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女性管理職割合目標と、「黄金の3割」理論について。

今までに勤務した会社で、ダイバーシティ(多様性)促進のためのプロジェクトに関わる機会があった。

ダイバーシティには、性別、国籍、年齢、経歴、性的指向など、いろいろな切り口があるが、日本で多くの企業がまず取り組もうとしているのが、ジェンダー・ダイバーシティーであり、女性役員や女性管理職の増加だろう。

このトピックに関して、最近、いくつかのニュースに接したので、備忘のためにまとめてみた。

(1)指導的地位における女性の割合についての政府目標(2020年30%)の先送り

2020年7月21日のニュースによると、政府は、指導的地位における女性の割合を2020年までに30%にするとした従来の目標を、「2020年代の可能な限り早期に」先送りする方針を定めたそうである。さらに、2030年代には、指導的地位にある男女の比率が同水準になることを目指すという。

(2)女性管理職割合は平均7.8%(帝国データバンク)

2020年8月17日、帝国データバンクが、今年7月に行った、女性登用に対する企業の意識調査の結果をリリースした。それによると、女性管理職割合は平均7.8%であったということであった。この調査対象は全国2万3,680社、有効回答企業数は1万1,732社ということだから、中小企業も多く含まれているものと思う。

(3)2020年女性管理職30%の達成率は、外資系企業17%、日系企業8%(エンワールド・ジャパン)

エンワールドジャパンの2020年3月9日プレスリリースによると、同社の「女性管理職実態調査」の結果、2020年女性管理職30%の達成率は、外資系企業17%、日系企業8%であったとのこと。

(4)30% Club

最近になって、30% Clubという団体があることを知った。2010年に英国で創設された、取締役会を含む企業の重要意思決定機関に占める女性割合(以下、「女性役員の割合」と呼ぶ)の向上を目的として世界的キャンペーンを行っている。14ヵ国で展開されており、展開国の数は増え続けているそうだ。

日本にも、「30%クラブジャパン」という組織が存在し、TOPIX100企業の女性役員割合を、2030年をめどに 30%にすることが目標。

30%クラブジャパンの2019年10月8日付プレスリリースによると、TOPIX企業の女性役員の割合(2019年)は次のとおり。

TOPIX100企業では、10.5%
TOPIX400企業では、7.2%

また、30% Clubのウェブサイト(英語)には、各国の女性役員の割合が掲載されている。日本の女性役員割合は、掲載されている他の先進国のそれと比べると、明らかに低い。

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「黄金の3割」理論

通称「202030(にいまる・にいまる・さんまる)」とも言われた、政府の「2020年までに指導的地位における女性の割合を30%にする」という従来の目標は、2003年に、内閣府の男女共同参画推進本部が決定したものだった。

しかし、(2)のデータによると、いまだに、管理職における女性割合は7.8%に留まっており、(3)のデータによると、その目標を達成できるのは、外資系企業でも17%、日系企業では8%に留まるということで、目標から大きくかけ離れた結果となってしまっている。17年間の結果がこれか、と思うと、大変残念である。

(1)の記事によると、政府は、次の目標として、2030年まで(正確には「2020年代の可能な限り早期」)に30%、2040年まで(「2030年代」)に50%(「男女の比率が同水準」)を目指しているらしい。そして、(4)の「30%クラブジャパン」の、TOPIX100企業の女性役員割合を2030年をめどに30%を目指す、という動きは、これと足並みが揃っている。

企業をはじめ、色々な組織で、このような数値目標や、クオータ制といったものを導入することについては、賛否両論あると思う。クオータ制のために、実力がまだ十分でない女性を、無理やり登用することにつながるという指摘はよく聞く。また、そんな状況の中で、新たに管理職に登用される女性は、周囲から、本当は実力がないのに「下駄をはかされた」という目で見られ、精神的に潰れてしまうのではないかという懸念も指摘される。

しかし、今までマイノリティーの立場にあった女性管理職経験者として言うと、男性ばかりの集団で、周りの男性優位の雰囲気に威圧されずに、自信を持って、恐れずに意見を言うのには、相当な気苦労を伴う。そんな中、女性管理職が増えると、不思議とリラックスでき、自然体で、気軽に意見を言いやすくなる。それにより、会議体で多様な意見が反映されて、より健全な意思決定ができるように思う。

そして、政府や30%クラブが目標としている「30%」という数値については、目指すべき妥当な数値だと思っている。こちらの記事(↓)にも言及されている、ハーバード大学のロザベス・モス・カンター教授の「黄金の3割」という理論(Critical Mass Theory)がある。構成人数の30%を少数派が占めると、意思決定に影響力を持つようになる、というものだ。

私は、この理論を信じている。理屈ではなく、この状況を実際に経験したからだ。

私は、ある勤務先で、複数の部門の管理職10人で構成する、とある会議体に所属していた。最初は、女性のメンバーは私1人だけだった。当時は、いわば、「ジェントルマンズ・クラブ」というような、とても堅苦しい雰囲気で、とても居心地が悪く、意見が言いづらかった。

あるとき、人事異動があり、メンバーのうち1名が男性から女性に交代した。女性が2名、女性割合が20%になった。すると、それを機に、会議体の雰囲気が少し明るくなったような気がした。そして、私の意見は、もう1名の女性メンバーの意見と一致することが多く、随分と発言がしやすくなったと感じた。

そして、さらに数か月して、さらに1名のメンバーが、男性から女性に代わった。女性が3名、女性割合が30%になった。こうなると、不思議と、もう、自分たちが、マイノリティーであるという感じはしなくなった。そして、発言を躊躇することもなく、ほぼ、自然体でふるまえるようになったと感じた。

こういう感覚を持ったのは、上記の「黄金の3割」の理論について知る前のことだった。このときの経験から、30%というのは、マイノリティーでも、ひるむことなく力を発揮できる、ひとつの段階のように感じていた。だから、後からこの理論を聞いたときに、心底、納得した。

これは、あくまで私の肌感覚による個人的な感想にすぎない。でも、もし、私のように感じる女性管理職がほかにもいれば、女性管理職割合が30%になることによる、組織におけるメリットはとても大きいのではないかと思うのだ。

ということで、社会の様々な組織で、是非、女性管理職割合30%という政府目標の早期実現に向けて、更なる取り組みを行ってほしいと思っている。

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