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【読書録】『人は話し方が9割』永松茂久

今日ご紹介するのは、永松茂久氏の、『人は話し方が9割』(すばる舎、2019年)。副題は、『1分で人を動かし、100%空かれる話し方のコツ』

最近、「〇〇が9割」というタイトルの書籍をよく目にするようになった。この種の類書は大変多いが、そのなかでも、この本はよく売れているらしい。

永松茂久氏は、数々の事業を限界する実業家で、「一流の人材を集めるのではなく、今いる人間を一流にする」というコンセプトの人材育成法に定評があるという。

本書は、タイトルからすると「話し方」についてのハウツー本に思える。しかし、実は、重要なのは、話し方の技術ではなくて、とても基本的な考え方、マインドにあるのだと、この本は教えてくれる。

次の2つが、私が特に重要だと思った考え方だ(以下は、要約)。

話す力は「スキル」より「メンタル」。
自己肯定感が上がると、話すのはラクになる。
「話すことが苦手」と思い込んでいる人の多くは、数少ない失敗や心無い誰かの指摘が原因となって、話すことに苦手意識を持ってしまっている。自分を楽に楽しく肯定できれば、確実に話し方はうまくなっていき、人間関係もずっとラクに、良好になっていく。
キーワードは「全肯定」。話している相手を決して否定しない、そしてあなた自身も否定させない。相手との間に、「否定のない空間」を作る。
人は、自分を肯定してくれる人を肯定するようにできている。あなたが空いてを否定しなければ、相手もあなたを否定しなくなっていく。「相互全肯定」の状態。その体験の中で、自然と自己肯定感が高まっていく。相手を肯定すると同時に、あなた自身が「否定のない空間」に身を置くことが大切。(p26-30)
コミュニケーションの達人だけが知っている三大原則
●人は誰もが自分のことが一番大切であり、自分に一番興味がある生き物である。
●本来、誰もが自分のことを認めてほしいし、自分のことをわかってほしいと熱望している。
●人は自分のことを分かってくれる人のことを好きになる。(p38-42)

否定のない空間を作り、自己肯定感を高めること。そして、自分の話す相手が、自分のことを分かってほしいと思っていることを理解すること。この2つの基本スタンスさえ分かっていれば、自分も自信をもってリラックスして話せるし、相手にも好感を持って話を聞いてもらえる、というわけだ。

こういった基本についてまずは腹落ちしたうえで、その後に続く、この本に散りばめられたいろいろな小さなコツやテクニックを読んでいくと、それらがなぜ有効であるのかが、点と点が線でつながり、とてもよく分かる。

たとえば、以下のようなものだ。

●聞き方が9割
●相手にしゃべらせる「拡張話法」
●苦手な人に話しかけるのはやめる
●相手の名前を繰り返し言う、「あなた」を多用する
●「説得」するより「勝手に楽しむ」
●相手との共通点は「食べ物」「出身地」「ペット」で探す
●最強のネタ帳「しくじりリスト」を作る
●余計なひとことを言わない
●正論は「ストレート」ではなく「変化球」で伝える
●悪口は、言わない、聞かない、関わらない
●難易度の高い人と話すのは、自分の武器を磨いてからでいい
●話し方の究極のスキル「幸せでありますように」

とても読みやすい本なので、読書が習慣になっている人は、おそらく1時間もかからずに読めてしまうだろう。読むだけで、とてもポジティブな気分になった。それだけで、もう、以前より上手に話すことができそうだ。

ただ、若干の疑問が残った。どれほどこちらが否定のない空間を作ろうとしても、相手のことを分かろうとしても、相手が同じようにしてくれなければ、依然として、良い会話のキャッチボールができないのではないか。この本が刺さるのは、ポジティブなマインドを既に持っている人か、持ちたいと思っている人に限られるのではないか。

残念ながら、私の周りには、とてもネガティブな話し方をする人や、ネガティブな内容の話ばかりする人が、身内も含め、何人もいる。そういう人にこそ、この本を手に取ってほしいなあ。でもそういう人には、あまり響かないのではないかなあ。

…おっと、そういうネガティブな思考こそが、NGなのかもしれない。危ない危ない、気を付けなければ! 

この本にあるとおり、苦手な人との対峙は極力避けてもいいんだし、相手がどうあれ、こちらが、この本に書いてあることを信じて、全肯定のスタンスを貫いてゆけばよい。そう思って、いろいろな人とコミュニケーションを取っていこうと思う。

ご参考になれば幸いです!


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