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地域おこし協力隊は本当に「やばい」のか?

昨年末に台湾から一時帰国のはずで日本へ帰国した私だが、先日の記事でお知らせしたように、この夏から「地域おこし協力隊」というお仕事に就かせていただいている。瀬戸内海に浮かぶ「オリーブの島」として有名な小豆島しょうどしまの半分のエリアとその周辺の島を含む小さな町、土庄町とのしょうちょうに住み始めて早くも3ヶ月*が経過した。

*着任自体は8月からだが、東京からの地方移住のため、島の方にご不安を感じさせぬよう、半月の自主隔離期間と、残り半分は準備や引っ越しなどを挟んだため、実際は7月から小豆島に住んでいる。

地域おこし協力隊の検索サジェストキーワードがすごい

「地域おこし協力隊」
私自身も応募の数日前に人づてに聞いてその名を初めて知ったので、私も例に漏れず、このキーワードをググったひとりである。

私が地域おこし協力隊に応募する前に検索した時のサジェストキーワードたちを見て、何となくみんなが気になっていることが見えてきた。

まずは気になるお金の話と、任期満了後、の検索。
地域おこし協力隊 給料
地域おこし協力隊 その後

同時に目についたのは、「ネガティブキーワード」のパンチの強さである。
地域おこし協力隊 やばい
地域おこし協力隊 ひどい
地域おこし協力隊 闇
地域おこし協力隊 嫌い


残念ながら、この世の興味は、ネガティブやセンセーショナル、派手な要素が含まれるものに行きがちである。いい噂より、悪い噂の方が広まるのも早ければ、情報を介していくうちに尾鰭がついていくことも。この仕事に就いていなかった段階でも「職業名+嫌い」という検索候補は見ていてちょっと悲しい。

それにしてもまあ、まだ何もわからないうちにこれだけ並んでいるのを見れば、なぜだかものすごくブラックな印象を受けてしまいそうになるから、人の心理って怖い。

実際に調べて様々な情報に触れていくと、ブログやSNSで個々に発信されている方がいるように、ポジティブに完結しなかった事例、一筋縄ではいかなかった事例、「思っていたのと違った」「何のための協力隊なんだ」と悔しさを伴う体験をされた方がいらしたのも事実ではあるようだ。

「地域おこし協力隊 やばい」は本当?

ネガティブキーワードのインパクトがなかなか強めだったが、しかし、本当にそんなにネガティブなのだろうか?理想と現実のギャップや、ご本人が想定し得なかった摩擦やしがらみが、そう思わせる原因になってはいないだろうか?

私が個人的に感じたのは「押さえておくべき情報を先に知っておいたら、こういうことも起こり得るからと工夫出来たり、衝突を避けて上手に勧められたり、驚いたり落胆したりすることも、もしかしたら少なかったんじゃないのかな。」という思いだった。

この記事では、これまで民間企業で対民間・対行政と仕事をしてきた、地域おこし協力隊着任から3ヶ月経過という超新参者の私が、町や県の協力隊の諸先輩方のご経験を伺ったり、役場や地域の方々と少しずつ関わらせていただく一方で、私が目にしたポジティブ、ネガティブ、双方の視点で書かれたネット上に溢れる情報とを照らし合わせて総合的に感じた、地域おこし協力隊に応募する前に押さえておくといいかもしれない3つのポイントを、私なりにまとめて残しておこうと思う。

なお、協力隊としてのキャリアを重ねるうちに、もしかしたら今後、また違った見え方と出会えるかもしれないので、そのときはいつか、この記事の続編としてシェアしたいと思う。

1. 地域おこし協力隊、仕事は様々

まず、「地域おこし協力隊って何ですか?」というところから。

「地域おこし協力隊」とは、人口減少や高齢化等の進行が著しい地方において、地域外の人材を積極的に受け入れ、地域協力活動を行ってもらい、その定住・定着を図ることで、意欲ある都市住民のニーズに応えながら、地域力の維持・強化を図っていくことを目的とした制度です。

引用: 地域おこし協力隊とは(ニッポン移住・交流ナビ JOIN)


「地域おこし協力隊」の募集内容は、活動の基盤となる地域によって異なる。募集ポジション、給与や待遇面、課せられるミッションも異なれば、応募してくる人たちの個々のスキルや経験も異なる。

私が知っている範囲にはなるが、具体例を挙げてみよう。

この記事を書いている2021年10月現在、私の所属している香川県土庄町とのしょうちょうには、私を含め7名の地域おこし協力隊が在籍している。現職のうち1/3はUターン組、その他は私と同じくIターン組である。

漁業振興の私は、農林水産課に所属。同課に所属している協力隊員は私を含めて5名。私以外の4名を募集した頃は、農業、林業、畜産業の担い手としての募集がメインだったらしく、彼らの活動の中心は、棚田、農園、ビニールハウス、森林、牛舎など、現場における実務だ。

例えば、私と同時期の募集で応募、私よりひと月早く着任した、地域おこし協力隊としては”ほぼ同期”の児戸ことくん。
彼は地元にUターンしたパターンで、小豆島オリーブ牛の担い手として、土庄町とのしょうちょう内の数軒の農家さんを回りながら牛を育て、多くの方に小豆島オリーブ牛を知ってもらうべく情報発信していくことがミッションである。私は漁業振興の担当であるが、漁船に乗って漁に行くわけではないので、このように同じ協力隊員とはいえ、仕事のスタイルはそれぞれで全く異なるのだ。


また、この町には農林水産課以外にも2名の協力隊員がいる。それぞれ別の課に所属しており、観光振興、移住支援をミッションとし、これまた私たちとは異なる分野の仕事をしている。今後、noteでも彼らの様子について発信したいと思っているが、前述のように同じ町に所属している協力隊員であっても、私たちの個々のミッションは異なる。取材のため、時々彼らの現場に赴き、そこで彼らの仕事や生の声を通じて初めて知ることも多く、こちらへ来てからは学びが多い日々だ。

私が応募したのは「漁業振興に関する活動」という募集枠。そこには「SNSなどを通じた情報発信」「漁業振興を目的としたイベント企画」など、ありがたいことに具体例も明記されており、私にとっては「自分がどんなことで役に立てそうか」のイメージがつきやすかった。募集内容を見ながらも、「SNSで発信するのであれば、漁業だけでなくもう少し幅を広げて発信した方がいろんな人に届けられそう」「これまで自身が経験してきた活動と小豆島(土庄町とのしょうちょう)に関する情報を、良きように上手に組み合わせて、幅広く発信した方が入口を広げられるかも」など、これまでの経験で培ってきた肌感覚で、この仕事と親和性が高そうなこと、それ以外にも町のために何かできそうなことも一緒に提案した。

そんな中で、町の担当者のみなさんや関係各所、地元の漁協さんや漁師さんご協力のもと、着任後ひと月半でイベント募集に漕ぎつけたのが、私にとってこの町で初めての大きなお仕事、前回の記事でご紹介したオンライン食育イベントである。


地域おこし協力隊の募集では、私のパターンのように、ある程度の大枠を決めた上で募集してくれるところもあれば、「フリーミッション」と呼ばれる「あなたがこの地域にできること、何でも自由に提案してください」という募集パターンもある。また、初めてその地域で協力隊を募集したり、過去に協力隊を採用している地域で前例のない新たなポジションを募集することもある。まだ始まって間もない制度であるので、「初めて」ゆえにスムーズに進まないことや色々な摩擦が生まれることも稀ではないと、色々な協力隊の方のお話やインタビュー、記事からもわかる。

幸い私の所属している地域では、過去に何代も諸先輩方が活動して来られ、役場の協力もあって、もちろん町全員にはまだまだ浸透していないが、町の人たちの中にも徐々に「地域おこし協力隊っていうのがあるらしい」ということはなんとなく伝わっているようだ。ゆえにゼロベースの説明から始めなくていいので、それだけでも活動がしやすい。ただ、地域によっては「地域おこし協力隊が何なのか?」「この人は何をしに来た人なのか?」がよく伝わっていないと「人手が足りないから、とりあえずこの人を呼ぼう現象」が起こりやすいらしい。これが摩擦のひとつになるケースとなった失敗談もちらほら見受けられる。

しかし、こうしたケースは、この仕事に限ってのことではない。
おそらくどんな仕事、どんな現場でも起こり得るケースだろう。こうした課題をクリアするべく、 時間をかけて地域おこし協力隊を地元で認知いただくくこと、各方面と連携しながら上手に進めること、こうしたことも大切なのだと改めて感じる。


2. 「地域との繋がりの入口」としての役割

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地方移住で最初のハードルとなるのは「地域のコミュニティにどうやって参加していくのか?」ということ。特に、私のような移住先にツテも知り合いも何もない人にとっては、移り住む地域でどのようにコミュニティに参加し、生活基盤を作っていくのかは非常に大きな課題であると思う。

まだまだ短期間ではあるものの、この町と香川県の地域おこし協力隊の諸先輩方、そして、実際に町役場の方に間に入っていただきながら、地域の方々と少しずつ触れ合っていく中で感じたのは、地域おこし協力隊の制度が移住して来た私たちが地域と繋がれる最初の入口として設けられていること。それを感じたのは、地域おこし協力隊としてご紹介いただけると、地域の方に安心して受け容れていただけたシーンが多かったからだ。

お遍路さん文化が根付いている四国、小豆島というこの場所が、外から来た人に対してオープンな土壌であったことも関係しているだろう。しかし、最初の入りとして町役場の方を通じて、行政と一緒になって仕事をする人です、とご紹介いただけたことで、その後のいろいろなコミュニケーションがスムーズに進んでいるのは確実である。行政の人から地域の方へご紹介いただける、そのちょっとしたサポートをいただけたことがとても有り難かった。

新しい地域に住む、そこで何かを始める、というのは、やはり最初が肝心である。協力隊の1〜3年の任期の中で、その土地と人を知り、生活に慣れていけるのは、外から来た人間にとっては非常にありがたい。移住者がその地域に入って行きやすいように、地域住民の方にも移住者を受け入れていただきやすいように、新しいアイデアを持った人を外部から受け入れることで地域の人口増加や活性化に繋げていけるように、というこの制度、マッチすれば、”三方良し”なとても良い試みだと私は思う。


3. 「主体的に動ける&バランスの良さ」が肝

自分で書いておきながら、私自身がそういう人材なのか?については一旦置いておきたい。

冒頭で触れた「サジェストキーワード」の中にあったキーワードに特に関係してくるのがここである。

地域おこし協力隊は、基本的に自分で主体的に動くことが求められる。

誰かにタスクを振られる、ということも、採用ポジションによってはもちろんあるかもしれない。しかし、この仕事の募集内容は「基本的には自分で動く」がメインとなることが多いように感じる。そのため、やることがない、わからない、放置されている、思っていたのと違う、と気を病んでしまうタイプの人には向いていなさそうだ。

これまで直接またはオンラインでお話を伺った方々や私自身もそうだが、協力隊員をされている方の中には、協力隊以外のお仕事をされている方も非常に多い。ご自身で別のビジネスをされながら並行して協力隊の活動をされている方、協力隊の活動と親和性の高いビジネスをされている方、協力隊卒業後にご自身で起業される方。こうしたパターンが非常に多いように見受けられることから、やはり「自分で動ける人」はこの仕事と相性が良さそうだ。

とはいえ、ただ「自分で動ける人」というだけではうまくいかなさそうなのも事実。自分の理想だけを追い求め、地域の人たちの思いをそっちのけで、「地域おこし」を超ゴリゴリに突き進めていくパターンも軋轢を生みやすそうだと、過去事例を見聞きする中で感じる。私はそうした場面に遭遇していないが「地域の人たちはそんなに変化を求めていなかったのに、何だかものすごいやる気溢れる人が来て、グイグイ進められちゃってどうしよう」というケースもあるらしい。

確かに私たちは「その地域力の維持・強化を図ることがミッションではあるのだが、地域の状況やその土地の人たちの思いを尊重しながら、意気込みすぎず、上手に進めていくことも大事。その地域にはそこで長年生活をされて来られた方にしかわからないことも多い。協力隊員として外部からやって来た私たちが、その気持ちを無視してグイグイ進めすぎては、本当の意味での地域おこしにはならないのかもしれない。いろいろとバランスを取りながら物事を進めていくことはとても大切だなと切に感じる。

私の所属する町は香川県にあるので、香川県内の地域おこし協力隊が属するコミュニティ「さぬきの輪」にも参加している。他の協力隊員の活動やその地域の事例、アイデア、抱える課題や悩みなどもシェアし合えるような、県の地域おこし協力隊全体のコミュニティがあることで、自分の属する自治体でも応用できる事例や解決方法に出会えるチャンスがあることもとてもありがたい。こうした場での情報交換の場を上手に活用することで、解決につながる課題もあるかもしれない。

最後に

今回まとめた内容は、あくまでも私の個人的な見解であり、特定の個人や団体を非難するようなものではない。また、私の見解が地域おこし協力隊の全てでも定義でもない。

色々な情報を目にして、事前に知っておけたら心の準備ができたこともあっただろうな、こんな風に回避できるな、と、ネガティブになりすぎずに受け止められることもあるのではないかと思ったことから、記事としてシェアさせていただいた。

私自身もこれからどんな経験をしていけるのか、未来はわからない。けれど、頼れるところは協力いただける周りを頼りながら、自分に出来ることでこの町のお役に立てたらと思う。

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最後まで読んでくださってありがとうございます。

YouTubeチャンネル「SAYULOGさゆログ」をメインに活動している、YouTuberのさゆです。

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