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《女の愛と生涯》訳詩

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シューマン作曲の歌曲集《女の愛と生涯》の訳詩です。敬愛するジェシー・ノーマンの歌唱で、各曲をご紹介させていただきました。ぜひこちらも併せてお楽しみください。
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《女の愛と生涯》訳詩──8.いま、あなたはわたしに初めての悲しみを与えた

《女の愛と生涯》訳詩──8.いま、あなたはわたしに初めての悲しみを与えた

いま、あなたはわたしに初めての悲しみを与えた、衝撃を与えた
あなたは眠っている、冷酷で無慈悲なあなた、死の眠り

孤独な女はひとり眺めているわ、空虚な世界を
わたしは愛し、生きた、もう生きていられない

わたしは内なる世界に戻り、カーテンを引きましょう
そこではあなたと失われた幸せを取り戻します、あなたはわたしの世界なの



6月23日に演奏する、
シューマン作曲の歌曲集《女の愛と生涯》。

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《女の愛と生涯》訳詩──7.わたしの心に、わたしの胸に

《女の愛と生涯》訳詩──7.わたしの心に、わたしの胸に

わたしの心に、わたしの胸に
おまえはわたしの幸せ、わたしの喜び!

幸せは愛、愛は幸せ
わたしはそう言って取り消さないの

わたしを幸せだと思うわ
わたしはとても幸せよ

その人だけが乳を飲ませ、愛し
子供に、栄養を与えるの

ただ母親だけが知るの
愛することは何か、幸せは何か

ああ、男の人を気の毒に思うわ
母親の幸せを感じられないなんて

愛する子、愛する天使、おまえ、
おまえはわたしを見つめ

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《女の愛と生涯》訳詩──6.愛しいひと、あなたは見つめる

《女の愛と生涯》訳詩──6.愛しいひと、あなたは見つめる

愛しいひと、あなたは見つめる
わたしを不思議そうに
それがわからないのね
なぜわたしが泣いているか

湿った真珠の
不慣れな飾りを
喜ばしく明るく震えさせて
その眼差しの中に

なぜこんなにわたしの胸は不安なのかしら
なぜこんなに喜ばしいのかしら!
ただ言葉を知っていたらいいのに
どう言い表すべきか

来て、そしてあなたの顔をうずめてちょうだい
ここに、わたしの胸に
あなたの耳に囁いてあげたい

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《女の愛と生涯》訳詩──5.わたしを手伝って、妹たちよ

《女の愛と生涯》訳詩──5.わたしを手伝って、妹たちよ

わたしを手伝って、妹たちよ
親切にわたしを飾るのを
今日の幸せなわたしに仕えてちょうだい

活き活きと巻き付けてね
わたしの額に
まず花盛りのミルテを

わたしが満足していたとき
喜ぶ心を
愛しい人の腕のなかで

彼は呼んでいた
心の中の憧れを
せわしなく今日のことを

わたしを手伝って、妹たちよ
追い払うのを手伝って
ひとつの愚かな不安を

わたしが澄んだ眼差しをもって
彼を迎えるために
彼、喜

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《女の愛と生涯》訳詩──4. あなた、わたしの指の指輪よ

《女の愛と生涯》訳詩──4. あなた、わたしの指の指輪よ

あなた、わたしの指の指輪よ
わたしの黄金の指輪ちゃん
わたしはあなたに忠実に唇をつけるわ
あなたに忠実にわたしの心をつけるわ

わたしは夢を見終わったの
子供時代の穏やかで美しい夢を
わたしはひとりきりの自分を見たの、見捨てられた
退屈で果てのない場所で

わたしの指の指輪よ
あなたはわたしに最初に教えてくれたの
わたしの眼差しから導き出したの
終わりのない人生の深い価値を

わたしは彼に仕え、彼

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《女の愛と生涯》訳詩──3.わたしにはわからない

《女の愛と生涯》訳詩──3.わたしにはわからない

わたしにはわからない、信じられない
夢が私を魅了していることが
どうして彼はあらゆる人の中で
わたしに腕を差し出し、幸福にしてくれたの?

わたしは起きたの、彼は言ったの
「ぼくは永遠に君のものです」
わたしは夢を見ているようでした
それは決してありえないことだから

ああ、夢の中でわたしを死なせてちょうだい
彼の胸で揺られ
とても幸せな死をわたしは感じるわ
果てのない喜びの涙の中で



6月

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《女の愛と生涯》訳詩──2.彼は、すべての中でもっとも素晴らしい方

《女の愛と生涯》訳詩──2.彼は、すべての中でもっとも素晴らしい方

彼は、すべての中でもっとも素晴らしい方
なんて穏やかで、なんて良い方なの!
優しい唇、澄んだ瞳、
明るい心に揺るぎない勇気

青い深淵の中のあの場所で
明るく輝くあの星
彼もまたわたしの天に
明るく輝き、気高く遠く

歩いて、あなたの道を歩いてちょうだい
ただあなたの光を見つめているから
ただ謙虚にそれを見つめているから
幸せと悲しみを持ちながら

わたしの静かな祈りを聞かないでちょうだい
あなた

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《女の愛と生涯》訳詩──1.あの方にお会いしてから

《女の愛と生涯》訳詩──1.あの方にお会いしてから

あの方にお会いしてから
目が見えなくなったみたい
どこに眼差しを向けても
あの方だけが見えるの

まるで覚めた夢を見ているように
あの方のお姿が浮かんでくるの
深い闇から浮かび上がるのよ
明るく高く

その他のものは光も色もなく
わたしの周りのすべてのものは
妹たちとの遊びも
もうしたいとは思わないの

それよりも泣いていたい
ちいさな部屋の中で静かに
あの方にお会いしてから
目が見えなくなったみ

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