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「時知らぬ山は富士の嶺」 ~メンバーシップ〈個人で歴活〉で「古典を読む会」開催中~

 先月と今月の2回、メンバーシップのメンバーさんに講師をしていただいて、『伊勢物語』の第九段「東下り」を読みました。先月の講座では、物語の主人公たちの富士山に対するリアクションについても話題となりました。

 折句の宿題の発表はこちらの記事になります。


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 富士の山を見れば、五月さつきのつごもりに、雪いと白う降れり。

 時知らぬ山は富士のいつとてか鹿まだらに雪の降るらむ

 その山は、ここにたとへば、比叡ひえの山を二十はたちばかり重ねあげたらむほどして、なりは塩尻のやうになむありける。


 テキストに使っている『ビギナーズ・クラシックス日本の古典 伊勢物語』の解説に、「富士山は、実際は比叡山の四、五倍の高さだが、二十倍にも見えたという。」とあります。私もこの部分を音読して思わず〝でかっ!〟と言ってしまいました。
 『竹取物語』で、「駿河の国にあるなる山なむ、この都も近く、天に近く侍る」として、帝がかぐや姫から献上された「不死の薬」を燃やした山です(『竹取物語』では、そのことが「ふじの山」の由来となっていますね)。都の人たちにとっては、体感的に「二十ばかり」の圧倒的な存在感であったことなのだろうと思われました。


 また、「子鹿の背中が白い斑模様まだらもようになっているように、富士山に雪が斑に残っているようす」という「鹿の子まだら」について、実際に鹿や富士山の写真や絵などを確認してみました。

 確かに、鹿の白い模様というのは、背骨から腹の方向と同時に首から尾にの方向へときれいに流れるような模様になっていて、富士山の河口付近の雪が頂上から下方に流れるような形で残っている様子に似ていると思いました。昔の人の自然の観察眼はすばらしい…。

 それから、この日の参加者は、九州、京阪、中京、そして私が神奈川という各地から集まっていました。〝富士山のてっぺんが白いのは当然だと思っていた…〟と私がお伝えしたところ、5月に富士山でスキーに行ったことがあるという大阪の方の体験談があり、興味深かったです。
 また、富士山が見える限界はどこなのだろうか、伊勢物語のように駿河(静岡県)から見た富士山の様子は別の場所で見た様子とは違うのか、といった疑問も生じました。
 葛飾北斎の『冨嶽三十六景』では「尾州不二見原」(びしゅうふじみがばら/愛知県名古屋市中区富士見町)の絵があるので愛知県から見えるのかと思ったのですが、中京にお住いの方から〝実際には富士は見えなくて、この絵は南アルプスの山の見立てという研究があります〟ということを聞きました。なお、Wiki先生によれば、「富士山を見ることができる最遠地は和歌山県那智勝浦町にある色川富士見峠」ということです。
 富士山の各地での見え方ですが、私は小さい頃、父の親戚が住むという富士宮市に行ったのですが、目の前の茶色い壁が富士山であると聞かされて驚きました。父の実家のある伊豆半島から見る富士とは全然違う姿で、幼心に恐怖を覚えたくらいです。

 ちなみに、今回の講座の講師をされた白石ひとみさんは、偶然にもこのあとすぐに静岡県に旅行にいらしたそうです。伊豆長岡温泉からの富士山の写真を送ってくれました。

 昔の人たちもこうして富士を眺めていたと思うと、古典文学の世界が身近に感じられますね。

 ひとみさんもnoteで多彩なエッセイ等を展開していらっしゃいます。


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【 メンバーシップのお知らせ 】

  細々とですが、noteではメンバーシップも展開しています。

 この中で、

という試みを行っていますが、ここ数か月はメンバーのお一人が、大学の時に専攻されていた中古文学で講座を実施しました! 取り上げた作品は『伊勢物語』です。次回は6月に開催予定です。


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【『太平記』も開講中 】

 メンバーさんではなく私が講座を担当する月は『太平記』を読んでいます(次回は5月25日(木)20時開始(60分~最長90分程度))です。

 下記は、過去の開催についてのご案内の記事になりますが、講座に興味のある方は参考にしていただければと思います。


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【 『逃げ上手の若君』ファン集まれ! 】

 『逃げ上手の若君』の単行本発売月には、「逃げ若を撫でる会」を開催しています(メンバーシップ活動ではないのですが…)。

 ※「逃げ若を撫でる会」を開催する月には、「古典を読む会」をお休みにしていますが、6月の「古典を読む会」はメンバーさんの講座なのでは両方開催します!

 興味のある方はこちらもおいでください(どなたでもご参加歓迎の無料のオンラインイベントです)。単行本開催月に実施しています。次回は6月13日(火)20時~22時です。

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