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(感想)まず自らが楽しむこと

(以下、筆者Xより転記した文章に追記)

演劇ユニット浪漫好『We are the Stage』鑑賞。なんとミュージカルである。浪漫好として初であるだけではなく、金沢の劇団でも珍しいことではないか。音楽を学ぶ二人のスタンスの違いを通して、表現とその意味、価値などに思いを巡らせる。考えは違えども、各々の表現したい気持ちが好演されていた。

音楽教室で学ぶ生徒(響:山崎真優、絃:高田滉己)と先生(橋本奏:渡邉雅基)の登場から始まり、ミュージカルであることの違和感は少ない。歌、ダンスとも聴きやすく観やすく親しみやすさがあり、何より「楽しさ」が伝わってきた。

登場人物のキャラクター(響の仲間・楽斗:平田涉一郎、聴乃:玉城知佳乃、鈴人:永井カズユキ、絃のバックダンサー・律:猪股里彩、光揮:姫川あゆり)は被るところがなく、個性的だった。黒い色のジャケットは同じだが、インナーは違う色を着た彼らが、それぞれの表現で踊り歌う場面が印象的だった。

表現の価値について考えると、確かに評価軸の一つとして「有名になること」や「売れること」があるのだが、それが全てではないだろう。このテーマについての『We are the Stage』での解答としては、多くの人に受けいれられる表現か、(多くの人に受け入れられなくとも)自分たちが楽しめる表現か、という対比になっていたと思う。前述したように、表現の価値の判断基準は数だけではないのだが、ここで「質」などを問い始めるといくら時間が合っても足りず、問題の難度も上がってしまう。なので、『We are the Stage』においては、楽しく観られるミュージカルであることを優先した今の形が最適解だろう。表現の価値問題に関しては、また別のアプローチで取り組んでみてほしい。

表現の価値というテーマと共に語られていたもう一つのテーマは、受け継いでいくことなのではないか。音楽教室の先生:奏から教えてもらったこと、奏の音楽のエッセンスを生徒の響と絃が受け取り、受け取ったものに対する自分の思いも交えて、新しい音楽を作っていく。先人への敬意を持ちながら、自分達の新しさを作っていく。それは大事なことだと思うのだ。

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