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《女の愛と生涯》訳詩──2.彼は、すべての中でもっとも素晴らしい方

彼は、すべての中でもっとも素晴らしい方
なんて穏やかで、なんて良い方なの!
優しい唇、澄んだ瞳、
明るい心に揺るぎない勇気

青い深淵の中のあの場所で
明るく輝くあの星
彼もまたわたしの天に
明るく輝き、気高く遠く

歩いて、あなたの道を歩いてちょうだい
ただあなたの光を見つめているから
ただ謙虚にそれを見つめているから
幸せと悲しみを持ちながら

わたしの静かな祈りを聞かないでちょうだい
あなたの幸せだけに捧げたのだから
いやしい者であるわたしなど知らなくていいの
栄光の気高い星は




6月23日に演奏する、
シューマン作曲の歌曲集《女の愛と生涯》。

ひとりの女性が愛する男性と出会い、
彼の子供を産み、彼を見送るまでの生涯を描いた作品です。

一日一篇ずつ、
シャミッソーの詩を訳していきます。
(平日のみ)

第二曲「彼は、すべての中でもっとも素晴らしい方」では、
主人公の女性の恋心はより深まっています。

空の高い星に彼を喩え、
理想の存在として彼を讃えています。

一方で、自分の秘めた思いは知られなくていいと、
心を静かに決めます。

音楽は第一曲とはうってかわって、
少女の胸のときめきをあらわすかのような、
ピアノによる八分音符の刻みと、
伸びやかな旋律によって彩られます。

初めての恋を自覚した少女。

彼を思うだけで得られる心の高揚感と、
静かに滲む諦念や慎みが入り混じった一曲です。

このように、
《女の愛と生涯》第一曲・第二曲では、
少女の片思いが描かれています。

少女の恋はどうなるのでしょうか……。

それは明日のお楽しみ。



演奏は、敬愛するジェシー・ノーマン。

豊かな響きを持った声と、
スケールの大きな表現がとても魅力的です。


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