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◇2. 本を子どもたちに手渡す中で見えてきた世界について書いていこうと思う

デンマークの子どもたちが本と出会う機会にかかわらせてもらって、もう10年以上の月日が経つ。あいだに何度か空白を挟みつつ、またコロナ禍には学校図書館の仕事を辞めたこともあって、ついにもう終わりかなと思ったけれど、またご縁があって細々とつながり、今にいたる。

この世界にかかわるようになったきっかけは「初めての仕事」にも書いた、王立図書館大学在学中に得たBOOK STARTの仕事だった。

その後、コペンハーゲン市や近郊の児童図書館、学校図書館、児童書専門店で働いたり、仕事以外でもコペンハーゲン中央図書館に日本語の絵本と児童書を寄贈するプロジェクトを友人と立ち上げたり、また児童養護施設に暮らす子どもたちに本を届ける団体で選書や本の選別のお手伝いをしてきた。

こんなふうに書くと、色々とかなり精力的にやってきた人のようだけれど、実際はいつもぎりぎり、なんとかぶら下がってやってきたようなものだ。わからないことだらけだったし、知らない本、読んだことのない有名な本もたくさんある。すごい仕事をしてきたわけでも、優秀なわけでもまったくない。いつもおろおろ失敗を恐れながら、不安になりつつやってきた。そしてなんども撃沈した。あぁもう限界…と思ったことも一度や二度じゃない。日本で同じ分野で仕事をしている人たちの方がずっときっちりした仕事をしていると思うし、自分はデンマーク人のなかにいる唯一の外国人として、デンマーク語だけの世界、完全にアウェイな環境で、ただ目の前に来たボールを必死に拾いにいくような感覚で働いてきたなぁと思う。でもそれはただ苦しかっただけではなくて、いつもどこかで少しわくわくした気持ちも感じながら、かかわらせてもらえた数々のご縁に感謝しながら続けてきた。

不安な気持ちを抱えて、自分はだめだなぁと思うことも多かったけれど、少し厚みを増してきた仕事の記憶を振り返ると、もう10年以上が経過していたことに気づく。仕事ぶりはさておき、かかわらせてもらったことや助けてくれた人々、子どもたちのことを振り返ると、どこかにこの出会いについて書いておきたいと思うようになった。

このマガジンでは、普段あまり書くことのない自分自身の経験について書いてみようと思う。主に図書館や子どもの本とのかかわりについて、そして、その経験から見えてくるデンマークの日常について。あくまで個人の経験にしかすぎないし、特別読む価値がある訳ではないけれど、これを書くことで地球のあちこちに暮らす日本語話者の人々とつながることができたら嬉しいなと思う。

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