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『中国のフロンティア(著・川島真)』読後の感想

年々国際社会で存在感を増す中国、そしてそれは米国を中心とする先進国諸国から警戒されてもいる。一帯一路を中心とする諸国支援政策は、先進国からの視点で見れば、一党独裁で動く中国の国際的地位を高めかねない、ということになる。

本書ではザンビア、広州、マラウイ、ASEAN、中国-ミャンマー国境、東ティモール、金門島について中国との関係が述べられている。その中でも僕が一番関心を持ったのは中国-マラウイ関係である。

2008年までマラウイが中国として承認していたのは中華民国であった。しかし現在マラウイが中国として承認しているのは中華人民共和国だ。内容を大まかにまとめると、 中国と台湾の支援の行い方には差があり、 人権や国家体制などにも口出しするいわゆる「先進国型」の援助を行う台湾に対し、中国は自らを未だ発展途上国と定義して、 己の持つスピードと物量でハコモノやインフラなどの建設を行った。

中国の「条件付きではない」援助は、何よりも経済発展を優先する国々には心地よいものであり、また中国にとっても、外交の面で欧米に牽制を取ることができる。 というのも、アフリカの旧植民地諸国に代表される国々には、 自らのエネルギーを旧宗主国の経済発展のために使われたという忸怩たる思いがある。それゆえに、植民地を喰い物にして経済発展した先進国が途上国に対して民主主義や人権などの点で口出しするのは、理屈が通っていないと考えているのである。

中国と台湾がマラウイとの関係を競い合ったのは2008年のことであるが、その後ますます経済発展し世界第二の経済大国となった中国は、現在一帯一路政策を掲げ西方や南方へ進出している。日米が主導するアジア開発銀行(ADB)に対抗し、アジアインフラ投資銀行(AIIB)を設立した。また、ジブチに海軍基地を整備し、独力でシーレーンの安全を確保しようとしている。 それに対し独立派である民進党が政権を握った台湾は中国外交に翻弄され、国交を有する国家を徐々に減らしている。

さて、感想である。

20世紀が資本主義と社会主義の対立の時代であったように、21世紀は西欧型民主主義と中国型民主主義の対立の時代となるのではないだろうか。対立点は経済発展に対しての考え方である。御存知の通り、中国はその14億に上る人口を囲い込むことに成功している。その例がインターネットだ。中国はGFW(金盾)を設けて先進国の反中国的な言論をシャットアウトし、中国独自の代替手段を開発している。つまり、国家主導の経済成長のためには国民の権利を制限するのも致し方ない、という考え方である。それに対し西欧型のそれは、個人の権利を優先し(公共の福祉という例外はあるが)、経済成長も国家ではなく民間の活力に拠るものである。つまり、中国型の支援と台湾型の支援が世界の対立に等しくなるのである。

中国が支援を行った国々では、先に挙げたようなナショナリズム的な考えが広まっていくだろう。言い切るには時期尚早ではあるが、一帯一路政策は現代の帝国主義なのかもしれない。

筆者の見聞の時期が少々古いのは気になる点である。というのも、中国の対外関係は本書であまり述べられていない習近平政権成立後にさらに強硬なものとなったからだ。関連する書籍をご存じの方は、コメントしていただければ幸いである。

p.s. 書籍でのご支援お待ちしています。以下のリンクより。

見出し画像出典:The Russian Presidential Press and Information Office - http://en.kremlin.ru/events/president/trips/54504/photos, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=59027962による

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