新しい価値を生み、人生に役立つ、「考える技術」「思考法」について、やさしく教えてくれる本。

著者は、特に、実用書の分野において、数々のベストセラーを生んできた編集者。編集のプロがご自身で書いた本だけあって、読み手の興味を引き付けて一気に読ませる、自己啓発書のお手本のような本だと思った。

この本の構成

目次は次のとおり。

第1章「考える」について最初に知ってほしい3つのこと
第2章「考える技術」で未来は変えられる
第3章「考える技術」を思い通りにつかいこなす
第4章 頭の中をクリアにする「思考ノート」のつくり方
第5章 考える技術がさらに上がる習慣

第1章では、考えることと、はどういうことかを、第2章では、考えることでどれだけ人生がよいものになるかを述べている。

第3章では、具体的に考える技術を伝授している。ここが大変実践的で、本書のキモともいうべき部分。

第4章は思考を可視化するための、ノートの作り方について。第5章は考える技術をさらに上げるための習慣について。

著者がベストセラーメーカーの編集者だけあって、すっきりとした構成で、章から章への流れもよい。

考える技術

以下、本書のキモである、第3章のエッセンスを、備忘のためにまとめる。

考える=「考えを広げる+考えを深める」

考える技術には、「考えを広げる」と、「考えを深める」2つの要素がある。本書は、以下のとおり、わかりやすくそれらのコツを、6つずつ、まとめてくれている。

考えを広げる方法6つ

かけあわせ法:出会ったことのない言葉と言葉を合わせる。思いついた言葉をとにかく掛け合わせ、ひたすら続ける。とにかく数。

数珠つなぎ連想法:出会ったことがあるもの、イメージできるものをどんどんつなげていく方法。既存のものに新しい魅力、価値を発見したいとき。数を書き出す。

ずらす法:既存のものの価値の再発見をして、ずらせる場所や人を探す。お客さんと市場の声を丁寧に聞く。

脱2択:AかBか選択しないといけないときに、「AもBも両方とる」というところから考えをスタートさせる。

まとめる法:ある特定の領域に限ってインプットし、その魅力や価値をアウトプットする。集める→法則化→実行。1つひとつは普通でも、まとめるとオリジナリティが生まれる。

あったらいいな:イノベーションの多くは、「あったらいいな」から生まれている。思いや夢をそのままにせず、実現させることを考えてみる。

考えを深める方法6つ

360度分解法:無理やりにでもいいところ、魅力、価値があるところを360度全方位から分解して書き出していく方法。ダメなところだけではなくいいところも書く。長所は短所に、短所は長所に変換してみる。

ポジティブ価値化:マイナスイメージなもの、ネガティブなもの、ダメだとされなものは、逆に新たな価値にすることができる。弱点の根源をつかんで解決策を見つける。考えるテーマの根っこにある本質的な課題や価値を見極める。

自分ゴト、あなたゴト、社会ゴト:この3つの要素が重なると、人の興味はグッと高まる。

すごろく法:逆算思考。ゴールまでの図をつくり、ビジュアルで俯瞰する。やることが明確になる。

正体探し:人の心の中にある無意識の心理を見つけ出す。ヒット=「無意識」×「その人数」。正体を探すためには、「比較」することで見える化する。

キャッチコピー法:伝え方を間違えてしまうとゴールを達成できない。言語化したものを魅力的な表現にする。

この本から得た気づき

上記の「考えを広げる方法」「考えを深める方法」は、一番の学びであったが、そのほかに、以下のような気づきがあった。

ネタは身近に転がっている!

無から有を生むというのはハードルが高いが、そんなことを目指さなくてもよい。アイデアのネタは身近に転がっている。既存のものをマネするところから始めればよい(「オリジナル=マネ×マネ×マネ」(第5章))。

そして、考える技術で、かけあわす、ずらす、まとめるなど、ちょっとした思考の工夫をすることで、アイデアが生まれて、人生に役立てることができる。マネをしてもいいのだ。マネのしかたでオリジナリティーが生まれる。

アイデアを生むことのハードルは、実は、私たちが思っているほど高くないのかもしれない。普段何気なく見過ごしている身の回りの物事や現象に、視点を変えて注目してみるなど、少しずつできることから始めていけば、意外に、誰にでもアイデアを生むことはできるのではないかと感じた。

考える時間と場所をつくる!

身近なネタをアイデアに昇華させるためには、考えるための時間と、場所を意識的に作ることが重要だと気づかせてもらった。忙しい現代社会では、時間に追われ、隙間時間にはついスマホを眺めてしまうため、考えを広め、深めることが十分にできていない。

このような状況から脱却するためには、考える時間を十分にスケジュールに組み込み、考える場所や環境を確保するとよいと学んだ。

昔から、文章を考えるのに最適な場所は三上(馬上、枕上、厠上)であったという。そして、著者にとっては、最適な考える場所=「シンキングプレイス」は、電車の中、風呂、カフェ、散歩中、ランニング中、書斎、会議、だということだ (p263-264)。

そう言えば、私は、ひとり旅をしているときや、ランニングをしているときに、ふと、色々なことを考える瞬間が訪れる。もっと自分なりのシンキングプレイス&時間を確保して、考える習慣を定着させたいと感じた。

結果=「考える技術」×「考える時間」×「行動」(p258)

読んで字のごとし。考える技術を学んだので、あとは時間を作り、行動するのみ!

おわりに

こちらに書いた以外にも、考える技術で素晴らしいアイデアが生まれた事例がふんだんに盛り込まれているし、思考をアイデアに昇華させるノートの使い方など、役立つアイデアが満載だ。とても平易な言葉で書かれていて読みやすいので、誰にでも気軽に読んでいただき、役立てていただける良書だと思う。

是非、お読みになってみてください。ご参考になれば幸いです!


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