三浦コウさん ピアノリサイタル at 東京オペラシティ
2023年10月8日(日) 14:00~
場所は「東京オペラシティ リサイタルホール」
■東京オペラシティ リサイタルホール
言わずと知れた、初台のオペラシティ。
過去に何度も足を運んでいるが、新宿駅の乗り換えに毎回失敗するため、JR代々木駅からタクシーで向かった。人生、諦めも肝心だと思う今日この頃。不得手なことは別の手法に頼れば良い♪
リサイタルホールは初訪問。
お友達とお茶をしながらお喋りに興じていて、13:30の開場時間を少し過ぎて入場したら、もはや良席はなく、随分後方になってしまった。
コウさんもここまできたか…と、高い天井を仰ぎ見ながら満ち満ちた気持ちになった。
ピアノはコンサートホールのフルコン。
リサイタルホールに…というところで、鳴りすぎるんじゃない?跳ね返りはどうだい?なんて、要らぬ心配をしていたが、結果やっぱり要らぬ心配だった。
逆に、中音域の音が後方に抜けて来ない時が何度かあった。フロアがフラットだからだろうか。
■プログラム&レビュー
オリジナルあり、クラシックあり、カバーありの豪華プログラム。
オリジナルを軸に、自由自在にプログラムが組めるピアニストさん。だって何でも弾けるから。他に類を見ない。本当に強い。
今、上のプログラムを入力していて改めて思った。豪華すぎる。
ピアノという楽器を、様々なジャンルを、特別な演出を、二時間足らずでこんなに堪能して良いのか?チケット代、安すぎないか?…あぁまた要らぬ心配をしてしまう。
さぁ、レビューです。今回も印象的だった曲や場面をいくつか書いてみます。
Dirty
今回、コウさんのリサイタルは初めて!というお友達ともご一緒した。休憩時間にお話しする中で、彼女が真っ先に挙げたのが、このDirtyで「美しい!ちっともDirtyじゃない!」と。「たしかに〜!」と笑ってしまった。
憎しみと愛しさが紙一重であるように、汚さと美しさもまた然りなのかも知れない。
ノクターン第20番
コウさんのノクターンを生で聴いたのは今回が初めてだったが、とても繊細で美しかった。
コウさんの演奏スタイルには、ポロネーズやマズルカがしっくりハマりそう♪なんて、ずっと思ってきたが、いやこれ、ノクターンいいぞ。17番とか8番とか絶対いいぞ。…と、リサイタルの帰り道に一人で妄想しまくっていた。
優しさ
イントロー!!2段階転調?
しかも始まりは何だ?Es-dur(変ホ長調)ではなかったですか?私はこの調が好きすぎて、耳が何でもこの調にしてしまう癖があるので、全然違うかも知れないけれど💧
今回のアレンジは、オペラシティ特別ver.!といった感じで、とても華やかな優しさに仕上がっていた。もう一人のお友達も「音数が多くて綺麗だったね〜!」と目を丸くしていた。
アウトロの辺りで、ん!?このメロディーどこかで…という、引用の瞬間があった気が…あれは幻だったのだろうか。
song
前回お邪魔した名古屋公演同様、観客が歌で参加!
「は〜れの日に〜歌を歌う〜♪」
張り切って歌い出したが、ちょっと待て。名古屋公演の時よりも声が聴こえて来ない。こんなにたくさんの人がいるのに、なんで?
歌いながら周りを見渡すと、今までどこかでお目にかかったことのある「いつメン」(いつものメンバー)以外の顔ぶれが多いことに気付いた。一人で来ている男性の姿もちらほら。
フライヤーを見て、今回初めて来ました、というような方々が多かったのではないだろうか。それはとても喜ばしいことで、この方々がコウさんの魅力を知って下されば、コウさんの活動の裾野がまた広がる。
最後まで頑張ってコウさん!祈るような気持ちになった。
そういえば最近、家など静かな環境でこの曲を聴いていると、頭の中で勝手に他の楽器のパートが鳴る。アンサンブル仲間と演ってみよう。きっとすごく素敵になる♪
未発表曲
悩んだが、これをレポするのはやめておく。
この曲を作るに至った経緯、思いなど、いつかご本人から公に発信されるのを待つのが最善と思うので。
寝る💤時間
「眠っちゃうような時間があってもいいかなと思って」きたきた、今回は何の曲で寝かされるのだろう。
流れてきたのはジブリ。やられた。
暗闇と音楽に心がどんどん没入していき、終わりのほうは半分ふわふわと意識が飛んでいた。
そう、コウさんはジブリやディズニーで人を寝かせるスペシャリストだった。油断大敵。
ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」
ベートーヴェンのピアノ・ソナタの中で、さほど難易度は高くない、とされているこの「悲愴」。
たしかに、「弾く」だけであれば、中級者でも手が届く。しかし、
全楽章を弾ききった瞬間に、余韻として悲愴感が残るか否か。
これが大きな難題。
第1楽章と第3楽章は決してモタモタ弾いてはならず、時に音が流れ落ちるような疾走感が求められる。
かといってテンポに注力しすぎると、表現が不十分になる部分が出てくる。
第1楽章の手の交差とプラルトリラーが現れる部分はまさにそれで、テンポキープしながら男女のかけ合いのような表現を生むのは至難の業だ。私はここを、当時の先生からビシバシに指導された。どう弾いても否定された、悲しい思い出。まさに悲愴。
コウさんはというと、ギリッギリのところを攻めている感じだった。あのテンポであの表現。さすがだ。第2楽章のメロディーラインも、とても美しく浮かび上がっていた。(地味に難しい!)
想い
毎回書いている気がするが、私はこの曲が世界で一番好きだ。心の底から好きなものに理由なんてなく、何回聴いたって、いつか婆さんになったって、ずっとずっと好きなのだ。
この曲がプログラムの最後に置かれたことが、とてもとても嬉しかった。
初めは原曲のまま流れ、後半にアレンジが加わった。ほらね、コード弾きだけでこんなに美しいの。皆さんしっかり聴いてね!みたいな、「想い」のマネージャーのような気持ちになった。
めぐり逢い [アンコール]
アンドレ・ギャニオンのめぐり逢い。
お好きな方は多いはず。
私も好きで、以前弾いたことがある。
楽譜の音を「全て鳴らす」ことに気を取られ、残念な演奏に仕上がった苦い記憶…。
コウさんの演奏はおそらく耳コピで、音数は決して多くない。なのに美しい。
必要不可欠な音だけを抽出して、音の質そのものにもっとこだわって、もう一度弾いてみたくなった。
■まとめ
先ほどもチラッと書いたが、ピアノという楽器を、様々なジャンルを、特別な演出を、二時間足らずでこんなにも堪能できる…こんなピアニストさんいます?
コウさんの強みが全面に出た今回のリサイタル。今後のご活躍がますます楽しみになった。
それがツアーなのか、ツアーにこだわらない演奏活動なのか、はたまた3rdアルバム制作なのかはわからないが、コウさんの心の赴くままに進んでほしい。
東京オペラシティという、日本の音楽の拠点とも言える場所での公演開催、本当におめでとうございました。
というわけで…個人的主観満載の記事、最後までお読み頂きありがとうございました。