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資産運用ってインフレ対策になるの?


進むインフレ~昨今の日本の物価事情~

現在、日本国民の最大の関心事の一つが物価高です。自民党の総裁選をこの観点から注視している方も多いと思います。

日本の物価は、全体としてみれば、バブル崩壊後約30年間ほぼ横ばいの状態が続き、時にデフレの状態にあるとも言われました。アパレル業界や外食産業などで強いインパクトがあった低価格競争はその象徴とも言えます。筆者は1995年から銀行に在籍していましたが特に融資部門においては、0.1%でも安い金利を提示することが強く求められていた期間でした。幅広い業界で安さばかりが求められた時代でした。

しかし、ここ2年ほどは、特に食料品などに物価上昇の動きが顕著に出ており、買い物時に強く感じられるようになりました。円安による原油や輸入品の高騰が原因であると言われ、幅広い商品やサービス価格に転嫁されてきています。2023年1月にはCPI(消費者物価指数)は対前年同月比で+4.3%と、約40年ぶりの水準にまで高まりました。世界的にもインフレの状態にあり、勢いは減退してきたものの、直近でも3%程度の上昇基調にあります。

一方で、実質賃金(実際にもらっている賃金から物価変動の影響を差し引いたもの)はバブル崩壊後約30年間も横ばいの状態が続いた後、直近ではマイナスになりました。20年前と比べた家計の消費支出は月2万円超減っています。内訳をみると光熱・通信関連は増加しているものの、こづかい・交際費、教養・娯楽関連費は減少しており、生活様式の変化や家計の節約志向を窺い知ることができます。

インフレに強いお金の使い方を考える

インフレに対応するためにどのようにお金を使っていけばいいのか、保有している資産(ストック)の面から考えてみましょう。

△現預金

日本の個人金融資産は約2,200兆円。その半分の1,100兆円は現預金です。預金金利は日銀による金利引き上げから、普通預金が0.1%、1年物の定期預金で0.125%程度に上がりましたが、国が目指す2%の物価上昇を補完するツールとしては力不足です。1年物定期預金金利が6%を超えていた時期もありましたが、すぐにそこまで金利が上昇する可能性は非常に低いと思われますので、インフレには対応できないと考えられます。

◎投資信託

新NISAがスタートしたこともあり株式や投資信託への認知度、注目度が高まっていますが、2024年3月末時点で投資信託は、家計の金融資産の5%程度しかなく、完全に浸透しているとは言えません。数ある投資信託から一番なじみやすいものとして、日本株への比重が高いさわかみファンドを例にインフレと対比しながら見てみましょう。

1999年8月に10,000円でスタートした当ファンドの基準価額は、25年後の2024年8月23日に39,101円(291.1%の増加)となりました。単純計算で年率11%以上増加と、国のインフレ目標2%を大きく上回っています。毎年コンスタントに増加しているわけではなく、減少してしまう年もありますが、長期間運用を行った結果、毎年の平均にならしてみるとこうした評価となります。

○個別株投資

一般的に適正と考えられている物価上昇の2%という水準を考えてみましょう。現在、東証プライム市場の全銘柄の平均配当利回りは2%超です。配当で物価上昇分を賄えることになります。しかしプライム市場に上場する全銘柄の株式を購入するには莫大な資金が必要であり現実的ではありません。また、配当利回りは各企業の業績や株価によって都度変化するものであり、長期的に固定されているものでもないため、数社だけをピックアップしてインフレ対策とすることは効果が高いとは言えません。

さわかみファンドのように幅広い企業が組み入れられた株式投信であれば、物価上昇に対応できる資産と考えられます。

企業は2%の配当水準を求められ活動しているわけではありません。一般的には資本の7~8%程度の利益を上げることが求められ、その一部が配当になります。物価の上昇、つまり消費者が買うものやサービスの価格が上昇するということは、提供する企業サイドからすると、売上の増加に繋がります。利益率が一定であれば、売上の増加に比例して利益が増加し企業価値が増加します。つまり企業が成長することになります。株式投資は、この流れにお金を乗せることであり、効果として企業価値の増加が反映されるためインフレ対策になり得ると言うことができるのです。

アメリカの事例に学ぶインフレ対策

先日、米国では資産運用が消費の底上げに寄与しているという新聞記事が掲載されました。米国では、債券や株式投資によって生まれた今年4~6月期の金融所得が年率換算で540兆円になり、個人消費を支えているという内容でした。全体の所得に占める割合は16%に及ぶのだそうです。仮に年間総所得が500万円の人の場合、金融所得は80万円に上ることになります(日本の家計における金融所得はその1/40)。

米国は現在金利水準が高いので金融所得も大きくなりますが、金利以外にも家計の資産構成が大きく異なるのです。米国では、株式や投資信託の割合が50%超を占め、現預金が15%程度なのに対し、日本では株式や投資信託が15%程で現預金が50%超です。金融所得をほとんど生まない現預金に多くをストックしていることが、金融所得の差となっています。

米国が強いインフレの中、堅調な個人消費を維持しているのは、こうした要因があるのです。

まとめ

投資によってお金を働きに出すことは、経済の循環にお金を乗せることです。循環がスムーズになれば景気も良くなります。日本は金利がある世界に戻り始めていますので、物価の上昇も続いていく可能性があります。この記事を読んで、お金を回していくことの役割、資産運用の必要性を感じていただき、私たちと一緒に投資という航海を楽しんでみませんか。

47歳で入社。経験を活かし、顧客第一で業務に取り組んでいます。
直販部 岡﨑 正彦 Masahiko Okazaki