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(感想)困惑を抱えて

(以下、筆者Xより転記)

映画『時々、私は考える』鑑賞。他者とは距離を置き、淡々と生活するフランは、時々、死を妄想してしまう。そんな彼女の前に新しい同僚、ロバートが現れる。彼との交流によって彼女に変化が訪れるのだが、人との関係は簡単には進まない。

フランは人との関わりを好まないのであろうが、かといって下手でもないように思えた。店員とのやりとりや、その店員に誘われたパーティに参加し、推理ゲームのようなものにも興じてみせられる。とはいえ、何かを語らない人が語らないことについて何も思っていないわけではない。

フランは死を妄想するが、それは死を望むからでもないのだろう。私もふいに悪い想像をしてしまうことがある。もちろんそれを望んではいないのだが。自分でもよくわからない妄想の訪れに、フランは困惑したまま生きているのかもしれない。

自分にしかわからないであろう困惑を抱えたままでいるのが苦しくなることもある。そんな時には誰か、他者を求めるのかもしれないが、他者が存在することで、自分との違いがより明らかになってしまうこともある。ラストの辺りは、それでも、というフランの思いの表れなのだと思う。

人と積極的に関わらないフランのことを、特別視するわけでなく、「個性」としてそのままにしておいてくれる会社の環境は良いと思えた。全体的に問題を大きな声で語りはしないので、わかりにくいといえばそうかもしれないが、実際、困りごとを声に出せる人ばかりではない。

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