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アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズ 「ウィスパー・ノット」その1

アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズは1950年代よりモダンジャズ界をリードしたグループです。

バンドリーダーはアート・ブレイキーでドラムを担当しました。1919年にアメリカに生まれます。40年代より本格的に音楽活動をはじめます。名演を重ね、1990年に亡くなります。ブレイキーとともにあったジャズ・メッセンジャーはメンバーチェンジしながら長きにわたりアメリカを中心に演奏活動を続けました。

🟣メッセンジャーズはフランス演奏旅行へ

1958年11月から12月のあいだにアート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズはフランスへ演奏旅行に出ます。メンバーはアート・ブレイキー(ドラム)、リー・モーガン(トランペット)、ベニー・ゴルソン(テナーサックス)、ボビー・ティモンズ(ピアノ)、ジミー・メリット(ベース)です。

フランスのパリで1ヶ月、クラブ演奏とレコーディングを行います。ライブレコーディングがありアルバム『オランピア・コンサート』、『サンジェルマンのジャズ・メッセンジャーズ』としてリリースされました。

🟣名曲と名演

ふたつのアルバムには共通する曲がいくつかあります。そのひとつに「ウィスパー・ノット 」があります。

『オランピア・コンサート』のライナーノーツによると

1958年11月22日および12月17日のパリ・オランピア劇場のセッションを収めたものです。
ゴルソンの名作のひとつです。ここでは神経のゆきとどいたブレイキーのドラム・ワークに乗って、ミュート・トランペットとピアノがフィーチャアされますが、まさに渾然たる名演です。

と演奏解説されます。

『サンジェルマンのジャズ・メッセンジャーズ』によると

1958年12月21日のパリ・クラブ・サンジェルマンの録音。ゴルソンの代表的なオリジナル。多くのジャズ・マンによって演奏された。ここではモーガンのミュート・プレイに続くゴルソンの熱情的なソロが圧巻である。

と解説があります。

時期・メンバー・曲は変わらず。演奏解説も、トランペットはミュートされた音色からピアノへあるいはテナーサックスへ演奏が渡される、ともに名演、とほぼ同じです。

けれども「ウィスパー・ノット」を『オランピア』から『サンジェルマン』へ続けて聞いてみると音色がかなり異なっている気がします。

🟣ウィスパー・ノットの深み

『オランピア』の「ウィスパー・ノット」はトランペットとピアノが、ともに行ったり来たり、煮え切らない、ヒートアップしない、フラフラを繰り返します。じれったさが心にしみます。

『サンジェルマン』はトランペットがさらに勢いを失くし、消えゆくような、憂鬱に満ちた音色です。引き継ぐテナーサックスは憂いを深めるかというとそうではなく、マイルドながら切り裂く音色を奏でます。切り刻まれたものの、すっきりしないわだかまりを心に残します。

演奏は情感的な豊かさにあふれ精妙でありつつジャズらしい非再現性の中にあります。だから同じ曲なのに違った何か異例な出来事が持ち上がることをライブレコーディングだけれども期待します。あらためてジャズのアドリブが良く効いた演奏と感じます。

🔵名曲は歌詞がついても名曲

番外編ですが、メル・トーメが歌う「ウィスパー・ノット」です。


アルバム名

「ウィスパー・ノット」『アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズ オランピア・コンサート』日本フォノグラム、FONTANA PAT-504

「ウィスパー・ノット」『アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズ サンジェルマンのジャズ・メッセンジャーズ Vol.1』RVC株式会社、PG-21(M)

Art Blakey and  The jazz messengers.

"Whisper not"


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