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(感想)自分の命、人の命

(以下、筆者Xより転記)

Theater I-O『命を弄ぶ男ふたり』(原作:岸田國士)観賞。自らの命を絶とうと線路際を訪れて出会った男二人の会話劇。会場は古いビルの地下。薄暗い空間で、二人の命の行方についての対話を間近に、濃密に感じ取った。

眼鏡をかけた男(岡谷陽光)は、誤解によって愛する恋人の心を病ませ、彼女を失う。繃帯をした男(西村優太朗)は、実験の失敗で顔に傷を負う。許婚は気にしないと言うが男はその気持ちがわからない。自分が大事な存在を失いかける時に、自分の存在も揺らぐのかもしれない。

二人はお互いの「命」についての考えを語りあい、自分の考えるところによって自殺を試みるのだが、ある時は失敗し、ある時は難を逃れる。「命を弄ぶ」とはまさにそのとおりで、本当は命を手放すことに踏み切れないのだ。

人は自分自身を守るようにできているし、そして他の人も守ろうと思うようになっているのだろう。だから、たまたま出会った他人に情が生まれてしまう。

岸田國士原作というところで、直感的に読み解けるわけではない会話もあるのだが、二人の読解と演技により、それぞれがそう言動するのが自然なように見えた。二人きりの会話劇であるが、体感時間が短く感じるような濃縮された時間だった。

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