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寂しい夜だから、好きな曲を羅列する

22:38 RIP SLYME『STIRS』

初めて買ったCDはRIP SLYMEだった。中学生の頃、わたしは不登校でテレビばかり見ていた。RIP SLYMEはテレビCMでよく耳にできて、当時菅野美穂が出演していた東京23区のCMソングとして使われていたと思う。初めての音楽は非常に刺激的な音のループと、大人びて魅惑的なヴァースと韻でまみれていたわけだ。同グループは、今ではあまり聴かなくなってしまったが、この曲だけはたまに、夜散歩していると不意に聴きたくなる。単純ながらも、音の一つ一つがきめ細やかで面白い。

22:42 くるり『BABY I LOVE YOU』

RIP SLYMEとコラボしているアーティストということで知った、当時は二人組。今も二人組。今では一番好きなアーティストだ。演奏技術とコードセンスが抜群で、懐かしさがありながら、このコンビにしか出せない刺激もある。意識的に、複雑なメロディを奏でるメンバを制限してるような気がするが、そのせいかもしれない。この曲はくるりのなかでは断トツでシンプルな曲の一つ。でも美しい。メッセージもシンプルだからこそ、美しい。ロックンロールとは! って感じの素晴らしい曲。

22:46 The Beatles『Hey Jude』

多分、ティーンエイジャの頃に一番聴いた曲。くるりを知って、外国のロックに興味を持ったのがきっかけで、まずはビートルズを聴き始めたのだが、この曲の圧倒的さと言ったらなかった。外国の曲にしかない壮大さ。素直さ。ジュード、悪く考えるな、すぐによくなる、こんなシンプルな言葉で自分の思いを伝えられるなんて、海外のロックンロールはなんてかっこいいんだろう! 率直さの価値に気づかせてくれた曲だと思う。いうまでもなく、ラストの大合唱にも心震わせられる。

22:52 Oasis『All Around the World』

当然の流れでオアシス。これはオアシス版ヘイ・ジュードだと思う。「please don’t cry and never say die.(泣くな、死ぬなんていうな)」大切な人には、これくらいシンプルに伝えればいいと思う。そしてこの曲あたりから、楽器隊やボーカルの「巧さ」が重要なことに気づき始めた。よく覚えている、高校2年生だった。お小遣いの限り、TUTAYAでCDアルバムを借りまくった。この曲はシンプルなメロディながら、本当に壮大な世界を作り上げている。PVも楽しい。

22:59 藤井風『やば。』

打って変わって最新曲。この曲が収録されている『LOVE ALL SERVE ALL』では『ガーデン』が一番好きだけど、この曲も相当やばい。最初はメロディとボーカルが美しい、まあいい曲だな、くらいだったけど、「時間軸」という概念を考えたときにこの曲の素晴らしさが、不意に腑に落ちた。過ぎ去った出来事に対するどうしようもなさ、後悔と懐古の混じったあたたかな気持ち、未来に対する期待、それらが流れていく一本の時間として表現されている。このテーマは、次の曲にも通じる。

23:06 フジファブリック『若者のすべて』

この曲の素晴らしさに気づいたのが、実は去年の夏だ。それまでフジファブリックは楽器隊の技術が高等な、ノリの良いバンドという認識だった。『花』とか『笑ってサヨナラ』など、確かに歌詞の文学的な曲もあるにはあったが、この曲はどうにも、世間の評価が過剰な気がしていた。けれど、ようやく価値がわかる歳になったということだろうか。今では聴くと、過ぎ去った時間に対するノスタルジックを思い浮かべて、自然と涙が溢れてくる。

23:10 キリンジ『エイリアンズ』

価値に気づくのに時間がかかったといえば、この曲もそうだ。初めて聴いたのは高校生くらいだったが、その時は評価の意味がわからなかった。それから大学生になって、不意に何度か連続して聴いてから、一ヶ月くらい取り憑かれたように聴いていた。とにかく美しい。日本語が分かって本当に良かったと思う。文学的な歌詞と、「キミが好きだよエイリアン」というなんとも奇妙でストレートな表現の融合。情緒的に、緩やかにメロディーを繋ぐ芸術的なコード進行。とにかく美しい。

23:16 YEN TOWN BAND『Swallowtail Batterfly〜あいのうた〜』

『エイリアンズ』がコードの美しさなら、この曲の真髄は音の美しさにある。まず、冒頭のシンセサイザーだ。繊細で不安定、だけど滑らかで示唆的だ。曲の世界観を端的に表しているようだ。そして始まる、Charaのボーカルだ。信じられない声だと思う。なにか反則的な、常軌を逸したとさえ表現したくなる声だ。とにかく、感情を強く揺さぶられる。そしてサビで唐突に鳴るストリングス。これも反則技だ。なんの秩序もない。ベースは大袈裟だし、ギターは単調。でも美しいから好き。

23:24 大瀧詠一『恋するカレン』

ずるいといえば、この曲もずるい。というより、大瀧詠一がずるい。冒頭の音の重なりで、聴き手はさまざまな連想をさせられる。わたしの場合は、晴れた、美しい浜辺。そしてキャンドルの灯るオレンジ色の暗い部屋のダンスパーティー。美しい女性。思いを馳せる主人公。驚くほど具体的に、頭の中にイメージが膨らむ。そのイメージは、切ない曲なのにとても煌びやかに映る。音の重みのせいだと思う。全ての音が完璧なまでに重なり合うから、そういう具体的なイメージに繋がるのだと思う。

23:31 斉藤和義『名前を呼んで』

ロックンロールに話を戻す。この曲は、秋の曲だ。秋になったら絶対聞く。音が肌寒いから、風景にマッチするのだと思う。だけど、あたたかさがある。どちらかというと、一人の時に、大切な人のことを思いたい時に重宝する曲だ。非常にシンプルなコード進行ながら、ギターの演奏法で曲のメリハリをはっきりさせている。そう意味で、この曲はロックだ。結局伝えたいメッセージは一つだけだし、変則的ではあるものの単一のリズムで全てを伝え切る、ロックなのだ。

23:38 折坂悠太『さみしさ』

これはもう、表現しきれない。これほどまでに懐かしくも、新しい曲がまだ生まれるのかと、初めて聴いた時に思った。過去にわたしが、ひどくさみしい別れを経験した時に、貪るように聴いていた。歌詞を解釈すると、別れることになった人々が、いつかくる再会に思いを馳せながら前に進もうとする曲だ。だから、「さみしさ」はあるものの、暗くない。軽快で明るい、だけど決して軽くはない、重要な意味を持つ音に乗せられている。

23:48 アレクサンドル・デスプラ『Underwater Kiss』

『シェイプ・オブ・ウォーター』という美しい映画のサウンドトラックの一曲。映画は、現代の社会問題を取り入れながら、多様な愛の形を描いたヒューマンドラマである。あるいは、非常に奇妙で、とっつきにくいかもしれない。しかしこの映画の美しさを理解できるなら、この曲は心を洗ってくれる一曲になる。映画のワンシーン、愛し合う二人のメタファーとして、窓を滴る二本の水滴がランデヴーを描くあまりにも美しいシーンを、思い起こさせてくれる。

23:56 andymori『投げKISSをあげるよ』

大好きな人に教えてもらって、大好きになった曲。リフレイン、コード進行、メッセージのシンプルさ、どこをとってもまさにロックンロール! 伝えたいことはストレートであればあるほど、誠実になると思う。投げKISSをあげるから、全て大丈夫だよだなんて、なんて素敵な言葉なんだろう。その姿勢そのものが、美しい。わたしも、そんなことをまっすぐに言える人になりたい。大切な人を大切にするという、当たり前のことをただただ伝える、ロックな一曲だ。



寝ます! また書きたいな。おやすみ!

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