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(感想)その人を構成する断片

(以下、筆者Xより転記)

Theater I-O『鳥は神に向かって飛ぶ』が、出演者の体調不良のため演目変更となり、『ある男の日記』が上演された。西村優太朗によるリーディング的雰囲気の一人芝居だった。大きめの四角い台の上に、サイズが異なる手帳やノートなどが14冊並べられている。西村はそれを順に手に取り、読んでいく。

最初に読まれた文章は、確か2017年と言われていたと思う。日記らしき文章の一部を読み上げ、また別の日記を手に取り、読み、を繰り返していく。徐々に日記を書いた人物像が浮かび上がってくる。演劇をしている、若い、男性であろう。西村本人かと推測できる描写もあった。

書いた本人は全て知っているため、日記に残されるのは断片でしかない。それでも、そのわずかな文章群から、思い起こされる記憶や、感情もあると思う。それらが日記を書いた誰かを構成しているのだと、他人の頭の中でも、その人の像がぼんやりと作られる。

読まれていた文章の雰囲気としては、感謝や楽しかったことの記録など、あまりマイナスな物がなかったように思えた。多分、ネガティブが混じっていたほうがドラマティックなのだろうが、本当にネガティブさをあまり持ち合わせていない人物が、その日記を書いていたのかもしれない。

最後に何か一展開、と思ってしまうのも、波瀾万丈を求める悪い癖なんだろうか。日記を書いた誰かの人生は、きっとこれからも続くのだ。だから、すっと自然に、明日へと続いていく形でいいのだと思う。

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