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川辺のケアル 第2章 遷ろうニャンコ

〜この物語は、あるニャンコとの生活に戦いを挑んだ熱血国際中医師の記録である〜

ニャンコ界においてまったく無名の弱体国際中医師が
荒廃した天候の中で出会ったニャンコと共に健全な精神を培い
わずか数日でニャンコスターとなった奇跡を通じて、
その原動力となった「信頼と愛」を余すところなくドラマ化したものである〜


☆前回までのあらすじ

前回のあらすじは話すと長くなるので詳しくはEpisode1からぜひご覧ください。

第2章 遷ろうニャンコ

午前中はとにかく仕事に集中することだけを僕は意識した。

そうしないとニャンコのことが心配で何をしても手が付かないのだ。

それに僕の仕事は漢方相談。

『心ここにあらず』ではお客様に失礼だし、きちんとした弁証論治(中医学でどんな漢方薬を使うか?養生法を提案するかを考えること)などできない。

それにニャンコのことを考えると不安で仕方なく、それをかき消すように僕は午前中の仕事に集中した。

午前中の仕事が終わると僕は白衣を脱ぎ捨ててニャンコの仮住まいである小さなダンボール箱をまるでバースデーケーキを運ぶかのような手付きで注意深く助手席に乗せた。

人間の健康に関しては専門であるが、ニャンコについては全くの素人。猫の種類だってアメリカンショートヘアぐらいしか知らないし、猫の餌だってカルカンぐらいしか聞いたことがない。

本当に心配で仕方ないのだ。

動物病院に行く車内で僕は『ニャンコ、大丈夫か?』と声をかけ続けた。

そのたびにニャンコは疲労と寒さでくぼんだ目で僕をジッと見つめていた。

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妻の同僚から紹介してもらった動物病院の場所はだいたいわかっており、いつも通りなれた道沿いであったがその距離はいつもの倍以上長く感じた。

きっと不安だったのだろう。

早く獣医の先生に見せてあげたいという思いを抑えながら僕は今までしたことないような、ハイヤーの運転手のようなゆっくりとしたハンドルさばきとアクセルワークでA動物病院へと向かった。

『ここだ・・・』

そういえばここに動物病院らしき物があったよな、とその建物を見ると記憶が蘇ってきた。

最近ではゴージャスな動物病院が珍しくない中で、清潔感があるシンプルな建物は僕にかなりクオリティーが高い料理を出すのにお店も店主も控えめな街の美味しい洋食屋さんを思い出させた。

やはり慌てていたのだろう。駐車場に頭から車を突っ込んで(僕は帰りのことを考えて普段はこのような止め方は滅多にしない)小雨になっていたので傘はささずに中のニャンコが濡れないように手でかばいながら動物病院への入っていった。

僕はたぶん生まれて始めて動物病院というところに立ち入った。

僕の動物病院のイメージは獣臭がして、犬や猫の鳴き声が絶え間なく鳴り響く洗浄のようなところを想像していたが、そのチープな想像は早々に打ち砕かれた。

静かな院内。

臭いも全くしない。本当に街の小綺麗な洋食屋さんのホールのような落ち着いた雰囲気は僕の(きっとニャンコも)不安を軽くしてくれた。

僕が入り口から入ってしばらくキョロキョロしていると診察室から中高生ぐらいの女の子と母親とおぼしき女性がニコニコと優しい笑顔を浮かべながらケージに入ったワンちゃんを抱えて出てきた。

僕は軽く会釈をすると、彼女たちはダンボールを抱えた僕を見てなんとなく状況を察したのだろうか?(たぶん普通の飼い主さんはペットをダンボールに入れてなんて今時移動させない)

さらに優しく微笑んでくれた。

しばらくすると中からメガネをかけた物静かそうな中年の男性が出てきた。

すると

『こんにちは、今日はどうされましたか?初めてですかね?』

と声をかけてきてくれた。

人間の病院ですら人生で数えるぐらいしか言っていないのに(元来僕は丈夫に出来ている)、動物の病院なんて何度もいうが初めてだ。

ちょっと緊張しながら、今朝子猫を保護したこと、弱っているように見れるが何かケガや病気がないかの診察をしてほしいということを獣医の先生に伝えた。

『そうですか・・・では、こちらにご記入だけお願い致します。』

と初診用の受付アンケートを渡された。

僕の氏名、住所、連絡先を書くと次はいよいよニャンコの情報だ。

年齢・・・不明

性別・・・不明(僕は猫を見てオスかメスかを区別することも出来ないのだ)

体重・・・不明

名前・・・まだない

ニャンコについてかける情報は何一つ無く『やれやれ、僕はこのニャンコについて何ひとつ知らないんだな』ということを否応なしに思い出せた。

アンケートを記入し終わるぐらいのタイミングで声を掛けられた。

『診察室へどうぞ』

僕は初めて入る動物病院の診察室への向かっていった。

扉を開けると清潔感のある診察台、そこに様々な種類の診察道具が丁寧に片付けてあった。

診察台の上にニャンコが入ったダンボールをおくと先生は瞬きするまもなく

『ひょいと』ニャンコを優しく手で持ち上げてサッと全身を見ると

『女の子だね〜生後1ヶ月半ぐらいかな〜?』

と教えてくれた。

ニャンコはメスだった。

そして年齢は生後1ヶ月半。

人間の赤ちゃんであればまだ生まれたてに属するがニャンコはこの小さなカラダでどれぐらい一人でいたのだろう?

1ヶ月半のこの小さなニャンコが河川敷で僕と妻が保護しようとした時の精一杯の威嚇を僕はまた思い出した。

『ニャンコも必死だったんだね』

そう思うと生きるために一生懸命なこのニャンコのことがさらに愛しくなってきた。

『猫の風邪をひいてますね。目やにがすごいな。目やにを定期的にティッシュで良いのでとってあげてくださいね。あとはケガなどもないと思いますから風邪薬を出しますので、飲ませてあげてください。』

と言われると僕は世の中のすべての『ホッ』が集まったと思うぐらい『ホッ』とした。

ケガや障害などがなくて本当に良かった。

僕はホッとするとこの後のことを先生にあれこれと聴いてみた。

ニャンコ初心者の僕に先生は丁寧に色々教えてくれた。

『先生、餌はどうすれば良いですか?子猫用のミルクでしょうか?』

と聞くと

『もう歯も生えているから普通のもので良いですよ。子猫用の缶詰とか〇〇(商品名)とかあるので、普通にあげて大丈夫ですよ』

更に僕が『先生、猫初めて飼うのですが、どんな物が必要なんでしょうか?』と

『そんなことネットで調べるかペットショップで聞いてくれ!』と言われても仕方ないようなくだらない質問をしてもこの先生は丁寧に教えてくれた。

『そうですね、まだ小さいからケージの中にトイレを作ってあげて、水飲み場などがとりあえずあれば大丈夫かな?』と的確に教えてくれた。

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(これは実際にそのときにiPhoneに入力したメモ)

ニャンコの体調がとりあえず風邪は引いているものの、今すぐ命に関わるような状態でないことがわかり、僕はすぐに妻にLINEを送った。

そしてお会計を終えると薬を飲み終える10日後ぐらいにまた様子を見せてほしいと先生に言われて僕はお礼をして、調子に乗ってよそりすぎて表面張力でギリギリこぼれていないカレーライスのお皿を運ぶような手付きでニャンコの入ったダンボールまた助手席に優しくおいた。

『ニャンコ良かったね』と僕は声をかけた。

店につくとニャンコもホッとしたのか?カラダをまるめてスヤスヤと眠り始めた。

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本当に小さなカラダで頑張っている。

僕もニャンコも一時の休息だ。

僕は温かいコーヒーを一口飲むと自分自身がちょっとした安堵感に包まれていくのがよくわかった。。。。

しかしこの時、コータとニャンコに襲いかかる新たなる驚異をまだ二人は知るよしもなかった・・・

(次回につづく)

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