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ぶっくめも 2023年7-9月

今日も今日とて読書、
という日々をこの夏は送った。

なんだかこの夏は、日常に脳が占拠されていて、独り色々と考えて答えを出したり、けじめをつけることが幾分か多かったように思えるので、
その分色々と作品から感じたことが消化不良になっているなあと感じた。
この秋以降に本から得た考えたいことはじっくりと瓶に寝かせながら、自分なりの答えを探していこうと思う。

今回も、素敵な本たちとの出会いを感想と共に書き残しておこうと思う。
(★は個人的なお気に入りの目安ですので、お気になさらず)



キャプテンサンダーボルト 上/下:伊坂幸太郎

★★★★☆
ゴールデンスランバーのように、絶対絶命なときに一筋の光が見えて主人公たちが救われるようなストーリーだった。阿部 和重との共著だったからなのか、戦時中・戦後といった時代背景と絡められたストーリーになっていて、伊坂幸太郎の他の作品よりも世界観に現実味があったのが印象的。


正欲:朝井リョウ

★★★☆☆
性に対して多様な在り方が登場し、お互いの在り方を尊重し合おうとする現在。だが、その多様な在り方も一定の”ライン”があり、そのラインを超えた在り方は異物として排除されているという現実を初めてこの小説で目の当たりにした。


少女は卒業しない:朝井リョウ

★★★☆☆
学生時代の甘酸っぱい気持ちや、卒業前の物悲しさを爽やかにを思い起こさせてくれるような小説だった。


さいはての彼女:原田マハ

★★★★☆
旅先で自分の五感が研ぎ澄まされていく感覚を追体験できる、爽やかで暖かくて気持ちがいい小説だった。日常に疲れた主人公たちが、非日常に飛び込んでそれぞれが負った心の傷や疲れを癒していく様子が描かれている。必要以上に背伸びをせずに、等身大の自分でのびのびいられることの尊さを感じた。


コンビニ人間:村田 沙耶香

★★★★★
今まで読んできた小説は、「多様性が叫ばれる世の中で、普通すぎるが故に生きにくい人」がスポットライトを浴びていたが、この小説はそれとは真逆で、「周りと変わりすぎているがあまり、世の中で溶け込んで普通に生きていくためにアイデンティティを探す人」にスポットライトが当たっていた。
多様性が叫ばれていても、私たちの身の回りでは「結婚」「出産」「彼氏」などと、異性と共になり、人生を歩んでいくことが当たり前であり、それから外れると周りの人(←誰)から不審がられる。多様性を尊重して生きていくということは、必要以上に周りのことを気にせずに生きていくということなのかと思いながらも、そうではない気もする。多様性ってよくわからないな、難しいなと思う。


シーソーモンスター:伊坂幸太郎

★★★☆☆
たとえどちらに非がなくとも、馬が合わず対立するという不条理な事もある。無理に仲良くなるようなことはせず、適度な距離を取るだけでよい。のか?


ままならないから私とあなた:朝井リョウ

★★★☆☆
自分から見えている正しさが本当に正しいのか。
正しさとは一体何なのだろうか。


陽気なギャングは三つ数えろ:伊坂幸太郎

★★★☆☆
陽気なギャングシリーズ第3弾で、第2弾から9年後を描いている。ギャングたちと久しぶりに再会し、懐かしい気持ちで彼らを見守っていた。シリーズものって登場人物との再会が、まるで友人と再会したかのような懐かしさを感じられていいんだよなぁ。


死神の精度:伊坂幸太郎

★★★☆☆
短編小説の中でも死神対老女の主人公である老女は、恋愛で死神、に登場した荻原と恋に落ちるはずの古川晴美だった点に、伊坂幸太郎らしい伏線回収を感じた。初めて死神は晴れを見られたのも印象的であり、すっきりとした終わり方だった。


ガソリン生活:伊坂幸太郎

★☆☆☆☆
車視点で書かれている、一風変わった本。
ダイアナ妃の話と作中の話がリンクしていた。あまりハマらなかった。


マイクロスパイ・アンサンブル:伊坂幸太郎

★★☆☆☆
誰かの少しほっこりと、少しハラハラとした日常が描かれていた。どこに行こうが、どこで暮らそうが、そこが自分にとっては等身大の世界で、どこにいようが悩みや苦労があるのだとわかった。「プライド?そんなの、ただの言葉だろ」byエージェント・ハルト


ノルウェイの森 上/下:村上春樹

★★★★☆
読んだ後、心にずっしりきた。
冒頭から結末が分かっていたような気がしたため、読み進める中でじわじわじわと「死」というものに心も体も蝕まれる感覚になり、なんだかやるせなかった。


チルドレン:伊坂幸太郎

★★★★☆
「パンクロックってのは、立ち向かうってことなんだよ。」
「そもそも大人が恰好良ければ子供はぐれねえんだよ」
陣内節が炸裂。自分が信じたものを突き通す姿勢はかっこいいな。


フィッシュストーリー:伊坂幸太郎

★★★☆☆
短編集だったが、ポテチが1番好きな作品だった。
野球選手の尾崎と生まれた病院で取り違えられた空き巣の今村が、母に尾崎(取り違えられなかったら息子)のホームラン姿を見せて涙を流すシーンは、とても心にくる。「コンソメ食べたい気分だったけど、塩味もいいもんだね。間違ってもらって、かえって良かったかも」


AX アックス:伊坂幸太郎

★★★★★
短編小説だったが、EXITとFINEは繋がっていたし、題名の謎も最後にわかったしと、伏線回収が清々しい作品だった。兜という殺し屋は敏腕殺し屋でありながら、恐妻家であり、人を殺すことで家族に顔向けできないとオドオドする様子がとても人間らしく、でもって行動する時にはしっかり行動するという力強さも隠し持っており、人を惹きつけるには十分な魅力を持った人物だった。殺し屋シリーズの中では最も家族の話題を中心にした作品で、重力ピエロみを感じる。殺し屋の奈野村がまたいい味出してた。


どうしても生きてる:朝井リョウ

★★★☆☆
「そんなの痛いに決まってる」は、「大丈夫です」とよく使ってしまう私たちを揶揄するかのような作品で、胸にくるものがあった。
籤の中で出てきた、「悪いおみくじでも、あそこに結んじゃえば大丈夫だから。悪いくじを引いたとて、そのくじを手放す過程が人間の礎となるのかもしれない。」という台詞が好き。


魔王:伊坂幸太郎

★★★☆☆
モダンタイムスの50年前の話らしい。
モダンタイムスに出てきた安藤商会を作った潤也や詩織、東シナ問題を潤也と解決した犬養が魔王では安藤目線で、呼吸では詩織目線で語られていて、知らない一面が見れて嬉しかった。ファシズムの日本社会を描いていて、対峙する敵が抽象的な作品だった。「結局魔王とは誰だったのか」という疑問に対する答えは、読み手によって犬養にも、安藤にも、潤也にも、犬養を取り巻く大衆や大衆が作り出す有無も言わせない雰囲気にも取られられるなあと。


ちょっとそこまで旅してみよう:益田ミリ

★★★★☆
奄美大島の旅から帰路に着く間もなく、どうにもこうにも旅をして色んな景色をこの目で確かめたい欲が収まらず、とはいえ日常生活もあるので、なんとか気を紛らわせようと、近くのブックオフでこの本を手に取った。
旅先での人との会話や、食べ物、景色が、自分は行った事のないはずなのに想像できて、旅先での心の機微も思い出させてくれて、気を紛らわせるはずなのにより旅に出たくなった。


📕 📗 📙 📘

最近、読書好きであり映画好きの友人が、
「台詞を自分の中に潜らせて、物語を自分の原体験とともに味わうのが読書の良さだよね」
ということ言っていて、なんだか自分が読書に求めることや没入感を感じられる理由が的確に言葉になっているようで、とても腑に落ちたので、ここにメモしておく。

まだまだ読みたい本が山のようにあるので、
秋という季節にかこつけて読書を楽しもうと思う。

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