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教育者になるための教育

私が、新世代に対する理解や 
新世代との関わり方に関するセミナーを
開催するようになったきっかけは

美容院の中で経営者、店長、教育担当者として
日々、スタッフ育成に奮闘する
幹部たちに出逢ったことが大きかった。

私が教育委員会で仕事をしている頃、
教育界の中でいろいろな変革が
行われている時期だった。

まず、大きく変わったのは
評価基準や評価システム。

今までは、クラスの中で順位を決められ

成績は「相対評価」=「自分と相手を比較することで、自分がどの位置にいるか?集団の中のどの位置にいるかによって個々の能力や成績を決められる」ということが評価基準だった。

今、現在、美容院の中で 
幹部として働いている方達は
「相対評価」という評価基準の中で

学校教育を受けて社会に出てきている人が
ほとんどで、 

自分の出来ていないことに目を向け、
できるようになることで、自分を奮い立たせ

褒められる事よりも叱られることで、
もっと、やれるようになってやる!!
同期よりも、早く〇〇ができるようになってやる!!と奮闘してきた人たちがほとんどだ。

でも、評価軸が変わった世代の方達は「絶対評価」=「あらかじめ決められた評価基準に基づいて、個々の能力や成績を評価する事」の中で育ってきていて、

他者との比較ではなく
自分がどれくらい成長したか?という軸で
評価され、褒められる事で育ってきている。

出来ないことより、
できることに目を向け、他者との比較ではなく 
自己成長が成績にも反映されていた。

「昨日の自分より今日の自分」

「昨年の自分より、今年の自分」が

できるようになっていれば、
評価されてきたわけだ。

だから、社会に出た時に、
なんで、こんなに
褒めてもらえないんだろう?と思う。

・誉められて育ってきていない上司は、
誉め方が分からない。

・誉められて育ってきた部下は、
なんで、褒めてもらえないのかが分からない。

ここが、大きな差になっていく。

上司が、新人の頃、
自分の上司にしてもらったように
(自分が育てられたように)
後輩を育てているはずなのに
コミュニケーション不全が起こると

自分の上司は育てる力があったのに
自分には指導力がないから
後輩が育てられないんだ・・.と
自分の教育に対する能力のなさに、落ち込む。

ここを、
自分の「教育力不足」「指導力不足」だと、
自分に矢印を向けて悩んでいる上司が
非常に多かった。

私は、経営者の方々をはじめ
教育担当者や幹部たちと時間を過ごしていくうちに、

この開きや差を埋めてくものは何なのか?
突き詰めて考えるようになっていった。

突き詰めた結果・・・

「教育者になるための教育を受けていない」
ことが一番の問題だと感じた。

受けてきた教育が違う事を知り、
自分が受けてきた教育と
同じように教育しても新世代は、
育たないことを受け入れなくてはならない。

「教育」は何のためにあるのか?

教育とは「自立」するためにあると私は思う。

だから、教育とは相手の「自立に繋がる」ことが大切なんだとセミナーで伝え続けてきた。

子どもが学校教育も含めて
家庭でも教育を受ける中で、
子どもたちが社会に出て
「自立」するために教育を受けると思う。

自分でご飯を食べる。

着替えることができる。

お風呂に入る。

字を書くことができる。

計算ができる・・・

すべて教育によって、できるようになっていく。

すべて、自分でできるようにならなければ

将来「自立」できない。

当たり前のことだけれど、
今、社会の中で自立して生きている私たちは

自立できるように教育を受け、育ってきたはず。


◆それでは、
美容師さんにおける「自立」とは何だろう?

自分でカットができるようになる。

技術の習得をしたり、
お客様と話ができるようになる。

コミュニケーション能力を
身につけることができる。

そしてその技術習得の先に、
自分で売上を上げ、お給料を稼ぎ、
自分で食べれるようになること。

これが、自立であり、ゴールだと思う。

この「自立」できる人財が、
今までのような教育システムでは
なかなか育たなくなってきている現実がある。

中学校で、できるようになっているはずのことが
高校生になってもできなかったり、
高校生ならできるであろうことが、
その上の高等教育の中でできていなかったり、

学校教育の中でできていないことが、
そのままの状態で社会に出てきている
新世代が多くいる。

学校教育でできていないことを社会で
学ばなくてはならない状況にある現実を、
企業内の教育者は、知る必要があると、私は思う。

自立に向かう教育の前の段階で、
教育者として、何を伝えることができるんだろうか?何を伝えるか?どのように伝えるか?
追求していく必要があると思う。

最初に、幹部が知るべき必要なことは、

教育者の「能力不足」ではなくて、

自分達の受けてきた教育や環境とは
「違う」人が社会に入ってきているという
「事実」を受け入れ、学ぶことが重要だと思う。

自分達の思う価値観とは違う、
様々な家庭環境の中で育ってきた世代が
入社してきているという「事実」

この事実を知ったうえで、
自分たちがどのように新世代と向かい合い

新世代に対して
どのような教育をしていったらいいのかを
考えること、それが

教育者になるための学びだと思う。


今から7,8年前に
教育担当者や幹部に対して、
そのことを伝え始めた時、
私のセミナーを受講しながら
涙を流される方が多かった。

それは、自分の能力不足だったと思っていたことが、

「教育者になるための教育を受けていなかったから」

・今まで、自分が大事だと思ってきた
当たり前の価値観は、新世代にとっては
当たり前でなかったから、同じ日本語を
使っていても通じなかったんだ

と頭で理解し、心でも納得できたときに、
感情が一気にあふれ出してきて
講師である私の前で泣かれることが多かった。

そのくらい苦しんでこられたんだと思う。
1人で抱えて、悩んできたんだと思う。

そのお顔を観て、
そして、セミナー後のフィードバックを聴いて
「教育者になるための教育」を
伝えたいと心から想った。

今まで、自分のせいで人が育たないと思っていた
幹部に対し、その努力の方向を変えて、

新世代がどんな教育を受けて社会に出てきたか?を
理解することから始めればいいという
光を与えられたら・・・と思った。

仕事の中での能力や
「職業人としての価値」

美容師さんでいうなら、
お客様からの支持を集めている美容師さんが、

人を育てられない
人が育たない
自分のせいで離職者が絶えない・・・と思い込み
業界を去っていくようなことがあってはならない。

優秀な人材が、上司になって、
人を育てることで疲弊するなんてあってはならない。

そんな風に想います。

教育者になるための教育を
新世代の受けてきた教育や
価値観の違いを通して
これからも伝え続けていきたいと思います。

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