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冒険はストレス改善の処方箋〜荻田泰永著『考える脚』を読んで〜【漢方的メンタルケア】

今回は北極冒険家の荻田泰永さんの著書

『考える脚』

という書籍から着想を得て、僕らが感じるストレスとそれを解消する方法についてシリーズでお届けしたいと思います。

冒険はストレス改善の処方箋〜荻田泰永著『考える脚』を読んで〜【漢方的メンタルケア】

#漢方的メンタルケア

#荻田泰永

#考える脚

というテーマでお届け致します。

【荻田泰永著・『考える脚』という本とは?】

今回着想をいただいた冒険家の荻田泰永さんの著書『考える脚』という本ですが、たまたま新聞の記事で荻田泰永さんがインタビューに答えている記事があり(たしかインタビューだったと思います)、そこで紹介されていたのが『考える脚』という本でした。


簡単にご紹介すると北極冒険家の荻田さんが無補給による単独歩行で北極圏を目指す様子、カナダからグリーンランドへの単独行の様子、そして南極点を目指す様子の三章に大きく別れています。

ノンフィクションの冒険物を読むのは久しぶりで、最近は村上春樹さんがギリシャやイタリアでの生活を送る様子を書き記した

『遠い太鼓』

ギリシャのアトス巡礼の旅、ノモンハン事件などの古戦場をめぐる様子が書かれた

『雨天炎天』

『辺境・近境』

など村上春樹さんの比較的ゆるく読める(なかにはかなりハードな旅もありましたが)作品に慣れていたので、いつもとは違う刺激をいただきました。

読みながらふと思い出したのは、そういえば中学生ぐらいの頃、植村直己さんの本にドハマリした時期があり、学校の図書館で『北極圏1万2000キロ』などを借りて何度も読み返した記憶があります。

アザラシなどの狩りをしながら食料を確保して冒険する様子は今でも強烈に記憶に残っており

『アザラシの肉ってどんな味がするんだろうか?』

とか犬ぞりの樺太犬たちが頑張る姿には擦れた中学生ながらけっこう感動した記憶があります。

【冒険物の心理描写は様々な場面で役に立つ】

植村直己さんの著書も、荻田さんの著書も共通して面白いのが、危険な旅をクリアしていくワクワク感はもちろんですが、それ以上に興味深いのは冒険中の自身の心の状態を包み隠さず描写されており、人間が極限状態まで追い込まれた時に

どんな思考をするのか?

どんな判断をするのか?

という精神状態を描写しているところです。

この『考える脚』という著書でもその心理描写から多くのことを学んだような気がします。

本の中で

ルートを間違えた荻田さんが目標まで後少しでのところで引き返して安全なルートで再トライするか?後少しなので思い切ってチャレンジするか?

判断に迷う場面があります。

そのときに荻田さんは

『もし今回仮にチャレンジして上手く行ったとしてもまた同じようなときに「あの時なんとかなったから今回も大丈夫だろう」という心のスキができる』

というようなことを考えて結局戻って再トライする、というような場面がありました。

危険を顧みず思い切ってチャレンジして成功する、という方が戻ってやり直すのに比べてかっこいい、素晴らしいことだと思われがちですが、かっこ悪くても戻って安全なルートで再トライするという荻田さんの判断は冒険家としても素晴らしいと思いましたし

失敗しそうな時に思い切って退却する

『撤退する勇気』

の大切さは冒険であろうが、仕事であろうが、プライベートであろうが大切なことなんだと改めて感じました。

北極圏や南極の冒険、世界最高峰の山々への登山など、一見すると無茶や無理をしていると僕らは感じますが、実は何よりも大切なのが安全性で、間違いなく安全な方法は無いにしても

『これやったら失敗するよね』

ということをいかにやらないか?

その積み重ねが大切ということを再認識しました。

これは仕事や健康とも非常につながっている話で、仕事でも『撤退する勇気』は非常に重要です。

上手く行ってない事業をどの時点で見切るか?

みんな心の底で

『もしかしたら明日からうまくいくかもしれない』

などと思いズルズル引きずってしまい撤退しそこねてしまいますが、一流の経営者やマネージャーは撤退する判断力も優れています。

荻田さんが撤退したり、ルートをやり直したりというマイナスの判断をする基準は非常にロジカルで、冷静に状況を判断することが冒険でも重要だと感じましたし、僕らは仕事やプライベートでも自分の都合の良い方向にバイアスをかけてしまい、変に楽観視したり、逆に腰が引けてしまったりしてチャンスを失ったり、ミスを犯してしまうことがあると思います。

【冒険をすることは最高のストレス解消】

そんなことを北極や南極を冒険する話から僕としては学んだのですが、改めて荻田さんのように厳しい環境に向かって挑戦する人の精神状態、月並みですが

『なぜ冒険するのだろうか?』

ということを改めて考えてみました。

そこで浮かんできたのは冒険をするということは最高の『ストレス解消』なのではないか?

ということです。

冒険をしたり、挑戦したりすることはお釈迦様、ブッダも言っていた

人間が感じる『3つの苦』

今風に言うと

『3つのストレス』

の中でも特に2つのストレス解消に関しては絶大な効果があるのではないかと感じました。

そして一見僕らとは全く関係ない北極や南極への冒険によるストレス解消も視点を変えてみることで僕らの日頃生活におけるストレス解消のヒントになることもたくさんあると感じました。

【冒険とはチャレンジすること】

ところで、本題からちょっと離れてしまいますが、この文章を書きながらふと思ったのですが、この著書のタイトルは

『考える脚(あし)』

です。

『考える「あし」』

といえば有名な言葉がありますよね。

フランスの哲学者のパスカルの言葉で

 『人間は、自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない。 しかしそれは【考える葦】である』

という言葉です。有名な言葉ですよね。

改めてこの言葉の意味を簡単に解説すると、意味としては

人間の自然の中における存在としてのか弱さ

そして

思考する存在としての偉大さ

この2つを言い表したものだと思います。

『考える脚』

という題名は色々な思いがあって著者の荻田泰永さんがつけられていると思いますし、きっとインタビューなどでタイトルの由来などもいろいろお話されているとは思いますが、人間の弱さと強さを合わせて表現している素晴らしいタイトルだと感じました。

スポンサー集めの苦労やチャレンジするリスクなど

『考える』

という部分にかなりフォーカスされている内容の本だと思いますので、そのあたりも読みどころだと思います。

さて、本題に戻りたいと思いますが、改めてですが、冒険とはチャレンジをすることです。

毎日慣れたルートで通勤電車に乗って会社に行くことは冒険ではありませんが、始めて訪れる国で、電車に乗って目的地に行くことはある種のチャレンジ、冒険とも言えます。

冒険とは実現がギリギリ可能なこと、現状からちょっと背伸びすることで

『達成できるかもしれない』

というような目標に向かってチャレンジすることだとおもいます。

ではなぜ人はチャレンジするのでしょうか?

その理由の一つが『人間が感じる3つのストレス』の中の一つ

『満足できなストレス』

を人は感じるからだと思います。

【満足できないストレスとは?】

満足できないストレスとは他人の言動や人間関係など外部から受けるストレスとは異なり自分自身の内側から生まれるストレスだと言えます。

僕たちの欲望と大きく関わっており

『〇〇したい』『〇〇が欲しい』

と思うのにそれが満たされなかった時に発生します。

ストレスと言うとマイナスのイメージばかり先行しますが、この『満足できなストレス』は非常に素晴らしい面も実はたくさんあります。

それは人間としての向上心にも繋がるというところです。

『もっと良い生活をしたいからお金を稼げるように資格を取りたい!』

『仕事で良い結果を出したい!』

『テストで良い点数をとりたい!』

『素敵なパートナーをみつけるためにかっこよくなりたい』

見方を変えるとこの欲望は目標に向かって努力し、やる気に繋がる良いストレスと言えるでしょう。

脳が発達したために発生したストレスとも言えると思います。

北極や南極を冒険するという行為はこの『満足できないストレス』の究極の形ではないかと思います。

困難な目標を設定し、それをクリアした時にこの『満足できないストレス』が解消された時の快感はある意味中毒性が強いと思います。

マラソンや登山などを想像するとわかりやすいかもしれません。

達成感からくる満足感や探究心が満たされた時の充足感は人類の進歩と大きなつながりがあります。

人類がアフリカから新天地を求めて広がっていったり

大航海時代を迎えたり

北極や南極を探索したり

世界最高峰の山々に登ったり(それもどんどん厳しい状況下でチャレンジしたり)

宇宙に飛び出したり

僕らが進歩できた大きな要因なので、非常に重要なストレスです。

しかし、これがある程度のチャレンジできちんと満たされていたり、自分の現状に見合った目標設定をして満足感を得られていればよいのですが、上手く満たされないと大きなストレスとなり心身のバランスを崩してしまいます。

最近物事がうまくいかず自暴自棄になり、他人を巻き込んでしまう大きな事件が多発しています。

もっとお金がほしいのに手に入らない、仕事で結果を出したいのに上手く出ない、テストで良い点数を取りたいけど取れない・・・

欲望は成長や発達の原動力にもなりますが、自らを滅ぼす原因にもなります。

『考える脚』のサブタイトルには『リスク』という言葉があります。

荻田泰永さんは自分の『満足できないストレス』とリスクをしっかり考えて折り合いをつけて冒険をされていました。

僕らも常に求めている欲求と自分自身の現状を考えながら折り合いをつけて欲望が暴走しないようにコントロールをしていると思います。

【自分の現状と感じる欲望の折り合いをつける】

『満足できなストレス』が暴走しないように僕らは自分の現状と感じている欲望を測りながら折り合いをつけています。

例えば90歳のおじいちゃんが荻田泰永さんのように単独歩行で100kg以上あるソリを引きながら北極圏を単独歩行したい!

それが満たされなくてストレスだ!

と感じるかと言うと普通に考えればそうなりません。

また、普通の暮らしをしている人が資産家の前澤友作さんのように

宇宙に行きたい!

それが満たされなくてストレスだ!

とは騒ぎだしません。

みんなどこかで折り合いをつけながら自分が満足できるポイントを探しています。

しかし、これが上手く出来なくて色々な欲望が抑えられなくなってしまう人がいます。

【不満や怒りは漢方では『肝』の弱り】

漢方的には満足できないと人は怒りや不満を感じやすいと考えます。

対策としては怒りや不満は五臓の

『肝』

の弱りと考えます。『肝』とは生理学的な肝臓の働きを含めて血液をためこんだり、自律神経をコントロールする場所と漢方では考えます。

そんな肝の弱りで日頃から満足できない人、できにくい人は

満足するために過度に頑張りすぎたり

何事にも力を入れすぎてしまう傾向があるので

日頃から力を抜く時間、頑張りすぎない時間を作ることが大切です。

自分がリラックスできることは何か?

自分がリラックス出来る空間はどこか?

などを日頃から認識しておいたり

何もしない時間を意識的につくる

不満を感じている目標をちょっと忘れる時間を別の趣味に没頭するなどして作る

など、思考をちょっと変えることが大切でしょう。

目標達成のためのトレーニングや勉強をすることでも

『努力している・自分は頑張っている』

ということを実感でき一時的な充足感を得ることは出来ますが、気をつけないと不安感からオーバーワークになりやすく、スポーツなどでは練習などをやりすぎで怪我をしたり、心のバランスを乱してしまったりします。

欲望をつかさどるドーパミンをコントロールするのはセトロニンなので、セロトニンのバランスを整える養生(日光に当たる・しっかり寝る・人と触れ合うなど)を取り入れても良いでしょう。

【冒険で満たされるもう一つのストレスとは?】

冒険で満たされるストレスは『満足できないストレス』だけではありません。

冒険は僕らが日頃感じる『3つのストレス』のもう一つ

『人に認められないストレス』

も満たしてくれます。

この

『人に認められないストレス』

ですが、僕らは無意識に『誰かに認められたい』『受け入れてほしい』そういうストレスを感じています。

『満足できないストレス』と同じように

内面的に出てくる、自分で作るストレス

と言えるでしょう。

感じ方にはもちろん個人差がありますが、自分が相手に対してしてあげたことに対して

『正当に評価されていない』

とストレスを感じたり

『きっと喜んでくれるだろう』

と思って相手に対してしたことがあまり喜ばれなかったり、無反応だったりしたときなどにも感じるストレスです。

ある意味

『予想した反応を示してくれない』

ということがストレスになっているとも言えると思います。

言うまでも無いと思いますが、冒険やチャレンジはこの『人に認められたい』というストレスを非常に解消してくれます。

前人未到の冒険や大きなチャレンジであれば周りはその達成に対して大きな称賛を与えてくれますし

成功しなくてもある意味チャレンジすることだけでも世間から称賛されたり、身近な人が認めてくれたりするので、冒険やチャレンジの結果に関わらず満たされる場合があります。

最近は

『承認欲求』

という言葉もよく耳にします。

SNSで『いいね!』が付くことや動画の再生回数などに異常に固執してしまい『人から認められたい!』という欲望が暴走して迷惑行為を犯したり、SNS中毒のようになってしまうことも少なくありません。

『人から認められないストレス』は冒険などをすれば満たされたりしますが、そんな大きなことをしなくても満たすことは可能です。

ご飯を作って『ありがとう』と言ってもらうなど日常のちょっとしたことでパートナーや家族から感謝されることでも満たされます。

しかし逆のことも言えます。身近なところで満たされるということは、身近なところでもストレスとなる可能性が高いのです。

例えば

せっかく頑張って作った書類を当たり前のように受けとりねぎらいの言葉もないと

『頑張りを認めてもらってない』

と感じてストレスを受けてしまいます。

【意外と厄介な『人に認められないストレス』】

この『人に認められないストレス』はある意味『満足できないストレス』以上に厄介な部分があります。

『満足できないストレス』

は明確に

『〇〇したいけど出来ない』『〇〇になりたいけどなれない』

とストレスの原因が明確なだけに自分だけで折り合いもつけやすいストレスです。

しかし『人から認められないストレス』は相手が関係しているストレスです。

自分では『認められてない』『感謝されてない』と感じても実はそれは自分の思い込みで

相手は十分感謝していたり、認めていても、それを言葉や態度で表してくれないと本人としてはわからない、ある意味

『人とのすれ違いストレス』

とも言えます。

冒険家の方はどちらかというと『満足できないストレス』のほうが強い方が多いと思うので、この『人から認められないストレス』はあまり感じない、人から認められるよりも自分の冒険・チャレンジが達成したことへの快感のほうが強いかもしれませんが、冒険をすることは『人から認められるストレス』解消にも繋がることは間違いないと思います。

『人から認められない』

というストレスは恐怖や不安を感じやすいと生まれてくる事が多いと思います。その理由を漢方的に考えてみましょう。

【カラダが弱っていると『人に認められないストレス』を感じやすい】

漢方では不安や恐怖などはカラダを動かすために必要な元気や血液が不足すると起こりやすいと考えます。

元気や血液の不足はエネルギーが不足している状態なので当然カラダを弱らせます。

カラダが弱るとピンチなので、当然自分の身を守ろうとする働きは強くなります。

守ろうとする意識が強いほど神経過敏となり

『こうなったらどうしよう』『ああなったらどうしよう』と感じてしまい

『認められて無いのではないか?』『喜んでもらえてないのでは?』

と敏感に感じやすくなってしまいます。

気力も体力も充実しているような人は他人になにかしてあげたりしても、その行為だけで『人の役に立てた』と満足することが出来ると思います。体力も自信もあるので他人からの評価をあまり気にしません。

【『人に認められないストレス』を感じやすい人におすすめの養生は?】

なので

『人に認められないストレス』

を強く感じる方は元気不足や血の不足などがあるかもしれませんので、食事バランスに気をつけてしっかりと日頃から栄養をとってたり、食欲がわかない、胃腸の調子が悪いようだったらまずそのようなところからカラダのお手入れをしても良いでしょう。

女性の方で月経前になると『人から認められないストレス』を感じやすくなるような方は漢方的には血の不足があると考えます。

睡眠をしっかり取り、タンパク質などをしっかり取るなどして血を補い、月経のリズムなど乱れていたら早めに心身を休めて整えましょう。


荻田泰永さんの著書『考える脚』を読ませていただいた感じたこと、冒険は人間が内面から作るストレスの解消に非常につながる、ということをストレスの種類の紹介とともにお伝えしてきました。

『人が感じる3つのストレス』ということで

『満足できないストレス』

『人から認められないストレス』

この2つを紹介してきました、もう1つをご紹介してなかったですよね。

最後の一つは

『外部からのストレス』

です。これは寒い、暑い、痛いなどの身体的なストレスや、人間関係など自分の内側からでなく、他人との関わり、外部との摩擦により生まれるストレスです。

ストレスの解消になる、とお伝えしてきた北極や南極などの冒険ですが、外部ストレスと言う観点から見ると寒いし、辛いし、それ以外の2つと比べると冒険することはストレスの塊のようなものですが

その外部ストレスを受ける辛さ以上に

『満足できないストレス』『認められないストレス』

を解消したいという思いが勝ってしまうほど、成熟した現代人は外部ストレス以外のストレスが多いのかもしれません。

北極や南極での冒険はなかなかできませんが、もしみなさんが

『満足できないストレス』や『認められないストレス』

を強く感じるようでしたら、ぜひ、何かしらのチャレンジ、冒険をしてみても良いのではないかと思います。

アントニオ猪木さんは

『人は歩みを止めた時に、そして挑戦をあきらめた時に年老いていくのだと思います。』

と引退のスピーチでおっしゃっていました。

自分の体調、環境、状況をみながら、折り合いをつけて常に冒険、緒戦をしていきたいですね。

そのためにも日頃からしっかり養生して元気な心とカラダを維持しておきましょうね。



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