見出し画像

美醜の呪い

物心ついた頃から母親に「ブス」と呼ばれていた。
「サユリちゃんは目が小さくていつも怒ってるみたいで本当にブス。怒った顔はもっとブス。」母親はニコニコしながら毎日毎日言ってきた。耐えず泣き出すと母親はもっと嬉しそうな顔をして「泣き顔はもっとブスね。」と笑って言った。

保育園の送迎の時「〇〇ちゃんは目がおっきくて髪の毛もふわふわで色が白くてお姫様みたいでとってもかわいい。ママは目の大きな可愛い女の子の子供が欲しかったな。」ともよく言っていた。

生まれて直ぐに「ブス」のレッテルを貼られた私は長く自己否定に悩まされていた。もっと大きな目と高くて小さな鼻と、分厚い唇が欲しかった。いつ好きになったか分からないがずっと栗山千明になりたかった、どうして私はこんな見た目なんだと24くらいまで思い悩み続けた。もしも自分が自分の理想の見た目をしていれば片思いの人に愛して貰えるだろう、そんなことまで思っていた。でもこの思想は歳をとりまったくの勘違いなんだなと分かった。

整形のHPや動画は何度も何度も見たし、カウンセリングに行ったりした。(結局歯止めが効かなくなる恐ろしさと、理想通りにできるはずもないためやめてしまった。)余談では私の顔を可愛いまで持っていくには74万円ほどかかる。瞼の脂肪を取り除き二重整形と小鼻縮小鼻の先端に軟骨を移植する手術と頬へのボトックス。知り合い30万で済んだと言う話を聞き「やはりブスが美人になるには全然金額が違うのだな」と思った。
ちなみにダイエットでは劇薬のヨヒンビン、フォースコリーそしてカフェインと下剤の過剰接種と過度な食事制限と無酸素運動で58kgから46kgまで体重を落とした。(真似しないデネ)とにかく太った自分への憎しみと恥でなんとか薬による副作用、吐き気、不眠、腹痛、精神の切迫を毎日耐えた。

ダイエットはものすごく辛い。食べたいものなんて食べた方が幸せに決まってるし、副交感神経の乱れるカフェインだなんて疲れるので飲みたくない。夜はぐっすり眠りたい。腹痛で目を覚ましたくない。運動だって大嫌い。いつかは痩せたって友達と美味しくご飯を食べた幸福分太っていく、緩やかな自己否定を続けながら毎日毎日サプリメントを飲み筋トレをして、今日のコンディションはどうかと怯える。ニキビができると憎くて皮膚ごと剥ぎたくなる。ひどい時は怯えながら外に出ることが吐くほど怖いのが当たり前だった。

だがコンプレックスは寛解するだけで消えはしないし、解消したとてもまた新しいコンプレックスが生まれていく、整形してもしなくてもどちらにせよ老いればパーツは崩れていく。かわいいは定型分であり、祝福であり、呪いであると思う。

これからも私はきっと疲れては頑張りを諦めて身汚い化け物になるかもしれないという恐怖に怯え、食の幸福を貪るあまり太ってしまった自己嫌悪と、痩せるという自己否定を繰り返していくのだと思う。

次回 コンプレックスの寛解


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?