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【20冊分】ぶっくめも 2023年10月-12月

10月、11月は考え事に耽ったり、身の回りの整理に追われてあまり多くの本を楽しめなかったのだが、12月は師走を体現したかのように駆け込みで様々な本を読んだ。

そんな3ヶ月だった。

今回も、素敵な本たちとの出会いを感想と共に書き残しておこうと思う。
(★は個人的なお気に入りの目安ですので、お気になさらず)

総理の夫 First Gentleman 新版:原田 マハ

★★★★★
日本初の女性総理の夫視点で、総理が誕生するまでの経緯や総理になってからの日々が面白おかしく、時にシリアスに日記形式で語られている小説。総理の夫という半ば公人でありながら、とてもチャーミングな性格で愛妻家であるため、そのアンバランさがコミカルで、遠い存在の政治に親しみを感じながら読むことができた。少し畏まった言葉や上品な言葉を使う場面が多く登場したため、単語の勉強にもなった。

PK:伊坂幸太郎

★★★☆☆
短編小説だけど、3つの話の関係性に伏線が張られていた印象。理解に時間がかかる本だった。おそらく、「密使」という話を起点に、「PK」と「超人」の2つの次元が違う世界が分岐されていた、という構成だったのだと思う。最後まで読むと伏線回収の伊坂幸太郎みを感じられる。が、話を単体で読んでしまうと途轍もなく難しい…

イシューからはじめよ

★★★☆☆
久しぶりに読んだ。やっと内容を理解できるようになった。

終末のフール:伊坂幸太郎

★★★☆☆
隕石落下のニュースから5年が経過し、あと3年で落下する状況のなか、生き残っている人々の心情を通して「どんなに悲惨だったり希望がない状況だったりしても、しっかりと強く生き続けなければならない」という人生のルールを感じさせられる短編小説。
特に、鋼鉄のウールで出てきたボクサーの苗場が言っていた、以下の2つの表現が心に刺さる。

「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」
「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」

脳の闇

★★★☆☆
日々些細なことに満足して幸せに生きていけることの大切さは、むしろ不快な記憶を忘れ、不安な未来を予測してしまわない鈍さがあってこそ感じられるのではないか、と思ったり。

ジャイロスコープ:伊坂幸太郎

★★☆☆☆
伊坂幸太郎が描く日常とは少し違う、非日常やSFチックな作品もいくつかある短編小説。その中の「彗星さんたち」に出てくる、以下のフレーズにグッときた。

見てる人は見ている。いったい誰が?そう聞き返したい時が、わたしにもあった。
誰が見てくれているの、と毒づきたくなることが。
もしかすると、鶴田さん自身もそう感じたことはあるのではないだろうか。
「スプーンひとさじの砂糖があれば、仕事も楽しい」とメリー・ポピンズの歌を口ずさんでいた鶴田さんは、もしかすると仕事だけではなく自分の人生のこともそうやって好きになろうとしていたのかもしれない。

純情ヨーロッパ 呑んで、祈って、脱いでみて 西欧&北欧編:たかのてるこ

人情ヨーロッパ 人生、ゆるして、ゆるされて 中欧&東欧編:たかのてるこ

★★★★☆
たった一度きりの人生。
行きたいところを旅して、住みたい国に住んで、したいことをして、生きたいように生きてみればいいのだという、シンプルで大切なことを教えてくれた。

アイネクライネナハトムジーク:伊坂幸太郎

★★★★☆
作風はマイクロスパイ・アンサンブルに似てる。心がほくほくする系。
伊坂幸太郎には珍しく、何かの事件は起きず、誰かの日常を少し切り取るような、私たちの日常の延長線にある感じのお話だった。昔は派手な伏線回収に伊坂幸太郎らしさを感じて興奮していたが、今は彼が作る、私たちの日常に少し希望を散りばめた世界観が好きだと、改めて思った。

「あの時、あそこにいたのが彼女で本当に良かった。って、幸運に感謝できるのが、一番幸せなんだよ。」

舟を編む:三浦 しをん

★★★★★
「言葉を大事にできる人になりたい」といつからか強く思っているが、それは言葉の使い方を間違えだれかを傷つけたり、感じていることをぴったりの言葉で表現するできないもどかしさを感じていたからだという、自身の想いを強く思い出した一冊だった。岸辺がまじめをみて、思ったこの感情にじんときた。

言葉ではなかなか伝わらない、通じ合えないことに焦れて、だけど結局は、心を映した不器用な言葉を、勇気を持って差し出すほかない。相手が受け止めてくれることを願って。
言葉にまつわる不安と希望を実感するからこそ、言葉がいっぱい詰まった辞書を、まじめさんは熱心に作ろうとしているんじゃないだろうか。
たくさんの言葉を、可能な限り正確に集めることは、歪みの少ない鏡を手に入れることだ。
歪みが少なければ少ないほど、そこに心を映して相手に差し出したとき、気持ちや考えが深くはっきり伝わる、一緒に鏡を覗き込んで、笑ったり泣いたり怒ったりできる。

入社1年目の教科書

★★☆☆☆
日々の行動を振り返るために読んでみた。時折自分の状態を確認するためにさっと読むのもいいな。

夏を喪くす:原田 マハ

★★★★★
短編?中編小説ながら、1つ1つが長編作品のように重い。一番好きだった作品は【天国の蝿】。
心の状態を正確に言葉に起こすよりも、その人が置かれている状況を淡々と説明する方が、個々の解釈によって、実体験や他の作品と結び付け、リアルで生々しい感情を感じられるのではないか。そう強く感じた作品だった。
とてつもなく勝手に、原田マハさんの作風はどちらかというと爽やかで軽やかだと思っていたが、「夏を喪くす」は1人では到底耐えきれない重さの鉛を置かれたような、容易に絶望感と人間の業の深さを感じさせる作品だったので、作風の豊かさに驚いた。【総理の夫】と同じ作者だとは、到底思えない。また、原田マハさんは情景や風景、それが持ち合わせる温度感を言葉にすることにとても長けている方だと思った。別の作品も読んでみたい。

変な絵:雨穴

★★★☆☆
4つの作品からなる、中編小説だと思っていたが、最後まで読み切った時に1つの話だったことに驚いた。伏線回収が綺麗だった。
「自分より弱いものを守るために尖っている」は考えさせられる。そんな気がする。

ワンルームから宇宙をのぞく:久保 勇貴

★★★★★
物理法則と日常の悩みをつなぎ合わせて、自分なりに解をつくる作者の考え方と、前向きさと、不器用さに惹かれるエッセイ。JAXAにいる作者は、一般的にはエリートで悩みがないように勝手に想像してしまうが、小さな悩みを抱えてぐるぐると考える姿には親近感が湧く。頭が良い人も一人の人間なんだと思えてなぜだかホッとする。日々を愛でることで少し前向きになることを教わった。また読みたい。

問題解決 あらゆる課題を突破する ビジネスパーソン必須の仕事術

★★★★★
この本はバイブル確定。問題解決の流れの中で知りたいことが詳しく書いてあるし、業務上で前提知識が色々入った状態でこそ参考になる。再読必須。

あのこは貴族:山内 マリコ

★★★★☆
女性の結婚・幸せを起点に2人の女性から東京の格差を描いた作品。
「日本には目に見えた格差ってそんなに感じられないよね、と思っているかも知れませんが、東京には圧倒的に格差がありますよ、上流階級の人たちの日常っていうのはね…」と本に語られながら、別世界を垣間見ているよう。いつまでも隣の芝は青いらしい。

残り全部バケーション:伊坂幸太郎

★★★☆☆
当たり屋として生計を立てる岡田と、そのコンビが悪事を働きながらも人情を発揮して誰かを救ったり…と陽気なギャングシリーズを彷彿とさせる短編小説。最も記憶にある「タキオン作戦」は息子に躾という体裁で、暴力を振るう父親に対して、「暴力をやめな」というのではなく、20年後の自分が過去にタイムスリップし、自分が大きくなった息子に暴力を振るわれ、悲惨な人生になるからやめとけと、ユーモアたっぷりに伝える話。「重力ピエロ」の台詞、「本当に深刻なものは、陽気に伝えるべきなんだよ」を思い出させる。

逆ソクラテス:伊坂幸太郎

★★★☆☆
伊坂幸太郎の作品は大体高校生〜社会人が主人公の中、この作品は現在と小学生時代の視点の切り替えがあり、特に小学生の視点で語られるのが新鮮だった。話の中ではアンスポーツマンファウルが一番好き。話の構成に感動。

パリでメシを食う。:川内 有緒

★★★★☆
パリで生計を立てている10人の日本人の半生が、作者によって綴られてるエッセイ本で、彫金作家の友人がおすすめしてくれた。日本にいると必然と感じられるレールのようなものをひょいと外れて、半ば偶然に身を委ねて我が道を切り開いていく10人の姿は希望に満ちていた。今度、友人にどの話やフレーズが刺さったのか聞いてみたい。

i(アイ):西 加奈子

★★★☆☆
シリアで生まれ、アメリカ人の父と日本人の母に養子として引き取られた主人公が、自分の存在意義を世の中の情勢や友人、恋人と関わりながら見つけていく話。自分自身を愛し、この世に存在していることを認めること。そして、自分自身を愛してくれる人や愛したい人/ものを愛することが、自分というアイデンディティに繋がっていくのではないかと感じた作品だった。
とはいえ、正直1回読んだだけでは、作品の意図や表現したいものを受け取ることが難しかった。

📕 📗 📙 📘

2023年は「1ヶ月ほど部屋にこもってひたすら本を読みたい!」という欲望をどうにか日常で満たそうと、伊坂幸太郎の長編・短編作品を読み切るチャレンジをしてみた訳なのだが、全て読んでみて感じたことは以下の4つ。

📕 「これがやりたい!」という思いは、一度に全て満たすことができなくとも、毎日コツコツとやりたいことをしていくことで、時間はかかるかもしれないがその思いを満たすことができること

📗 心にいくつか好きな作品のフレーズがあるだけで、心が軽くなったり救われる瞬間があるということ

📙 興味があることに常にアンテナを張っていると、自ずと情報が集まってくるということ(例えば、伊坂幸太郎以外にも、面白い作者さんいないかな?面白い本ないかな?と常にアンテナを立てていると、友人との会話でも、youtubeを見ていても、気づくと本に関する情報を集めている自分がいた)

📘 短編小説よりも、長編小説の方が好きだということ(世界観に浸れる長さは長い方が好きらしい。壮大な世界観も好き。)

伊坂幸太郎の長編小説の特徴をまとめてみたり、

細々と読んだ本に一言感想を書く(ぶっくめもをつける)日々を送った。

2022年よりも、エッセイを読むようになり面白さが分かり始めたり、初めて読む作家が増えたりと、読む本・作者のジャンルが増えて面白いと思う幅が広がった1年だった。

来年は、お勧めされた本は読んでみることで、読む本の幅を広げつつ、引き続き誰か1人作者を決めて読破することで、自分にとっての次なる伊坂幸太郎を見つける一年にできたらいいなと思う。

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