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餃子の件

あなたに言いたいことがあるのよ。

今、ふたつ、いっぺんに食べたよね。
信じられへん。衝撃映像よ。
知ってる?全部で何個包んだか。
手間ひまと時間と愛が倍速でブラックホールへ
消えゆく切なさよ。
いいのよ。わかってる。美味しいもの。
美味しくたいらげてくだされば本望。

一人で上手く60個包むとさ、もしかしたら祖先のルーツは
中国か香港かアジア系だったのかなとか
みるみるうちに無くなる餃子を見て
思いをはせてしまうわけよ。

ボウルに白菜をみじん切り、塩もみして
水気きって、豚ひき肉、塩に酒、砂糖とごま油、ほんの少し
ウェイパー、片栗粉。主婦の必殺、目分量。
知る由もないだろう。まじめに下ごしらえしておる。
適当なのに毎度失敗なし。
小麦粉をひいたトレーに並ぶ餃子は、もはや作品。
焼くときに油と少しのごま油。入れるのは必ずお湯。
焼き終える手前で、追いごま油ひとまわし。
薄い羽根とフライパンの間に差し込むフライ返し。
一抹の不安が皿の上でひっくり返る。
こういうのが、ドヤ。の正しい使い方である。

四千年の歴史を潔く無視して、マヨネーズとケチャップで
オーロラソースを作成。ここに味噌をぶち込んだら
神戸市民感あふれるつけダレの完成。
情けでポン酢を添えて。気が利く嫁とは私のことだ。

だから夫よ。二個いっぺんに食べるでない。
もっと敬意を表してくれ。
味わって咀嚼してほしいのだ。
彦麻呂みたいな食レポは求めてない。
ただゆっくり「手づくりって、おいしいよねえ」
とか言いながら。
一緒に一個ずつ食べようよ。笑いながら。


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